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ソラを見上げて #43 走り出す二人

2025年1月

(梅澤美波)
・ブログで乃木坂46から卒業する事を発表。


2025年2月

(梅澤美波/乃木坂46)
・久保の喪失感に苛まれ、マスター夫妻に相談。
・マスター、過去に親友を亡くしていた事が発覚。
・マスターから魔法の言葉“負ける気がしねぇ”を伝授される。
・明治神宮野球場で乃木坂46 13thBirthDay Live開催。


2025年3月

(梅澤美波)
・久保の墓参りのため、仙台を訪れる。
・仙台到着後、雨で立ち往生。居合わせた青年から傘を渡される。
・久保の墓前で卒業コンサートに臨む事を決意。
・墓苑の住職から桃子が梅澤の事を気にかけていた事実を知る。
・桃子の事務所へ連絡し、留守電にメッセージを残す。
・約二年半に及ぶ梅澤と桃子の擦れ違いが解消。


(○○)
・地元(千葉県)の高校を卒業し、仙台へ上洛。
・仙台駅入口で居合わせた女性に傘を渡し、ずぶ濡れになる。
・賃貸契約したマンションでソラと出会う


梅澤美波は、友が眠る地を訪れる。
その勇気は決意となり、再び心に火が灯る。


夢に期待を膨らませ、訪れた仙台。しかし、引っ越し先で待っていたのは野球好きなヘンテコ地縛霊。奇妙な同居生活が始まり、ファッションデザイナーへの道は前途多難な幕開けとなった。



2025年4月

(梅澤美波/乃木坂46)
・ブログで卒業コンサート開催を発表。
・林、梅澤の卒業コンサートに対するネットの反応にドヤ顔。
・遥香と珠美、梅澤の卒業より仙台の名産品と会場のケータリングに夢中。
・菅原、梅澤の卒業コンサート開催の告知に一人号泣。
・美月、梅澤に全力で気合を注入(物理)


(○○)
・ソラがポルターガイストで布団を剥がす事に成功し、テント事件勃発。
・除霊と成仏を勘違いしてソラを泣かせる。
・ソラが実体化。後に制限時間は約5分と判明。


2025年5月

(梅澤美波/乃木坂46)
・梅澤と桃子を除く三期生メンバーが久保の墓参りの為、仙台を訪れる。
・同日、梅澤と桃子が三年ぶりにお出かけ。桃子がインスタに掲載。


(○○)
・学校でプロデザイナーから言われた言葉に落ち込む。
・ソラ、落ち込む○○にアルバイトを勧める。
・“野球狂の詩”のバイト面接を受け、合格。マスター夫妻と出会う。
・線香の煙を吸ったソラが泥酔。
・ソラ、実体化を使いこなす(一週間に一度だけ可能)
・週に一度、ソラと一緒に夕飯を食べる約束をする。


胸に宿した決意は、仲間の存在によって覚悟に変わる。
完全復活した梅澤美波は一歩、また一歩と、
限りあるアイドル人生を楽しんでいた。


一緒に笑って、悩んで、ちょっとした事で喧嘩をして……徐々に近づく二人の距離。強くなる思いは、二人に抗う事が出来ない現実を突きつける。

○○のそばにいたい。
ソラに幸せになってほしい。
二人に幸せな結末は訪れるのだろうか……



2025年6月

(梅澤美波/乃木坂46)
・林、11月公演の舞台【新選組】に土方歳三役で出演する事が決定。
・梅澤、卒業コンサートについて今野と打ち合わせ。


(○○)
・課題制作のモデル探しが難航。ソラが名乗り出る。
・完成した課題の作品名を講師に聞かれ、咄嗟に【sora】と答えてしまう。
・【sora】が校内コンテスト優秀作品に選出。展示会へ出展が決定。
・ソラに入選を報告。喜びのあまり、強く抱きしめる。
・ソラのためにテレビを購入。ソラは大喜び。
・ソラ、テレビを見て涙を流す。理由は不明。


2025年7月

(梅澤美波/乃木坂46)
・卒業記念番組収録のため、遥香と共に仙台を訪れる。
・仙台駅構内で開催されている展示会で【sora】を見つける。
・【sora】の製作者を探す為、展示会主催の専門学校に連絡。
・○○に会うため、野球狂の詩を訪れる。


(○○)
・展示会当日、準備作業のため仙台駅へ。
・展示会翌日、『作品を使わせてほしい』という電話に『保留』と回答。
・打ち上げパーティに乗り込んできた梅澤美波と出会う。





