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ソラを見上げて #27 軍団の絆

2024年が幕を開け、昨年9月にネット上で起こった空扉を巡る物議は乃木坂46運営から説明が無いまま沈静化。解決しないまま置き去りにされた疑惑は、ファンの心の中でくすぶり続けていた……



1月11日
オフィシャルYouTubeで【乃木坂46分TV】を生配信し、12th YEAR BIRTHDAY LIVE』の開催が決定した事を発表。さいたまスーパーアリーナにて、2024年3月7日~10日の4日間に渡り開催される。

ライブコンセプトは、4日間を通して乃木坂46の歴史を辿る構成となっており、Day1は2012年から2014年、Day2は2015年から2017年、Day3は2018年から2020年、そしてDay4は2021年から2024年にリリースされた楽曲を厳選して披露する事も併せて発表。


2月11日
乃木坂46の35thシングル(タイトル未定)が、4月10日に発売されることが決定し、グループのレギュラー番組『乃木坂工事中』で発表された。また翌週2月18日放送の同番組でフォーメーションが発表され、3期生の岩本蓮加がセンターを務める事が分かった。この日発表となったフォーメーションは、今年二十歳になる岩本を祝うように、彼女の同期である3期生全員が選抜入りとなった。

岩本は『アンダーと選抜を経験させてもらった事もあって、ポジションにあまりこだわらなくなっていた部分は正直あったんですけど、やっぱり選抜で単独センターって言われると、すごく嬉しいし身が引き締まります』と語り、『自分が二十歳になった節目で、こういうフォーメーション(3期生全員選抜)を取らせていただけることは、ありがたいなという感謝の気持ちを持ちつつ、このシングルで、一番先輩となった3期生も一皮むけられたら。いい先輩となって盛り上げられたらと思います』と今回への特別なフォーメーションへの思いを話した。


3月7日~10日
12th YEAR BIRTHDAY LIVE開催。デビューシングル”ぐるぐるカーテン”から最新シングル”Monopoly”、アルバム収録曲を含めた全123曲を披露。

また最終日Day4のアンコールでは4月10日にリリースを控えた35thシングル“キセキトミライ”をサプライズで初披露。岩本蓮加は最後に『乃木坂46は未来に向けて精一杯走り続けていきます。皆さんも一緒に坂を登り続けてくださったらうれしいです』という言葉を残し12周年ライブに幕を下ろした。

一方梅澤は開催期間中に体調を崩し3日目を休演。ライブ終了数日後、公式配信で体調不良による休演をファンへ謝罪した。


4月11日
佐藤楓が11月までの活動をもってグループからの卒業を発表。


5月13日
山下美月が2024年7月からスタートする新月9ドラマのヒロインを務める事が発表。


6月2日
公式サイトが乃木坂46真夏の全国ツアー2024の開催を発表。札幌ドームから福岡ドームなど全国各地のドームを巡り、東京ドームで締めくくる過去最大規模のツアーにファンは盛り上がった。


6月24日
乃木坂46OGの生駒里奈が、乃木坂46公式ライバルグループ【僕が見たかった青空】の運営アドバイザーに就任。さらに同グループの衣装監修に生駒と同じくOGの伊藤万理華が就任。現役vsOGの構図が世間を賑わせた。


8月10日
乃木坂46真夏の全国ツアー2024開催。ツアー初日に36枚目シングル表題曲【暁の流星群】を発表。筒井あやめ、遠藤さくら、賀喜遥香の三人がフロントメンバーを務める。センターは筒井、両脇は遠藤と賀喜が務め、24枚目シングル【夜明けまで強がらなくてもいい】から5年経過し、大きく成長した3人の姿にファンは大いに盛り上がった。

しかしその翌日……




(2024年8月11日)

―札幌ドーム―

M00.OVERTURE
M01.インフルエンサー(井上和、菅原咲月)
M02.裸足でSummar(賀喜遥香)
M03.ジコチューで行こう!(岩本蓮加)
M04.スカイダイビング(林瑠奈)
M05.MCパート(挨拶、各メンバーの意気込み)

(オープニングを終え、ステージ裏へ戻るメンバー達)


『次の出番の子はすぐ着替えて!他の子は自分の番まで待機。立ち位置の確認忘れないで』

美:あ~ライブはやっぱ晴れに限るね

遥:ですね。雨だと前髪崩れるし、衣装が体に張り付くし。

梅:はぁ…はぁ。

林:梅澤さん大丈夫ですか?

梅:ん? うん。

林:でもすごい汗。顔色も……

梅:大丈夫大丈夫。瑠奈は次の準備しなきゃでしょ?

