映像制作現場からのSOS ~「swfi」アンケート調査から~
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映像制作現場からのSOS ~「swfi」アンケート調査から~

MediaReport

「映画業界で働く女性を守る会(swfi)」というNPOが、制作現場で働くスタッフに新型コロナの影響を尋ねたアンケート調査を公表した。そこで、代表のSAORIさんに話をうかがった。アンケートの詳細などについてはswfiのWebサイトを参照いただきたい。(放送レポート編集部)

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安心して働けるように

― NPO法人「映画業界で働く女性を守る会(swfi)」を結成したのには、どういういきさつがありましたか? そして、現状ではどのような活動をされていますか?
SAORI 私たち、映画業界で働く女性を守る会は「映画業界を子供を育てながら働ける環境にしたい」という思いから、2020年1月にNPO法人として設立しました。
 映画やドラマ等の撮影現場での仕事は、一日の労働時間も休みも決まっておらず、早朝から深夜まで拘束されることが多いため、子供を育てながら働くという事はとても難しく、あきらめて辞めてしまう人も多い世界です。私は出産後もこの業界に復帰しましたが、やはり子供を育てながら働く事の厳しさに直面しました。副理事の畦原(うねはら)は、10年以上前に妊娠を機に「当たり前に業界をやめた」経験があり、2018年の終わりごろから、二人で「世の中、女性の社会進出だとか、均等法だとか言っているのにこの業界は全く変わっていない。そろそろ変わるべきなのではないか」「自分たちに何かできないか?」と話し合いを重ねていました。
 その後、現在理事の一人でもある男性のアドバイスにより、問題を解決するための活動をするということから、業界の中だけでなく外部にも発信できる、NPO法人となることを意識するようになりました。そして、子育て中の業界人を中心に、賛同してくれるメンバーが業界内外、男女問わず集まり、2020年1月にNPO法人として設立するに至りました。
「女性を守る」とした理由はシンプルで、まず自分が女性だから、子供ができてキャリアをあきらめたり人生に影響がでるのは、今の日本では圧倒的に女性が多いからです。また、女性スタッフが産休育休を取れるようになったり、子育てをしながら働けるなど、キャリアも子供もあきらめずに安心して働けるようになるには労働環境の改善が必須だと感じているので、そうなれば女性だけではなく男性スタッフの環境もおのずと変わり、あらゆる人にとってプラスに働くのではないか、と思っています。
 私たちはまず女性が抱える悩みや問題点をみんなで共有しながら、労働環境の改善を目指し、芸能・映像業界で働く全員が安心して働けるようになることを目標にしています。
【現状の活動】
・ 芸能・映像業界における今回のコロナウイルスによる影響の実態調査を実施しました。調査報告書と、それを踏まえた要望書を政府へ提出しました。
・ Webサイトでの相談窓口開設、「業務委託契約書」のひな形の配布などを行っています。
・ 啓発活動の為の講演や座談会の開催。
 私たちは「業界の人に外の世界を知ってもらうため」、逆に「業界外の人に業界のことを知ってもらうため」「意識、知識の向上のため」講演会や座談会、ワークショップなどの啓発活動をしていきたいと思っています。が、今回のコロナショックで、企画していた座談会や、私が登壇させていただく予定だったイベントの中止などが相次ぎ、そういった啓発活動、情報交換の会などは現状できておりません。今後、コンスタントに開催していく予定です。

8割以上が収入減少に

新型コロナウイルス感染症による芸能・映像業界で働くスタッフ、キャストへの影響実態調査
Q 仕事における収入にはどんな影響がありましたか?

新型コロナウイルス感染症による芸能・映像業界で働くスタッフ、キャストへの影響実態調査

― 今回のアンケートにあたって、質問項目の作成など、どういった点に工夫をされましたか?
SAORI まずはこの状況下でしたので、アンケートの作成自体もオンラインでメンバーと打ち合わせをしながら、3密を避けながら準備をしたことも工夫の一つといえるかもしれません。やはり、要望書を作成することを意識し、どういった影響が出ていて、どういった支援を求めているか、という項目は選択肢を多く用意し、なるべく回答者のみなさんの求めていることを数値と共に出せるようにしたつもりです。
 また、コロナの影響が長期化した場合に「コロナがある世界での働き方」を考えていかないといけないという意識から、みなさんが今後の働き方についてどう感じているのか知りたいと思い、副業や転職についての質問も必ず入れたいと思っていました。
 そもそも、こういった現場最前線のスタッフ、キャストたちの声を現場最前線の人間たちで集める、ということが今まであまりないことだと思っているので、このアンケートを実施すること自体が「コロナをきっかけに業界をより良くするための工夫」のひとつであるとも言えます。
― 現場のスタッフ1,715名から回答を得たということですが、アンケートを現場に広めるのに、どのような取り組みをされましたか?
SAORI SNS(twitter、Facebookページ等)での拡散と、メンバーでせっせと知人友人などへLINEを送るなどの草の根拡散です。俳優さんなどが数名シェアしてくださったのも効果があったのかもしれません。
― アンケート結果を見て、どのような印象ですか?
SAORI ある程度予想はしていたものの「8割以上の方が収入が減少、もしくはゼロになっている」という数字に、コロナ流行の与えた影響の大きさを思い知りました。また、やはりまだまだ男性の回答者が多いということ、そして一番拡散されたのがFacebookでのシェアだったからか、20代の回答者が少ないと感じました。どこの業界も20代は少ないとは思うのですが、漠然と想定したよりも、他の世代との開きが大きく感じました(あくまでも個人的な感想ですが)。
 また、自由記述欄のコメントを見ていて感じたのは、全体として、法律や制度、自分たちの働き方の状況、他業種など外部の状況などへの認識、情報把握があまりできていないのでは?ということも感じました。自分も含めてですが、とにかく休みなく仕事をする中で、一般的にどうだとか、自分たちの働き方のどこが特殊で、どうしたら改善できそうかなど、きちんと考える時間を持てない人が多いように感じます。
 そういった意味でも、やはりいろいろな知識をつけることは自分たちを守ることにもつながると考えますので、今後情報共有のための啓発活動などを積極的にやっていきたいと改めて感じました。