初対面だと思っていた。
一着の衣装が、二人を再会に導いた。

しかし  

人の心を見透かす様な鋭い目をした自己中心的なアイドル。
年上に対して遠慮なく皮肉を言う生意気なデザイナーの卵。

当の本人達は露知らず。劇的な再会にはならなかったようだ。
そして○○の物語は、思いもよらぬ方向へと進んでいく……







(2025年8月13日)

―hio株式会社・作業場―

〇:クリスティーさんはもう少しドット感を出したいので配色を変えてみましょう。生地を足して立体感を出したりとか出来たら面白いかもしれません。あと楓さんは履物をスニーカーに変えましょう。衣装に合う色のスニーカーを幾つか探せますか? それから……

(社員達と意見を交わしながら作業を続ける○○。その様子を見ている桃子)


社員:彼、東京に行ってから別人の様に元気になりましたね。

桃:ね。

社員:ぶつかっていた壁を壊せた。という事ですかね?

桃:かな?

社員:東京で一体何があったんですか?

桃:さぁ……何があったんだろーね。

社員:え?

桃:ん?

社員:社長、何も聞いてないんですか?

桃:聞いたよ。『何とかなりそうなんで明日からまたよろしくお願いします!』って。

社員:え、それだけ?

桃:うん、それだけ。

社員:そう……ですか。

桃:私が知ってるのは乃木坂の事務所に行って、梅と打ち合わせをしたって事だけだよ。

社員:それも、あの生田絵梨花さんのご紹介で……ですよね?


桃:みたいだね。

社員:梅澤さんから衣装制作の依頼を受け、社長の所で研修。その上、生田さんが口利きしてくれるって……彼は一体何者なんですか?

桃:わからない。けれど、制作に取り組む姿勢とか視線、感性、熱意……見ているだけですごく伝わってくる。彼が誰であっても、私達はそれに応えなきゃいけないと思うんだ。

社員:……ですね。

桃:じゃ、サポートよろしくね。

社員:あれ、社長も一緒にやらないんですか?

桃:私はやらなきゃいけない事があるからね~

社員:やらなきゃいけない事?

?:モモコ~。キタヨー!

桃:あ、ローラさーん。コッチコッチ!

社員:ローラさん……どなたですか?

桃:英会話教室の先生だよ。時間無いから来てもらったの。

社員:えぇ!?

ロ:ニューヨークチーズケーキ買ッテキタヨ。


桃:うわ~ベタなチョイスだね~あははは。

ロ:ベタぁ?

桃:あー、えーっと……Just as expected!

ロ:ハハハ! オイシイカラミナサンデドーゾ。

桃:みんなの分もあるってさ。

社員:お、おぉ。さんきゅーさんきゅー

ロ:ドウイタシマシテ~

社員:社長。なんで急に英会話なんて……

桃:ほら、最近は取引先の会社さんに外国人の方もいるしさ、スムーズに打ち合わせ進めたり、要望を細かく伝える為にも必要じゃない?

社員:あぁ……まぁ。

桃:という訳で、私は会議室で英会話教室してきまーす♪

ロ:モモコサン、オカリシマース♪

社員:取引先に外国人……いたかしら?



―hio株式会社・リフレッシュルーム―

〇:ふぅ……人と話すのって結構体力使うんだなぁ。

(ソファーに腰掛けたまま目を閉じて休憩する○○)


社員:お疲れ様。

〇:あ、お疲れ様です。

社員:はい、ケーキ。

〇:え? どうしたんですかコレ。

社員:社長の英会話の先生が『ミナサンデドーゾ』って。

〇:へぇ……大園社長、英会話習ってるんですか?

社員:みたいよ? 私も今日知ったんだけど、取引先の社員さんが外国人でもスムーズに打ち合わせ出来るようにしたいんですって。

〇:そっか、確かにクライアントは日本人に限った事じゃないしな……大園社長すごいな。そこまで考えて仕事してるのか。見習わなきゃな、うん。

社員:キミはどこからでも何でも吸収するわねぇ。ホント感心するわ。

〇:折角研修させてもらってるので、見聞きしたモノ全て持って帰ろうと思ってます。

社員:そんな勉強熱心な○○君に相談があるんだけどさ。

〇:僕にですか?

社員:うん。是非キミの意見も聞かせてほしくて。

〇:はい、僕で良ければ……

社員:ホント? じゃあ、ちょっとコッチ来て。

〇:え? あ、はい。

(ケーキを手に持ったまま、どこかへ連れていかれる〇〇)



―hio株式会社・会議室―

(誰もいない会議室。デスクの上には資料が散乱している)


社員:早速なんだけど、これを見てほしいの。

〇:えっと……これは何の資料なんですか?

社員:社長の誕生日プレゼント。

〇:……はい?

