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「粂樫トンネル」という心霊スポットをご存知ですか

あなたは「心霊スポット」といえば、どんなものを思い浮かべるでしょうか。

地元住民すら近寄らない廃墟、死亡事故が絶えない峠道など、心霊スポットは様々なものが存在します。

そのほとんどは、噂がひとり歩きして騒がれているだけの場所なのでしょう。

私の地元にある「粂樫トンネル」も、きっとそのひとつに過ぎません。

先日、私は里帰りをしてきました。
その際、以前に家出をして行方不明になった友人、××××の残したメモの存在を知りました。

その友人が家出をしたのはもう6年も前になります。今さらそのメモの存在を知ったとして、彼女の行方を追うのはもう不可能でしょう。

元々、何日も家に帰らず大学にも来ないなんてことがよくある人物でした。バンドマンだった彼女は、本当にたくさんの人と繋がりを持っていました。私も何度か彼女とスタジオに入りましたが、見るからにガラの悪そうな方々に話しかけられ驚いたこともありました。
そんな人物でしたから、皆失踪当時こそ慌てたけれど、「遅かれ早かれこうなっていたのだろう」と少し納得もしてしまったのです。

私も恥ずかしながらそのひとりで、だからその日まで彼女のメモに気付かなかったのでしょう。

前述しましたが、彼女はバンドをやっていました。いくつか掛け持ちしていて、私もそのひとつに所属していました。
私は彼女と一緒に楽曲作成をしており、歌詞や楽曲についてのいわゆる「ネタ帳」をクラウドで共有していたのです。

彼女のメモは、そこに入っていました。
日付は6年前。正確には覚えていませんが、おおよそ失踪した時期と合致するのではないかと思います。

そのたったひと言のメモから、私は僅かに粂樫トンネルとの関連を疑いました。確証はなく、ほぼ思いつきと言ってもいいでしょう。

私は興味本位で、粂樫トンネルについて知人に聞いてまわることにしました。実際に友人に関係あると真剣に思ったわけではありませんでした。

伝手の伝手をたどり、実に5名の方からお話を伺うことができました。

私は、彼女の失踪の真実を知ることは叶いませんでした。ただ、複数のピースが複雑に絡み合って生まれた、荒唐無稽な仮説があるだけです。


1.Aさんの話

粂樫トンネルですよね、実は何回か行ったことがあるんですよ。
手鏡さんは……ないんですね、まあ別に行っても何もありませんでしたから、行かなくていいと思います(笑)

粂樫トンネル自体は知ってます?
あ、いえ、私も詳しいわけではないんですけど。
粂樫トンネルって、その名の通り粂樫山にあるトンネルなんですよ。で、それが何で心霊スポットって呼ばれてるかっていうと、とにかく不気味なんです。中には照明の類が一切なくて、天井に開けられた穴から光が差し込むだけで。だから、夜なんかは本当にまっくらで、懐中電灯があっても全然先が見えないくらいなんです。

粂樫トンネル内部

幅は車一台がようやく通れるくらいで、長さは……正確に覚えてるわけではないんですけど、車で5分くらいだったような気がします。歩いていったときは20分くらいかかったような。足音がめちゃめちゃ響いて、それが不気味でした。後ろからどんどん足音が近づいてくる!と思ったら別の肝試しグループだったり(笑)
あと、天井穴から垂れる蔦が、上から女の人がのぞいてるみたいに見えてびっくりしましたね。

まあ、それだけでしたけど。特に幽霊が出るとかそんなことは一切なかったですね。それでもあの独特な雰囲気に惹かれて皆行きたがるんだと思いますよ。

2.Bさんの話

久しぶりじゃん。いつこっち帰ってきてたん?
あ、そっか。じゃあ明後日帰るのか。また時間ある時あいつらも呼んでバカ騒ぎしような。

で、粂樫トンネルだっけ?いや、そりゃ行った事はあるけど……お前、あれはあんまり深く知らない方が良いと思うけどな、俺は。

いや、だってさ、俺らと同じ大学だった××××、覚えてるよな?あいつ、行方不明になったじゃん。××××、その前日に粂樫トンネルに行くんだーとか言ってて。

……いや俺だって偶然だとは思うけどさ。結局××××まだ見つかってないし。
トンネルの周りの雑木林が自殺の名所だとかいうし、何かに呼ばれたのかもしれないだろ。

粂樫トンネル周辺の雑木林

……え、俺が行ったとき?いや、特に何もなかったけど。
先輩の運転で行ったんだけど、トンネルを出ると後ろの座席がぐっしょり濡れてるって言うんだなんて脅されて、俺はまあまあ怖かったな。
普通に考えたらそんなありきたりな怪談みたいな話で怖がり過ぎだったけど。

