見出し画像

'23Q3相場 なんでも上がる ゴルディロックス


1か月続いたレンジを上抜けたS&P500

 6月中旬から7月中旬までの約1か月間、S&P500はレンジ相場となりました。その間の特筆すべき動きとして、7/5~7/7までの3日間、10年債利回りは直近のレンジを上抜けて4%を超える水準まで急上昇しました。
下図を見ていただければと思いますが、この時のS&P500の下落幅はわずか1.5%。その後金利が戻ってきたタイミングでは、3%も上昇し、レンジを上抜ける動きとなりました。

金利急上昇時のS&P500の動き

 この時、金利が上昇した局面ではADP非農業部門雇用者数が予想22.8万人に対して、結果49.7万人。ADPはあまり信憑性のある指標ではないとはいえ、金利環境的には強いネガティブサプライズでした。
にも関わらず株価のこの動き……、株は相変わらず強いということだと思います。と同時に、今の局面ではインフレも金利もあまり相手にされていないということが分かってきました。

過去のことになりつつあるインフレ

 以下に2・3月の調整以降のS&P500のチャートを示します。
2・3月の調整局面においては、インフレによる下落が6%強、金融不安≒景気後退による下落が6%強でした。
 では、その後はどうでしょうか。
4月下旬に金融不安が取りざたされた時の下落が3%。
7月上旬にインフレが取りざたされた時の下落が1.6%
そしてここ数日、7/20・21の下落は1%ですが、この時はディフェンシブ銘柄が買われており、景気後退がテーマとなっていることが分かります。

 インフレと金利はもう過去のものとなり、徐々にマーケットの懸念材料が景気後退の比率が高くなってきています。
今になって思えば、昨年10月にインフレ見通しがピークをつけて以降、マーケットの関心はインフレから離れていたのかもしれません。

3月金融不安以降のインフレと景気後退、それぞれによる下落幅の変化

裾野の広い資金流入。なんでも上がる相場

 今の相場を端的に表しているのが、下図のADLineです。
とにかくありとあらゆる指数のADLineが上がっています。
これは、マーケットの幅広い銘柄に資金が流入していることを表しています。
GAFAM独り勝ちのフェーズは終わったのです。

全指数のADLineが上昇中

サマーラリーへ向けて何を仕込む?

 ADLineが示す通り全てが上がる相場ですから、この”全てに投資する”が最も環境にマッチした投資法なのかと思います。
となると、VTIですね。
以下にチャートを掲載します。6月以降急上昇を開始し、昨年6月から今年5月にかけての下値レンジを上抜けています。

VTIチャート(上:日足 下:週足)

強く上昇するセクターでパフォーマンスに色を出す

 アウトパフォームを目指したいとなると、今資金流入が始まったばかりのセクター、とりわけ今まで一極集中だったGAFAM以外になるでしょうか。
 
 有望な投資対象としては、シクリカルを上げたいと思います。
6月初旬から上昇が始まり、6月中旬にFedの経済予想サマリーで景気が強いことが示唆され、上昇継続。それ以降もニュースでソフトランディングが取りざたされるなど、追い風が吹いているグループです。
それでは、良さそうなETFを紹介していきますね。

XLI
 資本財(工業)ETFです。
6月初旬から資金流入が見られましたが、FOMCで経済予想サマリーが発表され、ソフトランディングにFedのお墨付きがついたこともあり、景気の底堅さを裏付けるかのように上昇を本格化させました。
7月には過去最高値を更新しています。

XLIチャート(上:日足 下:週足)

XLF
 金融ETFです。
大手金融機関が6/28のFRBによるストレステストをクリアし、上昇の初動が開始されました。
そして7/14以降の大手銀行の決算クリア。3月金融不安が完全に払しょくされた形です。
 今のタイミングではXLI以上にベストかもしれません。
3月下落前の水準をまだ回復していませんから、機関投資家から安全かつ割安な投資対象として注目されやすいのではないかと思います。
トレーダーの人も、上司に買う理由を説明するのがすごい楽なんじゃないでしょうか。
「みんなが”ダメかも”と思っていたセクターが実は全然大丈夫でした。おかげで今安いです。なので買いました。」
きっとそんな風に説明するでしょう。

XLFチャート(上:日足 下:週足)

DIA
 指数ダウ30のETFです。
金融・資本財といったシクリカルの他に、ヘルスケア・生活必需品といったディフェンシブの比率も高いため、ヘッジを効かせることができます。
 直近7/20・21の下落局面では、ディフェンシブ銘柄がアウトパフォームし底堅さを見せました。
XLI、XLFに比べるとパフォーマンスは落ちるかもしれませんが、景気後退懸念が下方リスクである今の環境では、攻守のバランスが取れていると思います。

DIAチャート(上:日足 下:週足)
DIAのセクター構成比率

総括

 5・6・7月とGAFAMが牽引しながら指数は上昇を続けてきましたが、6月中旬から7月中旬のレンジを経て尚、相場は底堅さを示し続けています。
ハイテク大型銘柄だけでなく、その他幅広い銘柄へと資金が流入し始めました。

 今回は、1軍となる安牌ETFをご紹介しました。
次回は攻め枠の2軍ETFを掲載予定です。

サマーラリーが現実のものとなるかどうか、まずはFOMCとGAFAM決算後の値動きを注視していきたいところですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?