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Laowa製中望遠マクロで組む虫の目レンズ

 はじめまして、枯草泥舟と申します。
 本記事ではLaowaの中望遠2倍マクロ(85mm,90mm,100mm)を使用したCCTV虫の目レンズの組み方をご紹介させていただきます。
 なお、カメラのセンサーサイズはAPS-C判(クロップでも可)でのセッティングとなりますのでご留意ください。

 今回の記事ではよりシンプルに最低限の解説を行います。より詳細にCCTV虫の目レンズについて知りたい場合やLaowa中望遠2倍マクロ以外でのセッティングを検討する場合は以前の記事を御覧ください。

 CCTV虫の目レンズのススメシリーズ。

 私自身、光学に関しては素人であるため、用語・知識等間違っている箇所等あると思いますので、ご指摘頂けると幸いです。

 ご意見・ご質問はX(旧Twitter)でも受け付けております。

※当記事を参考にセッティングを行った際に機材の故障等があった場合、此方は一切の責任を負いませんので自己責任にてお願いします。


実機紹介

 完成のイメージを掴みやすくするためにまずはCCTV虫の目レンズの実機を簡単にご紹介させていただきます。

カメラ:SONY α7RV(APSーCクロップにて使用)
マスターレンズ:Laowa 85mm
以降、後述する虫の目パーツとなります。
 仕様としてはマニュアルフォーカス、出てくる画は倒立像(逆さ像)になります。

 改造の手間もなく、基本的にはリングを組み合わせていくだけで組むことができます。
 実機は85mmですが、焦点距離的に90mm,100mmでも同様に組むことが可能です。(むしろ倍率的に余裕ができます。)

使用パーツ

 今回CCTV虫の目レンズを組むにあたり、使用するパーツを購入先リンクと共に解説していきます。
 レンズ側より順にご紹介させて頂きます。

使用パーツ達
組んでいく順番に並んでいます

Ⅰ.DCRー250装着 

①ステップダウンリング(to 43mm)
   マスターレンズとDCRー250を接続するために使用します。DCRに付属するクイックリリースアダプターを使用しても構いませんが、光軸がズレやすいことと機材径が太くなるので推奨はしません。
・85mmの場合は46ー43
・90mm,100mmの場合は67ー58,58ー43と二種類使う必要があります。(43mmに変換出来れば別の組み合わせでも構いません。)
Raynox DCRー250
  言わずもがなクローズアップレンズ。拡大系の要。
〇DCRー250からCマウントへ
 以下の三点を順にDCRー250先端へ取り付けます。
 ①ステップダウンリング 49ー42(リンク1リンク2)
 ②T2ーM42変換リング
 ③M42ーCマウント変換リング

Ⅱ.Φ20mmレンズセット

 DCRー250だけでは倍率が足りないので倍率確保のために組み込みます。
Cマウントレンズホルダー
 Φ20mm色消しレンズを組み込むために使用します。
Φ20mm色消しレンズ焦点距離75mm
 アリエクでΦ20mmの色消しレンズがこれしか見当たらないため、必然的にこれになります。
アストロプロダクツ20mmOリング
 上記のレンズは厚みがレンズホルダーに対応していないため、こちらを併用して固定します。

Ⅲ.CCTVレンズの接続

Cマウント延長リング
 CCTVレンズとマスターレンズの距離を調整し、おおまかなピント調整をします。
 必要個数や長さに関しては後述するセッティングの項目を参考にしてください。
Cマウント用スペーサー
 mm単位で中間リング長を調整できます。なくても調整は可能ですが、あると便利です。
CマウントーM12変換リング

Ⅳ.レンズ

 ご紹介するセッティングでは倍率の関係でケラレずに使用可能なレンズは限られます。(1/1.8型センサー以上用のCCTVレンズ)
 イメージサークルの小さいCCTVレンズを使用したい場合はテレコンや接写リングの使用、トリミングでの対応と倍率を上げていただく必要があります。
 以下におすすめのCCTVレンズをご紹介します。

3.2mm,F2.0,1/1.7型センサー用,12MP
  フルサイズ換算焦点距離15.36mm
 超広角の画を得ることが出来ます。前玉径が太いため、ハエトリグモ等の小さな虫をアップで撮るのには向きません。

