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馬喰ってそういう意味だったのか!

十年前くらいに、何かの用事で馬喰町という駅に降り立った。
まだ東京の有名な駅しか知らなかった頃、目的地へのアクセスを見て、駅名が読めなかった。

馬を食う?何ていう駅なんだろう?
そして馬喰って何??

と思いつつ、その時調べるという選択肢は自分の中でなかったので、ひとまず目的地へ向かい用事を済ませたと思う。

もう十年も前なので記憶が曖昧だが、馬喰町と馬喰横山があった気がする。

とにかく変な名前、ということと。
もう一つよーく覚えていることがあって。
それは何かと言うと、宝くじ売り場だ。

地方にはないが、東京(首都圏の他県にはあるのか?)には人力で引っ張って移動出来るくらい小さい箱の中で宝くじを売っている人がいる。
初めて見た時はびっくりした。
初めて見たのは確か銀座のApple Storeの前だったかな。
ちょうど新商品発売前だったらしく、Apple Storeに並んでいる人がいた。発売前に。
それで、その箱型宝くじ売り場が店の前にあったのよね。
最初は、その小さな箱の宝くじ売り場に並んでるんだと思って(笑)!!
一体この人達、こんなちっさい箱に並んでどうした訳?!とか頓珍漢な事を思ったのである。
田舎者丸出しで爆笑だけれど。

で、その箱型の宝くじ売り場が、馬喰町か馬喰横山の駅前に3つ並んでたの。
両脇2つは女性でおばちゃん世代の方かな。
真ん中はおじいさんで。
その小さな箱の中に恵比寿様の熊手か何か立派な物があり、箱にも色々当選した宝くじの回や金額が貼ってあった。

全然買う予定は無かったんだけど、何かすごいエネルギーを感じて一枚買ったのだ。
いつもだいたい一枚しか買わない。
宝くじは確率すごい低いから。
おじいさんから感じる、もう豊かさの塊のようなオーラ。
これ買った方がいいよね、絶対。
と直感的に思って一枚購入。
一枚しか買ってないのに、ちゃんと箱の中に飾ってある飾りについた鈴に、当たりますようにってシャンシャンっとエネルギー入れてくれて。
それだけで、なんかすごく当たりそうな気がするわー!って嬉しくなって帰宅した。

それで、その宝くじの結果は…

5000円当選!

一枚しか買ってないのに。
宝くじも滅多に買わないのに。
平均したって一年に買って一枚なのに。
5000円てすごいと思う。

一度しか行ったことがないし、一度しかそこで買ったことがないけれど、あのおじいさんの宝くじ売り場はかなり当選確率が高いんだろうな。


という、ちょっと変わった思い出のある馬喰町なのだ。

いま、東北地方をメインに昔からある大きなお家(主に豪農)のインタビューをまとめた本を読んでいる。
大黒柱に刻まれた家族の百年、という本だ。
1999年初刷のかなり古い本。
図書館からもらってきた除籍図書だ。
その中に、農業をしながら馬を育てて生きてきたという方がいらっしゃった。

ご先祖が、平泉から逃げて、宮城山形秋田の県境あたりの山に住み着いたという。
そこで山の林業と、米作りをしてきた。
昔の農業は、機械がないから耕すのは馬や牛を使っていた。
大きな農家は敷地内に家がいくつも建ち、従業員ではないけれど農作業を一緒にしていく人たちと共に暮らしながら農業をしていたそうだ。
その中から分家していくケースもあったのだとか。

とにかく大きな農家は戦後の農地改革で田んぼや山を失い、大損失だったわけだ。
逆に小作人は、タダみたいな値段でたくさんの田んぼを手に入れられて大喜びしたのだ。
どっちがいいのか悪いのかはその人それぞれだと思うが。

それで、その馬を育てながら生きてきた方は、もともと馬を増やして将軍に売っていたそうだ。

「伊達政宗っていう殿様は、戦国時代に東北の大将になった人だね。徳川に対抗する武家は馬っ子がないと、戦になんねえべ。これは伝説みてにしかしらねえけっどね、誰かヨーロッパ方面、あっちのほうさ行って、徳川を倒すだけの武器があるものだか何だかしらべさやったんだと。そんで、優秀な馬が目に入ったんだな。ここにいた馬よりかも、モンゴルから来た馬よりかも、すごい馬だったんだ。そいつが純血のアラブなんだよな。
アラブっていうのは、静かで、利口で、速かったんだね。この馬だらば、繁殖させて多くしたら、武器の一端になって、徳川と対抗することができるんじゃねぇかっていうので持ってきたのがもとらしかったですね、調べてみっとね。」

という事で、馬の輸入は禁止されていたけど、支倉常長が、船の底にこっそり馬を隠して5,6頭連れ帰ってこの地で繁殖させたというのが始まりらしい。
その後、競馬が始まるようになってサラブレッドと掛け合わせたりして、良い馬を育てるようになった。と。
時代が変わって競走馬を育てている訳だ。

「育てた馬を、山間部の産地から『馬喰』といわれる業者が買って東京方面まで持って行ったんだ。市場で買って、前の手綱と尾っぽを繋いで何十頭も連れて行ったんだ。」

え!馬喰って職業の名前!?
調べて見ると、もともと古くは中国では馬をみる医者を呼んだそうだが、時代と共に意味が変わっていって、まぁ1番最近は良い馬を見つけて仕入れてくる業者という意味になったそうだ。

意外なところに十年前の答えが出てきて驚きだった。
脳はずーーーっとサーチをしているものなんだね。
答えが見つかるのを焦らない方が面白いのかもしれない。

今は何でも検索ボックスにいれたら簡単に答えが見つかる。
でも、それが実際に生きた言葉として使われている場面に出会うことはなかなかない。
だからこそ、生きた生活の中に使われている場面に出くわすととても面白いのかもしれない。

田舎の山奥のおじいさんの口から語られるエピソードに戦国時代の武将の名前がリアルに出てくるというのもまた興味深いものだ。

他の方のエピソードもどれもかなり面白い。

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