他に?そうだな、自殺の名所ってのはさっき言った通りで、後は、トンネルができる前は第二次世界大戦の野戦病棟があったとか言われてるよな。
幽霊でいうと、天井の穴……あー、粂樫トンネルって電気ないから、天井に穴空いてんだよ、光を取り入れるために。で、その穴から女がぶら下がってるとか、車の離合場所に親子が立ってるとか……俺が知ってるのはそんなもんだな。

3.Cさんの話

やっほー、元気してた?
粂樫トンネルについて聞いてまわってるんだって?もー、最初にあたしに聞けばいいのに!ジモティーだよ?生まれも育ちも粂樫町!

で、また何で急に粂樫トンネルについて調べだしたの?
……まあ、いいけど。

粂樫トンネルって、結構全国的にも有名な心霊スポットなんだよ。ちょいちょい県外のYoutuberとかも来てるみたい。

でも、粂樫トンネルって地元の人たちは全然心霊スポットと思ってないんだよね。夜は暗すぎて絶対使えないけど、昼間は結構使ってるよ。あと、最近は「鳥籠」がインスタ映えするっていうのも有名みたいだね。

あ、「鳥籠」知らない?
えーと、粂樫トンネルってさ、ざっくり2つのトンネルの総称なんだよ。で、その2つをつなぐ骨組みだけの区間・・・・・・・・があるの。そこがまるで鳥籠みたいだってんで、通称「鳥籠」。「中庭」って呼ぶ人もいるね。
で、その「鳥籠」が昼間だと青々とした植物たちと、退廃的な骨組みが共存していてSFチックだって、撮影スポットになってるみたいだよ。あたしたちジモティーからしたら、「鳥籠」の交通悪くなるからいい迷惑なんだけど。

ま、だからあそこが心霊スポットだなんて嘘っぱちなんだよ。
……何その納得いきませんって顔。どうせ皆言ってたでしょ、なんもないって。

しょーがないなあ、じゃあちょっと別の視点で、もうひとつ教えてあげよう。

っていっても大した情報じゃないけどね。
粂樫トンネルってさ、どうして作られたか知ってる?
あのトンネル、通称目隠しトンネルっていうんだよ。

なんで目隠しかっていうと、隣に大きなホテルあるでしょ。「粂樫観光ホテル」。あそこが建てられたとき……昭和42年に、ホテル創業者のながやま観光産業が、「外国人観光客の目に農村や農民が映るのは著しく景観を損なってしまうためよくない」って。で、本来普通の道だった場所の地下を掘って作られたのが、粂樫トンネル。

だってトンネルって普通山を迂回しなくていいように作られることが多いでしょ?でも見てよ、粂樫トンネルは山の麓に沿うように作られてる。長さもほら、粂樫観光ホテルとぴったり一緒でしょ。

だから、中に照明がついてないんじゃないかって言われてる。そこにお金かけたくなかったんだろうって。

ま、そんなんだからながやまグループは今も昔も嫌われ者ってわけ。
……え?ながやまグループ知らないの?うっそ、そんな人いるんだ。

ながやま観光産業、通称ながやまグループはうちらの地元を牛耳ってる企業だよ。ホテルだけじゃなくて、交通とかも結構ながやまグループだったかな。思想強めのラッピングバス見たことない?ないか。

資本金も全国で5本の指に入るとかじゃなかったかな……普通にこっちで暮らしてたら絶対目に入ると思うんだけどな。ま、東京じゃ見ないだろうしそんなものか。

え、何で嫌われ者かって、うーん、色々ありすぎて逆に説明が難しいかも。まあ、ひとことで言うならワンマン経営ってことかな。報道関係にも顔がきくせいで報道にも口を出すし、うちの県の諸々まで関係してるから、県すら口出しできないって噂もある。潰れたら潰れたで悪影響が各方面に大きいからそれも困るっていう……でも経済界のトップであることは間違いないけどね。

