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Peter Gabriel - Sledgehammer: ミュージックビデオの美学

自分が今まで観てきた中で最も印象的なミュージックビデオは、間違いなくピーター・ガブリエルのSledgehammerです。勿論ジャミロクワイのVirtual Insanityだったり、最近だとチャイルディッシュ・ガンビーノのThis is America等記憶に残るビデオもありますが、未だにSledgehammerを超える初見のインパクトには出会えていません。しかもリリースされたのは1980年代、多分今同じものを作れと言われても不可能でしょう。

大部分は歌手ピーターの顔を使ったストップモーション、実写から絵や果物、木工や粘土と形を変えながら歌っていきます。
ミュージックビデオは基本的に歌詞や曲の雰囲気に合わせた作風の事が多いです。Sledgehammerも支離滅裂ながら一応前半は歌詞と映像がマッチしているのですが、後半からは完全に理解不能になります。特に七面鳥が間奏に合わせて踊りだすシーンは、どんな生活をしていたら思いつくのか全く想像がつきません。曲のタイトルであるスレッジハンマー(トンカチ)は転換時に使われ、曲のパート分けを視覚的に表現するサポート役を担っています。
個人的なお気に入りは最後の暗転から終わりまでの部分。ZOZOスーツみたいなものを着たピーターがセットに擬態しながら退場し、手を振りながら完全に背景と同化してしまいます。少ししっとりとした別れ方は、それまでのハイテンションから一転したピーターの人間らしさを垣間見ることができます。
この作品は1987年のMTVベストミュージックビデオ賞にも選ばれました。同賞は前述のVirtual Insanityも獲得しています。曲の魅力を最大限に高めるミュージックビデオ、昔のものを観ているとタイムスリップした気分を味わえます。

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