社員:これは、今まで私達が社長にプレゼントしてきた商品なの。

〇:あぁ……はい。

社員:会社立ち上げから毎年準備してきたんだけど、正直行き詰まってね。

(深刻そうな表情をする社員と、イマイチ状況が飲み込めない○○)


〇:行き詰まるって、何にですか?

社員:もう思いつかないのよ、他に何をプレゼントすればいいか。

〇:そんな深刻に考えなきゃいけないんですか?

社員:大切な人には喜んでもらいたいじゃない?

〇:まぁ、そうですね。

社員:キミは観察眼も良いし、意見をもらえないかと思って。どうかな?

〇:九州のおいしいトマト詰め合わせ、スタバのギフトカード、TOHOシネマズのギフトカード……使いやすい包丁セット。


社員:会社を立ち上げて今年で四年目。去年まで何とかみんなで考えてきたけど、毎年トマトの詰め合わせとギフトカードじゃ味気ないし、だからと言って洋服なんて恐れ多くて渡せるわけないし……

〇:まぁ……確かに。

社員:という事で、アイデア募集中なの。お願い!

(○○に手を合わせて、頼み込む社員)


〇:大園社長に直接聞いちゃうってのはどうですか?

社員:実は去年、思い切って社長に『何か欲しい物はありますか?』って聞いたんだけど

〇:はい。

社員:『私の事なんて気にしないで。みんなが元気に仕事してくれてるだけで嬉しいよ』って言われちゃって。

〇:そんなこと言われたら、それ以上踏み込めないですね。

社員:とはいえ何もしないわけにはいかず、トマトの詰め合わせと包丁セットを……

〇:あぁ、これですか。大園社長はトマトが好きなんですね。

社員:だからといって去年と同じなんてデザイナーとして失格よ。そして今年もこの季節が来てしまった……もう去年の失態は許されない。

(頭を抱えて悩む社員)


〇:アイデアは浮かびませんけど、皆さんが大園社長が好きな気持ちは凄く伝わりました。

社員:社長の誕生日まであと一か月。何か思いついたら教えてくれないかな?

〇:わかりました。家に帰って調べてみるので少しお時間いただけますか?

社員:モチロンよ。期待して待ってるわ。

〇:はい。



―○○のマンション―

(真剣にパソコンの画面を見ている○○)

〇:……

〇:友達や家族とも違う。特別な存在って事なんだろうな。

5年間ずっと一緒にいたんだもの    梅澤美波

〇:……

〇: かき氷か……そういえば随分食べてないなぁ。



―SME六番町ビル・28階Bスタジオ―

咲:タタタン、タタタン、タタタタタタタ、ん~頭で数えちゃうなぁ。もっと体に覚えこませなきゃ。

和:このステップ、難しいよね。

咲:うん。頭では分かってるんだけど、足がうまく動かなくて。


和:アルバムとかに収録されるのかな?

咲:ね。今野さんは『新曲だ』って言ってたけど……でもセ  

和:そういえば梅澤さん見なかった?

咲:姐さんならさっき打ち合わせに行くって言ってたよ。

和:そっか。じゃあ後にしよーっと。

咲:和

和:ん?

咲:頑張ろうね、姐さんの卒業コンサート。

和:もちろん!


咲:泣くなよー?

和:それは咲月でしょ? 聞いたよ、楽屋で号泣しながら梅澤さんに抱き着いたんだって?

咲:……誰から聞いた?

和:は・る・か・さ・ん♪



―SME六番町ビル・28階会議室―

(現役三期生メンバー、そして佐藤楓と吉田綾乃クリスティーが打ち合わせをしている)

楓:どうするの?


梅:空ける。ここは空けたままにしたい。

葉:神宮の時もそうだったもんね……

与:私は賛成。誰かが入るより、空けた方が存在を感じられる気がする。


蓮:うわ、めっちゃ良いこと言った。

理:ね。

珠:珍しく会議に参加したな。

吉:あはは、ホントだね~


与:なんだよー! 私だってたまにはちゃんとしたこと言うんだから!

葉:まぁまぁ。

麗:とはいえ、みんなも賛成って事でいいんじゃない?

蓮:だね。

理:やまは?

美:……梅が、それでいいなら。


理:え?

梅:……ありがと。

吉:あ、衣装って新しく作ってるんでしょ?

楓:え、そうなの?

梅:うん、今デザイナーさんが頑張って作ってくれてるから楽しみにしてて。

与:ホント? 楽しみ~♪

(衣装が新調される話題で盛り上がる一同)

梅:(小声)……ちゃんと作ってるんでしょうね。

―つづく―



【おまけ】



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