4.私の疑問

ここまで、3人の方からお話を聞きました。
Bによると、××××は失踪前に粂樫トンネルへ足を運んでいたとのことです。
やはり、××××の失踪は粂樫トンネルと関係があるような気がしてなりません。

しかし、粂樫トンネルとはなかなか異質な心霊スポットのようです。少し情報を整理してみたいと思います。

1.粂樫トンネルは粂樫町の粂樫山にあるトンネル

2.もともとは隣の「粂樫観光ホテル」から目隠しのために作られた

3.全国的に名の知れている心霊スポットだが、地元の人たちは普段使いしている

4.粂樫トンネルは2つのトンネルから作られており、その2つをつなぐ骨組みの区間「鳥籠」がある

5.トンネルは車が1台通れるほどの幅で、車で5分くらいと比較的短い

6.噂は「第二次世界大戦中に野戦病棟があった」「周りの雑木林が自殺の名所となっている」など

7.目撃される幽霊は「天井の穴からのぞく女」「車の離合場所に立つ親子」「濡れている後部座席のシート」など

簡単に箇条書きで羅列すると、このような形になりました。

中でもやはり異質なのは、作られた理由。そんなことのためにわざわざトンネルを作るでしょうか。いくら大企業とはいえ、たったひとつのこだわりのためにトンネルを作る経済的余裕があるとは中々考えにくいです。ひとつのこだわりに妥協しないからこそ大企業になった、と言われればそんな気もしてきますが。

また、他にも気になるところがあります。
それは、トンネルにまつわる噂と目撃される幽霊のちぐはぐさです。

普通、「野戦病棟があった」場所に現れる幽霊といえば、やはり兵士がポピュラーなのではないかと思います。「自殺の名所」というのも同様です。折角自殺という文言が入っているのだから、「天井穴から首を吊った人がぶら下がっている」くらいのパンチのある幽霊目撃情報があってもいい気がしますが、実際に目撃されているのは「天井穴からのぞく女」や「離合場所に立つ親子」といった、噂話との関連が想像しにくい幽霊ばかり。「天井穴からのぞく女」は蔦の見間違いともとれそうです。
また、「後部座席のシートが濡れている」なんていうのは有名な怪談の二番煎じ感が否めません。

そこで、噂自体を少し調べてみました。
結論から言いますと、どちらの噂も真っ赤な嘘で、信憑性のある話ではありませんでした。

まず「野戦病棟だった」という噂ですが、実は野戦病棟自体が存在していた記録はありました。しかし、それは粂樫トンネルよりも5km程内陸側に存在していたそうです。粂樫トンネルはほぼ海沿いといっていい場所に存在しています。第二次世界大戦真っ只中、粂樫町の中で最も敵地に近い場所ということです。言われてみれば、わざわざそんな危険な場所に病棟を作る理由がありません。

次に「自殺の名所」という噂ですが、私の調べた限り、自殺者や行方不明者の情報は一切見つかりませんでした。しかし、火のない所に煙は立たぬと言います。噂の理由として、とある心霊スポット研究家という方は以下のような推察をしています。

粂樫トンネル周囲の雑木林は、溶岩の影響で方位磁針の不具合が起こることが確認されている。これは富士の樹海を彷彿とさせる現象であり、そのことから富士の樹海=自殺の名所、富士の樹海≒粂樫樹海、粂樫樹海=自殺の名所といった風に三段論法的な考えで広まった噂だと思われる

真実はやはりそんなものでしょう。
あまりに杜撰な噂話に多少呆れもしましたが、どこの心霊スポットもこんなものなのかもしれません。
そう考えていると、ひとつだけ気になるツイート、もといポストを発見しました。

