おとなの発達とは足つぼマットを全速力で駆け抜けること -vulnerability and courage-
今期の Leadership and adult developmentの初回授業の話。
担当教授は Professor Ellie Drago-Seversonという方で、ハーバードで長年ロバート・キーガンの指導を受けていてadult development (成人発達)の領域の権威的存在。
(はじめ、Drago-seversonのどこからが名字かわからなかったのだけど、そのまま、ドラゴセバーソンが全部名字だった。)
キーガンについては過去にも書いているのでこちら↓
この授業では「リーダーシップの観点から、おとなの発達を促進させるには」というものを学ぶ。最高におもしろそうでしょ。
(※発達とはもちろん身長がのびるとかそういう生物学的なものではなく、内面のことね)
そして、昨日から今朝にかけて初回の授業があって、事前の課題のリーディングにも頻繁にでてきたのがこの Vulnerabilityという言葉。
vulnerability、日本語では「脆弱性」傷つけられやすいこと。
そして合言葉のように Be vulnerable とでてくる。
傷つきやすくなれ、ってどういうこっちゃ?と思っていたんだけど、
読み進めたり授業を受けているうちに段々と意図がわかった。
キーガンによると、
Process of human development, of seeing and overcoming one's previous limitations, can involve pain. (人々の発達の過程には、自分の限界を発見したりそれを克服するのに「痛み」を伴う)
とある。
自分が発達する、もしくは相手の発達を促す、次のステージに変容(transform)するということは、
ものすっごい痛みを伴う。
その痛みとは、「間違いをおかすこと」「あほらしくみられること」「誤った道を選択すること」などなど無限にリスキーなのだ。
やっぱり、誰もミスなんておかしたくない。あほらしくみられたくないし、正しい道を歩いていたい。
ある程度の経験や力をつけてくると、フィードバックや評価をもらってもなかなか素直に受け入れられない。
こんな未熟すぎる私だってそうだ、「ここ、こうした方がいいんじゃない?」って言われたときにたまにカッチーン!ときたりしちゃうし、
なーに、えらそーに!!!なんて聞く耳持たないなんてことだってある。(時と場合による)
人前で怒られるのだっていやだし、注意を受けるのもいやだし、ミスしたらへこむし、褒められて伸びたい、ビニールハウスでぬくぬくと高級とちおとめのような人生を歩みたい。
でも、そんなぬくぬくの環境ではいつまでたっても次の発達段階には進まない。true learning (真実の学び)は得られなくなってしまう。
だから人は、その「痛み」と日々向き合い、一歩ずつ乗り越えていくしかないんだと思う。
そして、その過程は act of courage (勇気ある行為)と言われる。
「勇気」なんてアンパンマンのマーチでくらいしか耳にしないけど、古典の理論家さん達が大まじめに「勇気が必要だ」って学術的な本に書いちゃってるからびっくりする。
Winston Churchillは courageをこう説明する
Courage is what it takes to stand up and speak. Courage is also what it takes to sit down and listen. (勇気とは、私達を立ち上がらせて声をあげること。勇気とはまた、私達を座らせてじっと耳を傾けること)
勇気はどっちかというとアンパンマンが正義の味方のように前者をさすイメージが大きいけど、じっと耳を傾けることもまた「勇気」が必要なことというのにちょっと感動した。
声をあげるにも、批判されたらどうしよう、反対されたらどうしよう、と痛みを伴う。
じっと耳を傾けるのも、ぐさぐさと自分の心をえぐられるようなことを言われたり、納得できないフィードバックをもらうことだってある。
どちらにせよ、「勇気」と「痛み」はセットなのだ。
この写真を見てもらいたい。
「La-VIE(ラヴィ) 足つぼマット 足裏いてーよ 土踏まず」のAmazonのサイトから引っ張ってきた。なんていうネーミングセンス。
このマットの上を全速力で駆け抜ける、と聞いたらどう思うか?
もうすでに想像しただけで眉間にしわが寄ってしまう。
足裏いてーよ。
サンプルの写真にあったこちらのイラスト。
もうこの人の顔といい手の角度といい絶妙すぎる。
足つぼマットの上を駆け抜けるのはものすっごい勇気がいる。
そして痛い、何より痛い。足裏いてーよ!!!
Professor Drago-Seversonの世界トップクラスの授業を受けながら、
大人の発達って足つぼマットみたいだな、なんて思ってるの私くらいだと思うんだけど、ね。
Be vulnerable 傷つきやすくあれ、というのは同時に Be courageous 勇気を持て というメッセージを持つ。
私にはまだ、全速力で足つぼマットを駆け抜ける勇気はないけれど、
きっと自分自身もそれをやり遂げなければいけない日が近い将来くるだろうし(personal development)、他のひとが駆け抜けるときにも一番近くで支えられるようなリーダーでありたい(supporting other's development)。
また今回も変なタイトルになってしまった。
参考文献
Kegan, R., Lahey, L., Miller, M., with contributors Fleming, A., & Helsing, D. (2016). Culture as strategy. In R. Kegan, L. Lahey, M. Miller et al., An everyone culture (pp. 1—10). Boston: Harvard Business Review Press.
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