ML試し書き3
中堂は時計を見た。時刻は十八時。残業だろうか。小田桐はまだ帰って来ない。スマホを見るが、特に連絡は来ていなかった。
最近、食事を共にするようになってから、食べるなら食べる、食べないなら食べない、という連絡をくれるようになっていたのに。いや、確かに残業だけの知らせはしてこなかった。残業が終わってから、「今日は残業が長かったので食べて帰ります」だの、「今日は家で食べます」だの寄越してくるのだ。
イライラする。小田桐が連絡をくれないだけで、何故こんなにイライラする必要があるのか。
スマホを手に取る。「今日は残業ですか?」と、アプリで尋ねようとして手が止まった。なんで私が訊かないといけないのか? こんなにイライラしているのだから、小田桐の方から言ってくるべきだ。連絡が遅くなってすみません、とか、一人にしてすみません、とか。何かあるだろう、自分に言うことが。
何故こんなにイライラしているのか……。
イライラする……。早く顔を見ないと気が済まない。予定アプリを開いた。小田桐は明日も出勤だから、今夜ベッドに呼ぶわけにもいかない。明日が休みなら、「イライラさせやがって」と言う名目で一晩中相手させてやるのに。
イライラする。十八時三十分。通知が届いた。メッセージが来ている。
『同僚と食べて帰ります』
「は?」
こんなに待たせておいてなんでそんなことができるんだこいつ。明日仕事なんじゃないのか。だったらさっさと食べて帰って来る方が良いに決まっている。
テーブルの上を見た。作り置きしたハンバーグ、既に二人分解凍してしまっている。
……仕方ない。もう一度冷凍して明日小田桐の弁当に入れるか……。
イライラして仕方ない。なんで帰って来ないんだ。いや、帰ってくるけど何で食べて帰ってくるんだ。なぜだか、腹が立って仕方ない。
『気を付けて帰って来て下さいね』
それだけ送って、スマホの電源を切った。
これはとても真面目な話ですが生活費と実績になります。