近所で昔みつかった片目の無い死体、調べてみたら全くニュースになってなかったwwwww怖すぎwwwwwwwwww

このツイートのリプライ欄に、既に削除されたアカウントから何かしらのリプライがついており、その返信として

粂樫町ってとこwwwwなんも無いクソ田舎wwwwww

というツイート主のリプライがついていました。
現在そのアカウントは使用されていないようで2016年以降のツイートはありませんでした。
私も軽く調べてみましたが、「片目のない死体」というかなりショッキングなワードにも関わらず、粂樫町でそのような事件が起こった記録は発見できませんでした。

ここで、粂樫町のジモティーを名乗るCさんに電話で尋ねてみることに。

「ああ、あったよねその事件。うちらが小学生ぐらいの頃だよ」

なんと、Cさんの記憶にもあるそうです。俄然信憑性が高くなってきました。

「確か大学生とかだったかな、片方の目が抉られた状態で発見されたって。事故なのか事件なのかもわからない、だってニュースにはならなかったから。……なんでって、こないだも言ったじゃん。ながやまグループは報道関係にも口出しできるって。ただでさえこんな片田舎、全然観光客来ないのにそんな事件でイメージダウンしたら余計来なくなるんじゃないかと危惧して、ニュースとかの報道を制限した。ま、これはお母さんから聞いた噂だけどね」

なるほど、想像の域を出ない話ではありますが、どうやらながやまグループの闇はかなり深いようです。トンネルを作った理由といい、事件の隠蔽といい、やってることがめちゃくちゃです。そういうところが「嫌われ者」の所以なのかもしれませんが、私には裏に隠された真実があるような気がしてなりません。

ところで、私はこの事件でどうしても無視できないところがあります。

それは、死体に片目がないということ。

日本の風習を振り返ってみると、生贄には片目や偏盲の者が選ばれていることが多いのです。柳田國男曰く、神は二つ目より一つ目も好み、生贄となる人や動物の目を片目にすることも行われていたそうです。

片目にする、つまり片目を潰すということ。

この事件が、粂樫トンネルやながやまグループと関係があるのか私にはわかりません。

もう少し、他の人からも粂樫トンネルについて教えていただこうと思います。

5.Dさんの話

粂樫トンネルすか?めっちゃ行きましたよ自分、5~6回は堅いですね。
手鏡さんとも行かなかったけ?行ってないです?そうだっけな~。

いやでも、粂樫トンネルが心霊スポットだなんてただの嘘っすよ。だって実際なんも起きなかったし。

いやいや、それだけじゃなくて……ほら、見てください。粂樫トンネルが心霊スポットだって言ってんの、粂樫町自身なんですよ。

公式サイトで言っちゃってる。いくら観光客来ないからって、そんなんで呼ぶのってどーなのって話ですけどね。

……ああ。それ、その「噂と目撃情報がちぐはぐ」って、自分も思ってました。変だなって。でも、それも当たり前じゃないですか?町が適当にでっちあげた理由に沿った目撃情報なんて得られるわけないし。まあさすがに信憑性がなさすぎますけどね、噂自体。さすがながやまクオリティ(笑)

え?あーはい、そうですよ。粂樫町と……あとどこだっけな、霞海かすみ市も確かながやまグループが運営してたと思います。観光サイト。

これ結構有名っすよ。まあ粂樫トンネルの雰囲気がめちゃこわなのは間違いないんで、手鏡さんも一回行ってみたらいいかもしんないっすよ!

6.Eさんの話

あなたが手鏡さんですか。初めまして。
粂樫トンネルについて調べているそうで。

僕も昔行きましたよ、粂樫トンネル。懐かしいなあ。

ただ、僕の場合は怖いとかじゃなかったんですよ。
というのも、僕仕事が建設関係なんです。それがどうしたって思うかもしれないんですが、粂樫トンネルって結構変な造りになってるんですよね。僕建設関係だから気付いたけど、普通は気付かないんじゃないかなって思います。だからちょっとテンション上がっちゃって。一緒に行ったのも同じ職場の人だったから余計に。

あ、すみません。で、何が変なのかって言うと、粂樫トンネルって音が異常に反響するんですよ。そんなのトンネルだから普通じゃんって思うかもしれないけど、粂樫トンネルの場合は造りが普通じゃないんです。