契約書義務付ける制度を

― アンケート結果から、やはり映画・映像の業界には女性スタッフ特有の問題があると考えますか?
SAORI 今回の実態調査は、とにかく男女問わず現場最前線の私たちにどういった影響が出ているか、私たち自身も把握し、共有し、そして行政にも展開できるような資料を作りたいと思い、実施したものですので、女性特有の問題に特化した質問などはしなかったのですが、そんな中でも「妊娠6ヵ月だったので他のスタッフより早く解雇された」という記述があり、コロナ流行の影響下にも女性特有の問題があることが垣間見えました。
 また、自由記述欄には「子供がいるから仕事を貰えない。よく非難される」という書き込みもあり、コロナ流行にかかわらず女性が抱えている問題はやはりあるのだなと感じました。
― アンケート結果も踏まえて、今回の新型コロナウイルスによる問題で、現場スタッフに対して、具体的にどのような支援が緊急に必要だと考えますか?
SAORI 要望書にも書いた通りですが、「緊急に必要」という意味ではやはり経済支援だと思います。要望書の4つめにあげた「芸能・映像業界を支える人材の離職を防ぎ、文化活動を守り維持できるよう、個人また作品への早急かつ継続的な金銭的支援」が必要と考えます。個人への経済支援がもちろん大切で、持続化給付金など既に申請が始まった給付金もありますが、作品によっては、中断したことにより再開する金銭的体力がない作品も少なくないはずです。元からある作品への助成金制度を拡充するなどして、スタッフ個人だけでなく、そういった作品単位への経済支援も必要であるとswfiでは捉えました。
 アフターコロナ、withコロナに向けて長期的な観点から言うと、
・創作活動再開にむけたガイドライン作成
 再開に不安を感じている人が多く、ガイドラインがほしいという声がありましたが、中には製作会社や現場を担当するプロデューサーの感覚でガイドラインが決められることに不安があるという方もいたので、感染症の専門家と言われる方と相談しながら作ることができるとより良いと思っています。
・契約書の取り交わし文化の浸透
 
今回経済的に打撃を受けた方が多かったわけですが、契約書に拘束期間や中断した場合の条件などが盛り込まれるなど、予め納得した上で契約を締結していれば、ある程度の不安は解消できたのではないかと感じました。ただ、契約書の内容以前に、ご存知の通りこういった業界では契約書の取り交わし自体が浸透しきっていない現状です。これを機に契約書の重要性など感じた方も多く見られたので、行政としても契約書を義務付ける制度のようなものがあれば浸透の助けになるかと思い、要望として書かせていただきました。
・アフターコロナにおける人材保護のため、労働基準法上の労働者概念の再定義を検討し、雇用類似の定義を早急に定め、そのような働き方の者への保護を与える制度を設け周知
 アンケート結果を見ると、国からの支援の内容などについて、やはり自分たちの働き方は理解されていない、と感じる方が多いようでした。回答者の中には会社員の方もいましたが、フリーランスの方が7割強でした。こういった業界は、会社員という選択肢がほとんどない世界ですので、自ら独立を選択したフリーランスの自立とは違う現状があります。ですので、こういった要望も出させていただきました。
 また、支援とは違うかもしれませんが、以上のことに加え、業界で働く私たち自身が情報を正確に把握し、知識を高めてゆくことも需要だと考えますので、それらの助けになるような情報提供、共有、啓発活動などが必要だと感じています。
― 政府・行政に対する要望書も提出されましたが、これに対して反応はありましたか? また、swfiとして今後どのような取り組みをされるのか、お聞かせください。
SAORI 政府、省庁の方からはメールのお返事を頂いており、緊急事態宣言解除後に面談の申し込みなどをしております。
 今後については、最初のご質問の現状の活動の部分と重複しますが、私たちは「業界の人に外の世界を知ってもらうため」、逆に「業界外の人に業界のことを知ってもらうため」「意識、知識の向上のため」、講演会や座談会、ワークショップなどの啓発活動をしていきたいと思っています。今後、コンスタントに開催していく予定です。
 引き続き業界で働く人の声を集め、数値化し、業界内外に共有していきたいと思います。

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