「7秒間の第三種接近遭遇」
相手はETではない。
だが、あの頃の僕にとっては、それ以上に遠い空間の生き物だったかもしれない。
ある日の夕方、とある会社の出入り口に向かって歩いていると、玄関の外に、女子高生たちが5~6人たむろしていた。
携帯電話を片手に画像やメールを送受信してながら、なにやら大声をあげて盛りあがっている様子だった。
どこの高校の制服なのかは知らないが、あまりお行儀の良くないその集団のすぐ横を通り抜けなければならない。正直言って、あまり良い気持ちではなかった。
すると、その集団の中の1人。
「うるさくてすみません」
意外なひと言だった。
その場を思い出してみると、僕の歩行が、彼女たちのそばで少しばかり速度アップしたように思う。その様子から内心を読み取ったのかもしれない。そうだとすると、なかなかの観察眼である。あっけらかんとした口調だったが、反抗的な嫌味は感じられなかった。
「元気で良いよ!」
そう言って返すと、弾けるように笑い声があがり、
「がんばってください!」
明るい声が返ってきた。
「ありがと!」
と、最後にひと言。
ただそれだけの会話。
***
アイツら、ああ見えて、自分たちだけの世界に浸りきっているわけでもないんだな。
彼女らが実際はどんな子供たちなのかは知らないわけだが、たぶん色々と悩みもあり、彼女たち自身も大変だろうし、学校の先生もまた大変だろうなぁ・・・、などと、ふと想像してみたり。
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その後10数年経ち、それなりに歳を重ねた今では、どんな相手であっても、あまり距離を感じなくなっていて、この手記を読み返して新鮮に感じました。
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