4.5mm,F2.0,1/1.8型センサー用,8MP
 フルサイズ換算焦点距離22.5mm
 広角感のある画を得ることができ、ハエトリグモ等の小さい虫もある程度アップで撮影することができます。

8mm,F2.0,1/1.7型センサー用,12MP
 フルサイズ換算焦点距離38.4mm
 画角としては準広角ですが解像感が高く、小さな被写体も撮影しやすいです。撮り方によっては十分パースを効かせることができます。

Ⅴ.あると便利な周辺アイテム

 こちらは虫の目レンズで撮影する際に必要なものではありませんが、虫の目を運用する際にあると便利な物です。

・椅子足キャップ(Φ28mm)
 CCTVレンズにはレンズキャップが付属していますが、外れやすいものが多いです。ご紹介した3.2mm、4.5mmのレンズは特に外れやすいため、こちらの椅子足キャップで保護しています。

シンデレラフィット!

Cマウントレンズリアキャップ
 CCTVレンズを複数使う場合はあらかじめ、中間リングごとセットしておくと焦点距離の切り替えが楽になります。その際はCマウントのリアキャップも用意しておくことをオススメします。(リアキャップには被せ式とスクリュー式がありますが、脱着がしやすい被せ式がオススメです。)

・リア用レンズキャップ
 虫の目パーツを外したあと、パーツ後端にレンズキャップを装着することで虫の目後玉の保護ができます。
 使用サイズはどこから外すか、ステップダウンリング等のサイズによって異なりますので、ご自身の機材に合わせて揃えてください。

T2 to M42には40.5mm、
DCR-250(46 to 43装着状態)には43mmのレンズキャップを取り付けています。
この状態が個人的に可愛い。

セッティング

 セッティングといっても、基本的には各リングをつなぎ合わせていくだけになります。

CCTV虫の眼レンズ組み立て図

 解説が必要になるのはCマウントレンズホルダーと中間リング長のみとなります。

Cマウントレンズホルダーの使い方

 Φ20mm焦点距離75mmのアクロマートレンズをレンズホルダーに組み込んでいきます。

Φ20mmアクロマートレンズ
左:肉厚ホルダー、右:通常ホルダー
手前:レンズを止めるためのレンズリング(付属品)

 レンズホルダーは通常タイプと肉厚タイプの二種類ありますが、どちらも当レンズの厚みには本来対応していません。
 Oリングをスペーサーとして使うことでレンズを組み込んでいきます。
 また組む際の注意点として、アクロマートレンズの凸側をマスターレンズ側になるようにします。(間違えると画質が著しく劣化します。)

〇通常タイプ

レンズホルダーの断面図

 ホルダーへレンズを入れた後、Oリングを挿入、上からCマウント中間リングかCtoM12のCマウントパーツをねじ込む事で固定します。

※何故非対応のレンズを無理矢理使用するのか。
⇒国内で買えるΦ20mmのアクロマートレンズは8000円前後と安いものではありません。虫の目に組み込む際の焦点距離の正解もわからず、値段が値段のため種類を試すことは私の経済的に現実的ではありませんでした。当レンズは安価かつ画質の劣化も感じにくいため、こちらを工夫して使用した方が経済的にも優しいと考えています。

中間リング長の調整

 CCTV虫の目レンズにおけるピント位置の調整というのは
”CCTVレンズ後端に現れる空中像にマスターレンズのピントをあわせる”
ということです。
 中間リングを用いて、CCTVレンズを適切な距離に設置することで撮影が可能になります。

面倒なので過去記事の流用

①マスターレンズ側を最短撮影距離側に合わせておきます。

②マスターレンズの光軸上にてCCTVレンズを前後させ、CCTVレンズ像のピントが合う位置を探ります。

③ピントの合った際のマスターレンズとの距離を測り、その長さよりも若干短めにCマウント中間リングを接続します。

④希望の最短撮影距離に合わせて中間リングの延長、C・M12マウントの繰り出しを行って微調整をします。
 延長及び繰り出し量を多くすることでより最短撮影距離を縮めることができます。反面、無闇矢鱈に最短撮影距離を短くすると望遠側(被写体から少し離れた場合)にピントを合わせた際のケラレが大きくなる場合があります。

