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’23ウクライナ復興会議レビュー Blackrockファンドの詳細と復興賛同企業500

 6/22、ロンドンでウクライナ復興会議が開催されました。
会議の中で英国政府・ウクライナ政府による共同声明が発表され、各国がウクライナ復興に向けて600億ドルの追加支援を行うことが合意されました。
同会議のアップデートをレビューしていきたいと思います。

BlackRockのファンドの全貌が公開される

 UDF(Ukraine Development Fund)が創設されました。
ドキュメントを見てみたところ、このファンドはかねてよりニュースリリースにあったBlackrockのファンドのようです。
復興会議の公式ウェブサイトにドキュメントが公開されていることから、Blackrockはどうやらウクライナ復興の中枢にいることが分かります。
 では、このUDFとはどういうものなのか。
ドキュメント内から以下のような概要の記載が見つかります。

”UDFは、ウクライナに投資しているUDFやその他の機関が、5つの主要経済セクターを対象に、500億ドル以上1,000億ドル以下の民間資本への投資を支援することを目的としている。”

ここからUDFとは、ウクライナ復興に投資を誘致するための包括的なファンド、あるいは仕組みそのものであることが分かります。
過去の投稿にて、BlackrockのファンドはPE(プライベートエクイティ)ではないかという考察を書きましたが、もっと大きな国家レベルでの計画のようですね。

 以下はUDFの投資誘致の対象となる5つのセクターとそれぞれの金額を表しています。
金額の大きい順に投資先の内訳を記載していきます。

・インフラ(20Billion)
  道路・公共交通
・エネルギー(10Billion)
  従来のエネルギーと再生可能エネルギー関連、エネルギー伝達システム
・製造業(9Billion)
  工業と商業
・農業(9Billion)
  被害を受けた資産と機械
・IT(1Billion)
  R&D企業とスタートアップエコシステム

UDFの対象5セクター

 エネルギーにインフラと、典型的な復興ネタである重厚長大産業の金額が大きい内容となっています。記載内容の粒度から考えても、他のセクターよりも力が入っていますね。
ITに関してはエコシステムは作るけど、後は民間に任せるというスタンスのようです。

 次に、このファンドの全体像について見ていきましょう
下図に示す通り、ポートフォリオが3つに分かれています。セクターごとに、仕組みや募集対象を変えているようですね。

・ポートフォリオ1(インフラ、IT)
 設備投資、企業買収を含む直接投資が中心です。
低リスクPE(プライベートキャピタル)も含まれるようです。
また、投資に対してリスク保険が掛けられており、最も手厚い投資対象と言えそうです。
多国籍企業が鉄道を開通したり、港を整備したり、インフラ系オリガルヒを買収したりといったことが想定されます。

・ポートフォリオ2(製造業、エネルギー)
 リスク分散型ファンドでの投資となります。
PEなどの民間資本から資金を集めるようです。

・ポートフォリオ3(その他)
 金融仲介業者を通しての投資となります。
追加の公的資本や、PEなど民間資本から資金を集めるようです。
プロジェクト単位での投資も募るようですね。

UDFの全体像

UDF(Ukraine Development Fund)概要:
https://bit.ly/3Da6FAw


民間企業向けプラットフォーム ”ビジネスコンパクト”

 同会議においては、民間企業向けのプラットフォーム”ビジネスコンパクト”も発表されました。
42カ国、約500社が署名しています。
これはウクライナの復興に関わりたい企業に対して、手を挙げてもらう趣旨のものだと考えられます。
そのため、リストの全ての企業が直接的な恩恵を受けるわけではないと思いますが、今後恩恵を受ける企業のあたりをつけるのに一役買ってくれるのではないでしょうか。
 リストをざっと見たところ、インフラ、エネルギーにIT、製薬と様々な業種の企業がありますね。面白いものでは、日本のルネサスエレクトロニクスなどもありました。半導体工場でも作るのでしょうか?
 以下に個人的に面白いと思ったものをリストアップします。

 ※企業名(証券取引所:ティッカー)のフォーマットで記載
・Bouygues Construction(EPA:EN)
 フランスのゼネコンです。建築、土木工事、エネルギーなどの分野で事業を展開しています。
チェルニーヒフの都市復興計画を受託した建設コンサルDassault Systemsと共に、過去にフランスのスマートシティ開発プロジェクトに参画したことがあります。
チェルニーヒフ再建計画の工事部分を引き受ける候補としては有力ではないでしょうか。

・Cameco(TSX:CCO)
 カナダのウラン生産企業であり、ウラン鉱山の開発、生産、販売を行っています。傘下にアメリカの原子力企業Westing Houseを抱えています。
 Westing Houseはポーランドの原発の他、先日ウクライナの原発受注数の増加と核燃料の供給が決まりました。ウクライナエネルギー復興の大本命と思っています。
復興ステージが進むごとにじわじわ利益が出てきそうです。

・Elemental Holding SA(WSE:ELE)
 ポーランドの廃棄物リサイクルおよび再生可能エネルギー企業です。
鉄鋼、銅、アルミニウム、亜鉛など、様々な金属材料のリサイクルに強いそうです。
復興の初期段階では、瓦礫の処理などの需要が発生します。
ポーランドに処理施設を持つ同社は、地政学的にもアドバンテージがあるのではないでしょうか。

 ビジネスコンパクトの中で、上場している銘柄の”証券取引所”、”ティッカー”と”業務概要”をExcelにしてみました。全部で72社あります。
興味のある方は見てみてください。


ビジネスコンパクト:


今後の展開は?

 2024年にドイツでの開催が予定されています。
また、日本では特別な「推進会議」の開催が予定されています。

日本ウクライナ復興推進会議:


おまけ:ChatGPTがとても役に立った

 ビジネスコンパクトの企業の中から上場している銘柄、業務概要を調べるのにChatGPTがとても役に立ちました。
以下に検索時の画像を掲載していますが、このように調べたい企業と内容をリストアップして、表形式で抽出してもらいました。
一度に検索する量は20社ほどが限界でしたので何回も繰り返しましたが、一回一回検索して目的の内容を見つける手間が省け、なおかつ表形式なのでそのままExcelに張り付けるだけと意外と楽です。流石に500社を素手で検索するのは現実的ではなかったので、とても助かりました。
 一般的な内容であれば良い答えを返してくれるので、とにかくこなす量が多い時には役に立ちそうです。

ChatGPTでのティッカーと業務概要の検索

参考情報:

2023ウクライナ復興会議:
https://www.urc-international.com/urc-2023-info

JETROの記事:
https://bit.ly/3NHN5R5

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