なんて言うのか……イメージとしては、メガホンみたいな感じですね。トンネル入り口から「鳥籠」にかけて、徐々に広がるような造り・・・・・・・・・・・になっているんです。普通のトンネルはこんな造りになるはずがないんですよ。なので、粂樫トンネルは意図して音が反響するように造られたと考えていいと思います。

あ、「鳥籠」はご存知ですか?……あ、よかった。

まあでも、だからこそこの「鳥籠」が意味わからないんですよね。だって、わざわざ音を反響しやすい造りにしておきながら、「鳥籠」で音は消されちゃうんですから。だってそうでしょう、骨組みだけの開けた場所なんて音が反響しようがありませんから。

だからまあ、結構異質なトンネルなんです、粂樫トンネルって。あの不気味さといい、まるで心霊スポットにするために造られたみたいですよ。

7.仮説

Dさん、Eさんと話を伺いました。
ここで、私はひとつ荒唐無稽なお話を思いつきました。複数のピースを無理矢理はめたような、仮説とも言い難いお話です。

もし、地方を牛耳っている程の権力を持つ大企業が裏で殺人を行っているとしたら。

まず、粂樫トンネルは、粂樫観光ホテルの「目隠し」として造られたトンネルです。だけど、それは理由としておかしいんです。なぜなら、目隠しにするならば「鳥籠」は不要だからです。
骨組みだけの開けた場所「鳥籠」は、目隠しとしての役割を果たしません。今でこそ木々に覆われて目隠しになっているかもしれませんが、造られた当時は目隠しになっていなかった可能性が高いと思われます。

もちろん、表向きは「目隠しのため」という理由なのでしょう。けれど、きっと粂樫トンネルがつくられた本当の理由は別にある。
だって、粂樫トンネルの造りは普通ではないのです。照明がなくて、音が反響しやすいように造られていて、「鳥籠」が存在する。

この環境は、考え方によってはあることに利用できると思いませんか。

夜は真っ暗で明かりがない。
誰かに顔を見られ、見つかる可能性が低くなる。

音が反響しやすい。
話し声や足音がすれば、遠くにいてもすぐに気付くことができる。たとえ暗闇であっても。

「鳥籠」と呼ばれる、音が反響しない開けた場所がある。
多少の物音を立てても、外に聞こえることはない。

誰にも見られてはならないことを、誰にも見られずに行うことにうってつけな場所だと思いませんか。

もちろん、それ・・を殺人とすぐ結びつけるのはおかしな話です。

しかし、粂樫トンネルは心霊スポットなのです。
もっと正確に言うと、心霊スポットに仕立てあげられているのです。

粂樫町の観光サイトには粂樫トンネルが心霊スポットである所以が載っています。それらの噂が真っ赤な嘘であることは既に説明したため端折りますが、それらの噂を載せたの観光サイトの運営者、つなりながやまグループです。

心霊スポットというのは、観光客を呼ぶために使うには賛否両論あると思います。しかし、それは観光客に限った話です。ただ単に人を呼ぶためとしては、いい戦略であると私は思います。実際、粂樫トンネルにわざわざ県外から足を運んだ人のブログなんかもたくさん目にしました。

さて、皆さんは心霊スポットに行く人ってどんな人だと思いますか。いえ、もちろん色んな人が足を運ぶとは思いますが、あくまで母数の中の割合として、どのような層が心霊スポットを訪れるイメージがあるでしょうか。

Youtuber、カップルなどもありますが、一番はやはり遊んでいる・・・・・高校生や大学生といった、急に家出や失踪をしてもすぐには話題になりにくい若者たちではないでしょうか。

誰かが失踪したとき、どんなに話題にならなかったとしても、人がひとりがいなくなった事実は変わりません。家族や友人など周りの人たちが捜索するでしょう。

しかし、元々遊びまわっていて帰ってこない日が多々ある高校生や、ひとり暮らしで滅多に実家に帰らない大学生。もし彼らが失踪したとしても、すぐには家族も友人も気付きにくいのではないかと思います。そして、時間が経てば経つほど失踪場所は特定しにくく捜索は困難になる。