 ここまでピント調整のざっくりした方法をご説明しましたが文面では中々ご理解し辛いと思いますので、Laowa85mmにてセッティングした際の中間リング長を画像と合わせてご説明させて頂きます。

◯中間リング長-85mmの場合

 今回ご説明するのは85mm使用時のセッティングですが、90mmや100mmを使用する際はスペーサーや中間リングを追加するとピントが合うはずです。
 また、Cマウント部の根元はレンズホルダーとなりますので、その部分は中間リング長から除外します。

①3.2mm,F2.0,1/1.7型センサー用,12MP
 中間リング長25mm。
 Cマウントレンズの繰り出し機構にて微調整。

Cマウントレンズの繰り出し機構を利用して微調整を行います。
繰り出し量調整後は付属のネジ等で固定します。
私はテープぐるぐるで動かないように固定しています。

②4.5mm,F2.0,1/1.8型センサー用,8MP
 中間リング長30mm。
 M12レンズを繰り出して調整。

M12レンズを"C to M12"より繰り出すことで微調整が可能です。
付属のナットを締め込むことで固定することができます。

③8mm,F2.0,1/1.7型センサー用,12MP
 中間リング長30mm。
 M12レンズを繰り出して調整。

※なお、今回マスターレンズ側には保護フィルターを装着していないため、フィルターを装着している場合は必要中間リング長が少々異なります。

撮影に関して

F値について

 SSやISOは撮影環境や光源の種類等によって変わりますが、F値に関してはF8以上に絞ることをおすすめします。F8未満の絞りですとクローズアップレンズのかすみボケが目立ち、コントラストが落ちてしまいます。また周辺の流れも顕著にでます。
 私の場合は基本的にF11で撮影しています。理由としては周辺の流れを極力抑えたい・被写界深度を稼ぎたい・回折現象による解像度低下の許容限界、というところです。背景をなるべく写し込みたい場合には回折現象の影響が大きくなることを許容しつつF16まで絞ります。

倒立像問題

 今回ご紹介したセッティングでは、撮影の際にモニターへ映し出される画は倒立像(逆さ像)になります。慣れればある程度問題なく撮影できますが、虫の目撮影のハードルを上げているの一因かと思います。
 解決法としては、
①カメラ機能でモニター反転表示を行う。
 一部の機種でしか搭載されてないようで、SONYの比較的最近の機種には搭載されています。設定項目ごと反転されるので、これはこれで慣れが必要。
②外部モニターを使う。
 機材が大きく重く、お金もかかるので現実的ではない方法ですが、O社のスタッフに相談した際にはこのアドバイスを頂きました。

電磁絞りLaowaレンズ使用時の注意点

 まず虫の目レンズの特性として、絞り開放時と絞ったときとでピント位置がずれます。
 一部のLaowa製レンズでは電磁絞りが搭載されています。私自身該当レンズ・機種を使用したことがないので確かなことは言えないですが、シャッターを切った際のみ絞り込む機構ですとピントずれ問題が生じます。対策としては絞りプレビューやそれに相当するような常に絞った状態にする設定をしてピント合わせを行う必要があります。

季刊奇蟲の紹介

 先日ありがたいことにTerminal Legs様が出版している季刊奇蟲2024年冬号に私の虫の目レンズ記事が掲載されました。
 noteの記事では載せていないような構成や撮影方法についても触れています。過去号含め、面白い記事ばかりですのでご興味のある方は是非。

さいごに

 当記事を読んでいただきありがとうございました。今回ご紹介した虫の目セッティングでは使用するパーツはDCR-250を除けば比較的安価に揃いますし、特別な改造等も必要のないお手軽構成ですのでお試しで組むハードルも高くはないかと思います。
 今回記事作成にあたりご紹介した構成で撮影をした際に改めてMF虫の目撮影の難しさを実感しました。というのも私は普段AF虫の目レンズにて撮影しています。一般的に被写界深度が深いと言われる虫の目レンズですが、実際のところピントの芯はそこまで深くなく、ピーキング機能を併用しての撮影でもピンボケ写真の連発でした。ただそれも含めてやはり虫の目撮影は楽しいと再認識することができました。
 当記事をきっかけに虫の目沼にはまり込む人が一人でも多く現れることを願っております。


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