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『アルプスの少女ハイジ』は奥深い物語です。


小学生の頃に放送されたテレビアニメ『アルプスの少女ハイジ』が好きだった。

最近、松永美穂さん翻訳の原作を読んだ。

原作では、テレビアニメでは描かれていないことが沢山ある。

原作は『ハイジの修業と遍歴の時代』と第2部『ハイジは習ったことを役立てられる』というタイトルである。
このタイトルだと日本では人気が出なかったかもしれない。

著者のヨハンナ・シュピリは1827年生まれで、原作が出版されたのは1880年なので、物語は19世紀中頃の物語かと思われる。

物語の時代背景

19世紀のヨーロッパでは産業革命が進み、1848年のフランスの2月革命によりウィーン体制が崩壊し、舞台となっているスイスは現在の連邦国家となる。
そしてフランクフルトは1866年の普墺戦争によって、プロイセンに併合される。

王政が終わって市民は自由になったが、産業革命によって新たな時代に進んでいく頃かと思われる。


社会的弱者や心の病


歩くことができない車椅子のクララや、目が見えないペーターのおばあさんは身体障害者である。
改めて原作を読むと、そういった身体障害者への接し方や介護についての教育のように感じる部分がある。

ペーターは12歳という設定であり、今の日本で言うと小学6年生くらいだた、文字を読むことができな買った。
そして物語でのペーターの全体的な行動を考えると、今でいう発達障害なのではと思われる。

とはいえ19世紀中頃といえば日本では明治維新の前であり、私塾や寺子屋があったといえども、農民の識字率はかなり50%以下だったされているのでなんとも言えない。

ハイジがフランクフルトからアルムに帰ることになったきっかけは、夜中に歩き出したことであるが、これは睡眠時遊行症という心の病の症状である。


格差社会とお金の話


ペーターは、お母さんと目の見えないおばあさんとの3人暮らしである。
お父さんはいない。
ペーターの家の収入源は、目が見えないおばあさんが内職としている糸紡ぎとペーターのヤギ飼いである。
お母さんはおばあさんの介護しかしていないようである。
なので非常に貧しい生活である。

一方、フランクフルトのゼーゼマン家はとてつもなく裕福だ。
産業革命が進むフランクフルトの資産家である。

原作では、アニメではなかった金の話がリアルに描かれている。


キリスト教にまつわること


アニメと原作の一番の大きな違いは、キリスト教にまつわる話である。

原作では、神にお祈りするシーンがたくさん描かれており、非常に宗教色の強い物語となっている。

当時の日本の子供向けのテレビアニメだったので、致し方のないことだろう。


戦争に関すること


原作では、オンジの過去にも触れられている。
シチリアに戦争に行っていたことをオンジが自ら語っているのである。

時代的に想像すると、1861年のイタリアの統一戦争のことなのか思われる。

戦争体験者がその後の人生に大きな影響を与えるという話はよく聞く。

オンジは辛い過去を背負って生きていくしかなかったところに、ハイジが現れたことによって人生が大きく変わった。


周りの人の人生を変えるハイジ

ハイジの人生を変えたのは、アルムの山である。

そしてハイジは、ハイジと出会う全ての人の人生を変えていく。

原作を読むことによって、改めてそのことが実感できる。

もし、テレビアニメの『アルプスの少女ハイジ』が好きだった方は、原作の物語も読んで楽しんでいただきたい。




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