林:はい。じゃ……行ってきます。

梅:頑張って

(林を見送る梅澤)

美:……




M06.バンドエイド剝がすような別れ方(五期生)
M07.I see(四期生)
M08.僕の衝動(三期生)
M09.ひと夏の長さより(池田瑛紗)
M10.MCパート2(五期生全員がデビュー当時を振り返る)

(メンバーが走ってステージ裏に戻る最中、梅澤が急に立ち止まる)

梅:はぁっ、はっ、はぁ……

美:梅、どした?

梅:はっ、かはっ、はっ

(その場にうずくまり、悲鳴のような呼吸をする梅澤)


美:梅!

林:梅澤さん!

梅:はぁっ、はぁっ、はっ

美:どうしたの? どこか苦しいの?

林:とにかく医務室に行きましょう。立てますか?

今:どうした?

林:今野さん。梅澤さんが急に苦しみだして  

今:またか……

美:え?

今:梅澤、俺の声が聞こえるか? 呼吸することに集中しろ。目を閉じて、ゆっくり鼻から吸って、ゆっくり吐くんだ。

(梅澤に駆け寄り、声をかける今野)


梅:ふっ、ふぅ、はぁ、ふぅ……

今:無理に整えようとしなくていい。徐々に、出来る範囲でいいから。

梅:はぁ、ふぅ……すぅ、はぁ……

(梅澤の呼吸が徐々に落ち着いてくる)


今:山下。

美:はい。

今:梅澤を少し休ませる。その間、空いたポジションの代打を決めてくれ。

林:代打……

美:今から、ですか?

今:無理を言ってるのは分かってる。だが緊急事態だ、やるしかない。何かあったら責任は俺が取る。

美:わ、わかりました。

梅:ご……めん。やま。

今:梅澤はしゃべるな。落ち着いて呼吸する事だけ考えろ。

林:あの  

美:どうすれば……

林:私じゃ駄目ですか?

美:えっ?

林:梅澤さんの代打。私にやらせてもらえませんか?

今:いけるのか?

美:瑠奈。今から振り付けを覚える時間なんてもう  

林:無いでしょうね。

美:だったら!


林:大丈夫です。梅澤さんの振り付けと立ち位置なら、昨日の内に全部頭に叩き込んでます。

美:え、全部って……全部?

林:はい。

(黙ったまま笑みを浮かべる今野)


美:だとしても、自分の出番だってあるのに代打までやったら瑠奈が倒れちゃうよ!

林:美月さん。私、これまで副キャプテンらしい事なんてほとんど出来なかったんです。だから、こんな時だけでも……私にやらせてほしいんです。梅澤さんの力になりたいんです。

美:瑠奈……

今:よし、頼んだぞ。林が梅澤の代打をやる。周りのスタッフは林の着替えと移動を全力でサポート。林はこれから出ずっぱりだ。俺たちも出来る限りのサポートをするぞ。

(イヤモニごしにスタッフ全体へ指示を出す今野)


今:俺はこのまま梅澤を医務室に連れて行く。ステージは任せたぞ。

美&林:はい。

(梅澤を背負い、医務室へ向かう今野)




美:ありがとね、瑠奈。

林:任せてください。負けるな、しょげるな、代打瑠奈! ですから。


美:へへ、頼もしいね。後は、梅がやるハズだったMCパートはアドリブで何とかするしかないかなぁ。

林:次のMCパートは【帰り道は遠回りしたくなる】の曲終わりで、センターのさくらに帰り道の散歩エピソード聞く事になってます。

美:瑠奈。まさか  

林:副キャプテンですから。

美:こんな頼もしい姿、梅に見せてやれないのが残念ね。

林:いいんです、私はあくまで副キャプテンです。誰かに存在感をアピールする必要なんて、ありませんから。

美:良い後輩を持ったね、梅は。

林:ちょっと、美月さんの後輩でもあるんですけど?

美:あっははは! そうだった。じゃあ行こうか、副キャプテン!

林:はい!




