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ハウステンボスを一年で黒字にした経営者

夫の転勤で、しかも玉突き事故的な異動で長崎に転勤になった。

東日本出身の私は、長崎ってどこ?と地図を見るところから始まった。
九州なのはわかるけど…。え、これ住む場所ある訳?というほど狭そうな地図に不安を覚えた。
案の定、狭い土地柄、田舎にも関わらず博多より高い家賃や駐車場、陸の孤島のように便の悪い交通に嫌気がさした。

それでも期間限定と割り切って遠くからでは行けない場所を観光した。
ハウステンボスも一度だけになってしまったけれど、遊びに行った。

ニュースでは、ずっと赤字で経営者が変わっても赤字、どんな場所なんだろうと思っていた。
ただ、私がいた時は既に新しい経営者に変わって黒字化していたけれど。
オランダには行った事はない。けれど、オランダに住んでいたことのある友人が本物みたいよ、と言うから楽しみだった。

実際に訪れてみて、本当にヨーロッパに来たのかと思うくらい美しい街並みにビックリした。
広過ぎてどこに行ったらいいのかわからないくらい広い。大して調べもせずに行ったものだから余計に悪い(笑)。
家族でこいで移動できるボックス型の自転車に乗って、あっちに行ったりこっちに行ったり。
寒い真冬だったけれど、空気がシンとしていて街がより美しく感じられた。

よくわからないので、蘭の展示と、黄金の展示を見た。祖父母も一緒だったので、2人が楽しめるものを、と思いそこへ行った。
どちらもとても楽しかった。
蘭はものすごい数が咲いていて、展示の仕方も工夫されているし、珍しい色の蘭もあり、想像以上に楽しめた。
黄金の展示はさらに人気で、人が多すぎる事ばかり覚えているものの(笑)、大きな本物の金の延べ棒に触れる展示だけはよく覚えている。こんなに重いの!とびっくりした。

ハウステンボスを黒字化したのは、いったい誰なんだろう、どうやって18年もずっと赤字だった会社を黒字に…と、何となく思っていた。
その後、何度か転勤したが、偶然目の前にその謎を明かした本が現れた。
ご本人が書かれた著書が目の前に。

黒字化したのは、HISを創業した澤田秀雄さんという方だった。
世界中を旅した旅人で、留学先のドイツで観光ツアーで学生時代に起業して大成功。
帰国して毛皮の会社を起業したものの、タイミング悪くワシントン条約に日本が参加して全く利益が出ない。
仕方なく始めた格安旅券の会社からHISが生まれたそうだ。

これだけ読んでもすごい方だ。
すごい行動力と勘、センス。
私がいつも気になるのは、どんなご両親にどんなふうに育てられたのだろう。なのだが、そんな事はテーマじゃないので書いてない(笑)。

HISの売り上げがどんどん伸びて成長していき、バブル崩壊で一つの証券会社の経営を打診される。
断っても断っても三度の打診。それに弱いらしいです。秘密ですって書いてるけど。
畑違いだったので買い取った後に任せていた方がライブドア事件がキッカケで自ら命を絶ってしまったそうなのだ。

その後、ハウステンボスもお願いされて、断って、これも三度の打診があって引き受ける事にしたそう。
誠意ある三度の打診に弱い、と書かれていた。
佐世保市長にもお願いされたと書いてあった。

長崎は貧しい。賃金も全国最下位から数えた方が早い。
引っ越してかなりびっくりした。
観光しか産業がないと弱いのだ。
地元の方が、長崎県・長崎市は観光と平和にしか税金使わないんだと皮肉を言うほどバランスが悪いらしい。
当時、子どもが小さかったので、子育て支援の乏しさに驚いたと同時に、豊かじゃないとそういう支援はしてもらえないものなんだとも思った。
佐世保も同じでそんなに豊かな場所じゃない。

ハウステンボスが無くなると、そこで働いている人々約千人、取引している業者約二千人、そしてその家族の方々が露頭に迷う事になる。
それを思うと無碍に断れないし、引き受けたら相当の責任がある。
悩みに悩んで引き受けたそうだ。

何せ創業以来ずっと赤字だ。経営者が変わってもずっと赤字だった。
だから、ハウステンボスで働く方々に負け癖が付いていて、覇気も無かったそうだ。
まずはそこを変えなければいけない。
勝ち癖をまずつけてもらう、モチベーションを持ってもらう、それが始め。

①嘘でもいいから、元気な笑顔でお客様をお迎えしよう。
②朝礼の前に皆んなで掃除をしよう。
③黒字になったらボーナスを出す。

この三つを従業員に伝え、それを目標に社長自らハウステンボス内を回り、声をかけ働いたそうだ。
引き継いだ当時は汚かったそうで、少しずつ少しずつ掃除をしてキレイにした。今はすごくキレイだ。
何年もボーナスを出していなかったから、黒字になったらボーナスを出すことにした。

黒字にするために経費の面で意識させた事は、無駄を2割減らそう、自分の仕事を2割効率化しようだった。

わかりやすい目標を共有し、達成できそうな細かな行動目標を示す。
そこがポイントだそうだ。

それで見事に引き継いで最初の年に黒字に。
本当にすごい。
やっぱり起業は人なのだと思った。
立命館アジア太平洋大学の校長になった出口治明さんの話を伺った時も同じことを思った。

ハウステンボスは黒字になった。
この本は、経営ノウハウの本ではなく、実は起業したい方へ向けて書かれた本だった。

守りの姿勢のままの日本にも、若い柔らかい頭をした若者たちが失敗を恐れずに挑戦してほしい、というものだ。
澤田さんほどの挑戦はなかなか出来ないと思うけれど、失敗してもいいんだ、やってみたいと思うことには挑戦しようと思える内容だ。
プランを練って挑戦するな3年は続けてみよう。と。

そして、行動するには「運」も大切。
運の波に自分で乗るには、悪い運気の時にどうしたら上向きに出来るのかなども書かれている。
これは実践するにはセンスや直感が必要となるだろうなと思う内容。
出来る人と出来ない人がいそうだけれど、その通りと思う内容だった。

でも、私は金函玉鏡を知っているから、そっちの方が効果があるし、誰でも出来る。とハッキリ言える(笑)。

失敗を恐れずに挑戦することの大切さや、継続することの大切さ、これからの日本を良くしていくために努力出来ることなど、参考になる内容がたくさんある本だった。


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