以前、粂樫町では片目のない死体が発見されたそうですが、それが報道されることはありませんでした。ながやまグループが報道を規制したからです。

Cさんは「観光客が減ることを危惧したのでは」と言っていましたが、本当は「自分たちの行った殺人を揉み消した」としたら。

今まで述べた仮説が、万が一事実であったならば。
粂樫トンネルとは、まるでハエトリグサのように、獲物を吸い寄せる機能と仕留める機能を併せ持った殺人場といえます。

では、なぜそんなことをする必要があるのか。
人を呼び寄せるということは、継続的に殺人を行っているということであり、しかも、獲物は誰であっても構わないということです。そんな無差別的な殺人の動機なんてあってないようなものな気がします。

しかし、私にはひとつ嫌な考えが浮かびました。

生贄です。

前述したように、粂樫町では以前「片目のない死体」が発見されました。
そして、片目を潰した後神に生贄を捧げるという行為は、日本では比較的ポピュラーな手法として行われていました。

何らかの形で生贄として捧げられそうになった人物が、その場から逃げ出しその途中で命を落とした。死体は発見されたが事実は闇に葬られた……としたら。

粂樫トンネルは生贄を呼び寄せ、神に捧げるために造られた。
比喩ではなく、本当にあの世への入り口となるのでしょう。

そう考えると、粂樫トンネル付近での自殺者や行方不明者の情報が一切ヒットしなかったのも、納得できるような気がします。情報社会の現代の神隠しは、いなくなった事実すら葬られるのかもしれません。

私の友人××××とは、未だに連絡が取れません。
バンド仲間とどこかで暮らしていることを切に願っています。

最後に、調べたことをいくつかまとめてこの記事はおしまいとなります。
お付き合いいただきありがとうございました。

心霊スポットに興味本位で足を運ぶのは、どうぞお気をつけください。

8.粂樫町の逸話

むかしむかし、ある所に小さな村がありました。
その村には、大きな山がありました。その山はきれいな円錐型をしており、××富士と呼ばれることもあったそうです。

現在その山の麓には、水無湖と呼ばれる場所があります。その名の通り、水の無い湖です。この湖には、かつては水が満ちており、蛇池と呼ばれていました。その底に、一匹の大蛇が住んでいたからです。

その大蛇は、たいそう狂暴な性質であったそうで、毎年供物を大量に捧げなければ、暴れて堤防を壊し洪水を起こしては村人を困らせていたそうです。

村人たちは供物を捧げ続けていました。しかし、大蛇の要求は激化していきます。

「村の若い娘を寄越せ」

村人たちは、困り果ててしまいました。今まで供物として捧げていたのは魚や牛などの動物ばかり。生きた人間を差し出すなんて、誰もしたくなかったのです。

「殺そう」

誰かが言いました。あの大蛇を殺そう。もう我慢の限界だ。村人たちは大蛇を殺そうと決意を固めました。

村人たちは、供物に大量の毒を仕込みました。
そして生贄として用意した娘には、脇差を握らせました。

大蛇は上機嫌で供物を口にしました。その様を隣で見ていた娘は、大蛇の片目に脇差を突き立てました。

大蛇は苦しみながら、村人たちが謀ったことを知りました。

怒り暴れ狂った大蛇は、堤防を壊し、湖から水が無くなってもなお暴れまわりました。
村は半壊となり、村人たちは皆死を覚悟しました。しかし、湖には驚くべき光景が広がっていました。

なんと、大蛇は暴れまわったせいで全身毒に侵され、水の無くなった湖の真ん中で息絶えていたのです。

村人たちは喜びました。もう供物を捧げなくて済むと。
しかし、翌朝村人のひとりが死にました。

さらに翌日、2人死にました。

毎日毎日、人が死にました。死体の目の周りには蛇の鱗が浮き上がっていました。村人は、大蛇の祟りだ、と思いました。
慌てて湖に祠を建て、供養しました。それでも人は死に続けました。

供物を捧げました。人は死に続けました。

生贄を出しました。人は死に続けました。

また生贄を出しました。人が死ぬのは、ぱたりと止みました。
その生贄は、生まれつきの偏盲でした。

それから、村人は毎年生贄を捧げました。生きたまま片目を潰した者を捧げました。

やがて時が経ちその湖は、蛇池ではなく水無湖と呼ばれるようになりました。

生贄は、捧げ続けられています。

9.資料

10.××××のメモ

なかにわにちかよるな

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