急遽の代打にも関わらず、梅澤のポジションを完璧にこなした林瑠奈。更にはMC台本まで全て把握していた事から、以降のMCパートも滞りなく予定通り進行した。大役を果たした林だったが、梅澤の異変を感じつつ、ただ見ているだけで支えになれない自分に苛立ち、苦悩する。


ライブ中に倒れた梅澤美波は診察の結果、過度のストレスによる過呼吸を起こしていた。早急に休養が必要と判断され、数日間ライブを休演。公式サイトからは体調不良による休演と発表され、度重なる体調不良に多くのファンから心配の声が上がり、昨年起こった物議も相まって重病説などの憶測も飛び交う事態に発展。

キャプテン就任後、背負ってきた責任とプレッシャー。そして空扉の事をメンバーやファンに隠したまま活動している事への後ろめたさ。それらは梅澤美波の心と体を少しずつ、確実に蝕んでいた。




(2024年9月某日…)

全国ツアー終了後、梅澤はブログでファンへ向けて謝罪。そして林は梅澤の異変に気付きつつも、かける言葉が見つからず、ただその姿を目で追うばかりの日々が続いていた。

必死に見えない何かと戦う梅澤と林。互いに余裕の無い状態で活動しコミュニケーションが中々とれない状態が続いた。かつてグループに流れていた和やかな雰囲気は薄れ、張りつめた空気が漂い始めていた。

グループに流れる雰囲気の変化にいち早く気づいたのは山下美月と阪口珠美、そして賀喜遥香だった。美月と珠美はとある人物に相談すべく、連絡を取る。




―都内某所―

(個室のテーブルに座っている一人の女性)


珠:失礼します

美:お待たせしてすみませんでした

若:よぉ、久しぶり。なんだ、ンゴは無しか? あはは

珠:もう~若月さんの中で私って歳をとらない設定なんですか?

美:こちらからお呼びしたのに、遅くなってすみません

若:あーもうそういうの無し無し! 早く座りなって

珠&美:失礼します



若:直々に連絡してきたと思ったら、こんな個室付きの店まで予約して……大きくなったなぁ二人とも。美月は月9ヒロインにまでなって……

(わざとらしく目頭を押さえる若月)


美:もう、茶化さないでください

若:で、大事な話があってここにしたんでしょ?

美:……はい

珠:……

若:梅か

美:既にお見通し、でしたか。

珠:やっぱり何か感じますか?

若:私もしばらく会ってないけど、番組での表情とか見てると何となく伝わってくる。異変って訳じゃないけど、いつもと様子が違うってのはわかる。

美:私達もそうです。様子がおかしいのは感じてても、何も出来なくて……

若:それに梅の事だもの。疲れも見せなきゃ弱音も吐かない。つまづいて転んだとしても、すぐ立ち上がって大丈夫大丈夫! って感じでしょ?

美:仰る通りです。でも、せめて同期の私達には相談してほしいんです。何も言わず、笑顔で活動してるから余計に声かけ辛くて。

若:で、私だったら何か話すかもしれない。そういう事?

珠:はい。

美:すみません。頼れるのは若月さんしか思い浮かばなくて……

若:そっか。なら、私じゃ力になれないよ。


珠:そんな……

美:お願いします。梅を助けたいんです!

(椅子から立ち上がり、若月に頭を下げる美月と珠美)


若:聞こえなかったの? 私じゃ力になれないって言ったんだよ?

美:それは……自分達で解決しろって意味ではないんですか?

若:そうとは言ってないでしょ? ちょっと待ってなって。

(悲しそうな美月の視線を感じつつ、携帯電話を取り出す若月)


若:入ってきていいよ

珠&美:?

(個室の入り口が開き、二人の女性が入ってくる)


玲:寂しいなぁ、頼れるのは若月だけ? 真夏はともかく、初代キャプテンには相談してくれても良いんじゃない?

真:ちょっと! ともかくって何? 私は梅と二人三脚でやってきた経歴あるんだから、頼るなら玲香より私でしょ?


珠:玲香さん、それに真夏さんまで!

美:お二人とも……どうして?

若:私が呼んだの。ここは軍団長が出るより、歴代キャプテンの方が適任でしょ?

美:若月さぁん

珠:大好き!

(目を潤ませて若月に抱き着く美月と珠美)


若:おぉぉ、あははは! ありがとね、相談してくれて。嬉しかったよ

玲:じゃ、早速動こうか。

真:そうだね。梅のピンチだし、たまには先輩らしい所も見せなきゃね。

若:頼んだよ。真夏、玲香。

玲&真:オッケー♪

玲:ねぇ。折角個室なんだし、久しぶりにさ……やらない?

(玲香は他の四人に見えるように手を叩くジェスチャーをする)


若:いいね。やろうか

珠:嬉しいです!

美:まさか皆さんともう一度できるなんて……

真:テンポ大丈夫かなぁ?

若:玲香、号令して

玲:じゃ、いくよ皆。梅ちゃんを助けるぞ!

全員:おー!

玲:せーの!

の~(手拍子)、
ぎゅ(手拍子)、
ぎゅー(手拍子)、
せーの! 努力、感謝、笑顔。
うちらは乃木坂上り坂、46!


ーつづくー



【おまけ】




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