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ポーランドマクロ環境解説(おむすびch再掲)

1.人口動態について

平均年齢は約42歳でタイなどの新興国とドイツなどの通常の先進国の間に位置しています。(アメリカやイギリスのような多民族国家は除きます。)
人口は3800万人、内需による経済成長が期待できる規模です。
尚、東欧ではウクライナを除けば人口が最も多い国です。ルーマニアやブルガリアなどの周辺諸国は1000万にも満たない人口となっています。

では、人口ピラミッドを見ていきましょう。

ポーランドはひょうたん型の人口構成となっています。域内先進国のドイツと比べると若い印象がありますね。
似たような形状としては中進国の中国があげられます。
ポーランドは60歳と35歳にボリュームゾーンがありますが、特に労働力となる35歳前後のボリュームが大きいため、成長ポテンシャルは高いといえます。

2.GDPについて

1989年~2018年までの間、ポーランドのGDPは826.96%増加しヨーロッパで最も高い成長率となりました。
同期間、アイルランドのGDPは789.43%、スロバキアは783.83%、チェコは549.47%増加しています。
近年のGDP成長率はスライド③の通りですが、コンスタントに3%以上を出しています。
同じ新興国ではインドより低く、ブラジルよりは高いです。
全体的にブレが少なく中高位で安定している印象です。コロナの落ち込みも最も少なく済んでいます。
このグラフには載せていませんが、コロナ前まではタイに近い推移となっていました。
尚、GDPは699,599Million USDで東欧域内最大で、他国に比べて飛びぬけて大きいです。

3.貿易について

ポーランドの貿易相手国は、ドイツが約30%で最大となっています。
輸出品目では自動車部品がトップで、継続して急激な伸びを示しています。
また、近年土地取得費用や建設費が安ことや、高速道路網が整備されたことにより、EU域内市場向けの自動車工場、アウトソーシングサービスセンター、物流センター、R&Dセンターを設置する企業が増えているとのこと。
これら企業のオペレーション部門が豊富な雇用機会を提供し、厚い中間層の形成に寄与しているのでしょう。

4.外貨準備高について
現在の外貨準備高は155000Million USDです。
これは輸入額の70か月分に相当しますので、十分と言えます。
(安全マージンは輸入額の3か月分)

5.出稼ぎ労働者と帰国について
2004年のEU加盟以降、多くのポーランド人が雇用機会を求めてイギリスなどへ出稼ぎのため出国しています。
リーマンショック、そしてイギリスのEU離脱によって多くのポーランド人が帰国を余儀なくされました。
現在は外資系企業のポーランド進出増加でポーランド国内での雇用機会が拡大し、失業率は急速に低下しているようです。
雇用機会の増加によって帰国する人も増えていると思われます。

6.海外直接投資に関して

スライド⑤に(FDI)海外直接投資の対GDP比のグラフを示しています。
経済成長の途上にある国においては、先進国からの投資が必要不可欠ですのでこの値はとても重要です。
ポーランドは近年は3%前後で推移しており、他の東欧諸国と同水準となっています。
ここで特に注目したいのは、インドやインドネシア、中国などの資源中心ではない新興国の中で、東欧は一回り高い水準となっている点です。
特にコロナ以降の2020年も下げていないことは良い傾向と言えるでしょう。
(尚、グラフの視認性の問題で掲載していないのですが、近年のハンガリーのFDIは非常に高く、2020年に至っては109%という恐ろしい値でした。)

7.過去のEUからの財政支援について
東欧の経済発展を語る上で外せないのがEUからの一連の財政支援策です。
かつてより東欧諸国は、EU構造基金の一つであるCF(結束基金)によって財政支援を受けてきました。

スライド⑥は2014~20年の結束基金の受け取り配分ですが、ポーランドが20%と最も大きい額となっています。
この予算はインフラ整備に充当され、経済成長率を押し上げるとともに、輸送インフラ等の整備を通じて投資環境を改善してきました。
近年外国からのFDIが増加しているのも、こういったアクセス環境の改善が寄与していると考えられます。
いわばEUから手取り足取りの手厚い補助を受けて、発展してきたといえます。

8.復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)について
コロナ禍以降の経済復興に対する支援として、EUでは復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)を設定しています。
RRF獲得の為にポーランドが提出した復興計画が、今年の6月に欧州委員会によって承認されています。
RRFは最低37%はクリーンエネルギー移行に、最低20%をデジタル移行に充当することが定められており、ポーランドの計画では、42.7%をクリーンエネルギー、21.3%をデジタルに配分しています。
クリーンエネルギー分野では、主に洋上風力発電所と電力ターミナルインフラへの投資が計画されています。
(プロジェクト例:高圧送電線の拡張と近代化、電力市場データハブの開発に3億ユーロ)
デジタル分野では、教育のデジタル化と行政手続きのデジタル化への投資が計画されています。
欧州委員会は重要政策として、グリーンニューディールとデジタル化を上げていますので、今回の基金に関しても、こういった一連の政策の一部であることは念頭に置いておきたいところです。

ポーランドRRFの概要:
https://bit.ly/3xUItQJ

9.まとめと投資機会について
EU加盟以降、財政支援を受けてのインフラ投資、インフラ網整備が実を結んだ結果、先進国にとって欠かせないオペレーション部門のパートナーとなりました。
これら工場や配送センター、事務アウトソースなどの専門性の低い雇用ソースによって中間層の雇用が形成されるため、資源に頼ることなく、王道的な経済成長を果たしています。
GDPや人口規模は周辺諸国の中でもずば抜けて大きく、東欧経済のリーダー的存在です。

投資機会としては
1-1.RRF資金の流入を見込んだクリーンエネルギー関連
1-2.RRF資金の流入を見込んだ行政デジタル化関連(システムコンサル・ベンダー企業)
2.欧州のオペレーションセンターとしての投資拡大を見込んだ自動車部品、配送センター、アウトソーシング企業
3.好景気による需要増を見込んだ消費関連
が挙げられます。
なんとなくではありますが、セクターローテーションの順番として1→2→3ではないかと思っています。

今回の調査にあたって、最も参考になったのが三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成の以下のレポートです。
必要な情報が過不足なく端的にまとめられています。
2019年のレポートですが、ポーランドへの投資に興味のある方はご一読されることをお勧めします。
https://bit.ly/3LQoDMg

次に、こちらの動画も全体像を知るのにおすすめです。
ポーランドの経済環境の概要をざっくりと紹介されています。
ポーランドの綺麗な環境映像を見ながら勉強できますので、良いリフレッシュになります。
ビールのお供にどうぞ😊
https://bit.ly/3xTaE2d

■参考情報(再掲あり)
三菱UFJリサーチ&コンサルティングレポート:
https://bit.ly/3LQoDMg
大和総研レポート(EU構造基金について):
https://bit.ly/3ScZmOp
ポーランドRRFの概要:
https://bit.ly/3xUItQJ
JETRO:
https://bit.ly/3Skdgyr
wikipediaのポーランド経済解説ページ:
https://bit.ly/3SyAmBb
ポーランド経済紹介のYoutube動画:
https://bit.ly/3xTaE2d


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