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ウクライナマーシャルプランの内容(おむすびch再掲)

ウクライナ支援の計画が7月にスイスで開催されたウクライナ復興会議で示されていました。
同会議は2017年より年に一回開催されているカンファレンスで、ゼレンスキー大統領の他、G7、EU各国等約40カ国の首脳、閣僚、世銀、IMF、OECDなど18の国際機関の代表者が参席しています。
前回7月には、ウクライナ復興の原則を示したルガーノ宣言が採択されました。
同時に、ウクライナ復興計画の青写真(↓)が示されています。
https://bit.ly/3VfqEFP

次回は10/25にドイツで開催が予定されています。
例年は年一回開催のところ、緊急的に追加の開催が決まったことから、各国のウクライナ支援への積極性がうかがえますね。
それでは、計画の詳細を見ていきたいと思います。
※該当する資料PDFのページ数を記載しています。

1.ターゲットについて(資料PDF 8ページ)

2032までの計画で、目標値は経済成長率7%、総投資額は$750Billionとなっています。

2.計画の詳細について(資料PDF 12ページ)

優先投資分野として15分野が定められており、それぞれに割り振られる予算内訳はスライド②の通りとなっています。
この中でとりわけ投資額が大きく、使途の詳細が分かりやすい分野について計画の内容と個人的な見解を示させていただきます。
※以下ポイントを箇条書き

(1)安全保障と防衛
・軍事インフラの復旧
・戦車、造船産業の構築(部品、鉄鋼産業含む)

見解:
すでに現時点で兵器を提供している欧米の企業は調達先となるかもしれません。

(2)グリーンディール(資料PDF 30ページ)

それぞれの予算内訳はスライド③の通りです。
・原子力は投資額を40%拡大。プラントの寿命延長。廃棄場所の確保も必要。
・バイオ燃料投資額100%拡大。バイオメタン、バイオガス、産業用バイオマス、農産物からのバイオエタノール・バイオディーゼルを検討。
・非在来型ガス田の開発(ポルタヴァ地方など)
・石炭は投資額を1/10近くに縮小
・石油は輸入量を縮小

見解:
EUのゼロカーボンをサポートするということが明確にうたわれており、EUのグリーンディール政策と同期していると思われます。
また、天然ガスのロシアの代替供給源としてウクライナを使いたいというEUの意図がうかがえます。
そのためにガス田を開発するとともにウクライナの建造物の断熱性を高め、天然ガスの輸出入をネットでマイナスからプラスに持っていこうとしています。

(3)交通インフラ
・EU域内とのチェックポイントを増やす
・穀物貯蔵庫、ターミナルの建設
・旧ソ連時代道路網の整備
・鉄道網の整備(例:キエフワルシャワ高速鉄道)
※インフラ再建は2018年より始まったが未だ古い。例えば鉄道車両の85%以上は25年以上前のもの。

見解:
食料に関しては、天然ガスと同じく、従来ロシアから輸入していた分の穴埋めをウクライナに担ってもらう意図だと思います。
交通網を整備することでこれらの供給源としての機能を強化し、EU域内市場との統合を目的としていることが分かります。
また、キエフワルシャワ高速鉄道の車両をどこが受注するのかというのは、ちょっとしたお祭りイベントになりそうです。


(4)既存産業の振興(資料PDF 8ページ)

・製鉄所の建設、改修。国内需要への対応。
・自動車、通信、ヘルスケアなどのR&Dセンターの誘致。
・自動車部品ハブを建設。EV用電池を含むEUメーカーへのニアショア生産。
・木材生産、家具生産新興。輸出。

見解:
前述の交通網整備とあわせて、EU域内の工場やR&Dセンターとして開発を進める、この辺りはポーランドが発展してきた経緯とほぼ同じに感じます。

(5)都市の近代化、建築物の近代化
・ビルや住居の断熱効率化(ヒートポンプの近代化等)
・住居の再建(仮設住宅含む)(目標100k戸)
・水処理システムや浄水システムの整備(42Billion)
・モダン都市計画のパイロットシティ(ブチャ、チェルニーヒウ)

見解:
建築物の断熱効率UPについては、前述したとおり天然ガスの消費量を減らして、EUに輸出させようという意図があると思われます。
パイロットシティの取り組みは面白いですね。特にロシア軍の攻撃を受けたブチャやチェルニーヒフが対象となっているのは興味深いです。
ブチャはキエフ近郊ですので、真新しいマンションやショッピングモールがたくさん立てば、アッパーミドルのファミリー層に人気が出そうです。武蔵小杉でしょうか。
どちらも街並みが大きく破壊された地域があると思いますので、元住民から安く土地を買い、開発を進めるのでしょう。そういった意味で今後の地価の伸び幅が大きいといえます。

キエフ近郊ブチャの街並
https://www.yomiuri.co.jp/pluralphoto/20220405-OYT1I50116/
ブチャ被害の衛星写真
https://bit.ly/3Eqf58Z
チェルニーヒフ被害の衛星写真
https://bit.ly/3EzPudX

(6)公共施設の復旧
・教育、医療、文化、スポーツ施設の復旧

見解:
特になし

3.計画実施の進捗状況について(資料PDF 13ページ)

現時点では復興計画の全体像が固まった段階です。
今後細かな部分がブラッシュアップされていくことになります。
次回10/25開催の会議の発表に注目しましょう。

4.所感
EUにとっての利益となるように計画が練られています。
特にロシア代替のエネルギー源や、工場・R&Dセンターの誘致による生産拠点としての位置づけが中心となると思われます。
ウクライナ独自の強みとしてはエネルギー分野、ガス田(ポルタヴァ地方や黒海)があることや、原発の存在でしょう。

投資妙味としては、
・バイオ燃料などゼロカーボンエネルギー分野
・EV(電池など)生産拠点としての自動車分野
・パイロットプログラム含む不動産開発
・交通インフラ
・天然ガス田の開発
だと思っています。

バイオ燃料は個人的に注目しています。マルチプルエクスパンションの局面においては、新技術に注目が集まりやすいです。
ポーランド市場に上場している既存の農業企業がEUから投資を受けるかどうかに注目です。
(確かASTARTA Holdings(AST)もバイオマス燃料の取り組みをしていたはず。)
交通インフラに関しては、工事をどこが受注するかどうか、過去の入札データなどを調べる必要がありそうです。
不動産開発は最も面白いところだと思いますが、投資可能な銘柄がディベロッパーとして上がってくるかどうか、また建設資材の調達先がどこになるかも重要な問題です。

やはり一番の問題は、色々な分野で成長の可能性はあるが投資ができない。ということでしょう。
切実な願いとして、ウクライナ指数ETFを作っていただきたいです………。

■参考情報
ウクライナ復興計画:
https://www.urc2022.com/urc2022-recovery-plan

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