大怪獣のあとしまつは断じて実写版デビルマンではない

 どうも、久保です。
「大怪獣のあとしまつ(以下「大怪獣」)」、観てきました。そもそもの発端は画像の通りなんですが、シンプルに悪評が目立ったのでじゃあそこまでやばいならいっちょ地獄旅行してみるかみたいなノリで、行ってきました。

 というかプロってなんだよ。プロって。実写版デビルマン(以下「デビルマン」)のプロなんていねえよ。
 さておき、最初から最後までしっかりメモしながら観てきたので、以下ちゃんとした僕と久保なりの感想や所感、思ったことをつらつら書いていこうと思います。
 できる限りネタバレは避けたいと思いますが、触れる可能性もあるのでこれから見に行く人はご注意ください。

前提

 僕は何かの作品を評価する時に別の作品を引き合いに出すこと(例えば自分の好きな漫画の紹介をするときに「○滅の100倍面白いよ!」的な)は嫌いですし避けたいのですが、オマージュやリスペクト(?)、引き合いに出されているデビルマン等の都合一部引き合いに出させていただきます。正直その2作品を避けて語ることはできないんです。僕は。お許しいただきたい。
 加えて、僕は他人の感想にケチをつけないことを信条にしている。だからこそ「こう言った感想をする人間はダメだ!」とは言わない。その代わり、その感想に対する感想は言わせていただく。別に撤回や更新を求める意味合いはゼロだ。そこも誤解しないでいただきたい。

早々な結論

 なんと言うか、観終わった第一声は「別にそこまで悪くはないな」でした。強いて言えば「記事にできるだけの撮れ高なくて逆に困ったな」くらい。
 そしてRTとかで回ってくる感想に対する感想(決してケチをつけているわけではない)として、「令和のデビルマンとか言ってる人、絶対ニコニコやYouTubeのレビュー動画見てはしゃいでるだけでデビルマン見てないだろうな」である。むしろ「令和のデビルマン」と言った人に、どこら辺がどうだったのかをお伺いしたいレベルで、純粋に興味がある。マジで教えてくれ。シンプルに興味ある。
 そもそも公開され円盤化して久しいデビルマンは、今回比較とされる大怪獣とは勝手が大きく異なっている。僕はなぜか(本当になぜか)デビルマンを何回も見ている。それは視聴しながらTwitterで実況したり、友人たちと酒を飲みながら時折ツッコミを入れて笑い合い、実況で悶絶しているフォロワーをニヤニヤしながら酒を嗜むという、いわゆる作品と消費者間の呼吸で成り立って昇華される現代アートみたいな思想も含まれている(芸術家の皆様には大変申し訳ないが、概念上これ以外の語彙が思いつきませんでした)。
 しかし大怪獣はその限りではない。劇場という場所の特性上、会話は厳禁だ。そうした前提もあってそもそも比較たり得ない。大学の卒論で出そうものなら教授から「実験の条件全然揃ってなくない?」みたいなものだ。
 そうした噛み合っていない前提込み込みで、以下のいろいろを読んでほしい。

デビルマンという鬼作

 僕は承認欲求の強いオタクだが、ここでデビルマンに対するマウントを取るのは最高にダサいので避ける。
 そもそもデビルマンは「そうはならんやろ」の連続であり(弁当の中になぜか毬栗のまま栗が入っていたり「細胞が細胞を呼ぶ」という謎の言い回しがあったり途中からカジュアルに拳銃の売買があったり)、中盤に明かされる敵の素性を主人公がマジで聞き逃すというドラマや物語として破綻している諸々を、視聴者がどうにかこじつけたりツッコンだりして答えを見つけ出すという趣があった。物語終盤のマジで訳わからん砂の塔を回想のショタ二人が自身を盾にして雨水を凌ごうとしている様を「いつかは壊れてしまうだろう二人の関係性を少しでも後倒しにしようとしているメタファー?」とか、こっちが色々考えて初めて作品として成立するなぜかこっちが試される作品だ。本当になんでこっちが試されてるんだよ。
 翻って、大怪獣はそれがない。ゼロではないけど、ある程度物語としての要件は満たしている。
 実際開始20分くらいは尋常じゃないワクワクに襲われたし、切り抜けばカッコよかったりいいシーンはちらほらあった。事実物語の中盤においても「これが失敗しちゃったら次はどうなるんだ」という、物語における次の展開をハラハラさせるエンタメとしての役割はきっちり果たしていた。
 しかし、デビルマンにはそれがない。ないというより、そのほかの粗がヤバすぎて気になり、物語に没入できないというバグみたいなバリアが張られているのだ。演技力も崩壊しており、没入以前の問題だ。
 大怪獣はしっかりとしたキャストを揃えており、それぞれの演技力もかなりあると思う。しかしデビルマンはそれすらなく、「一番演技がうまいのがボブサップ」と言われるレベルなのである。この時点で「そもそも物語の世界に踏み込めるかどうか」という分岐で、各々の作品が比較できない次元にあることは明白だろう。

じゃあ大怪獣の何が悪かったのか

 一言で言えば、多分脚本。
 いろんなレビューでも下品だとか言われているが、なんというかセンスがない。こんなことを言ってしまうと同様にセンスに乏しい僕が言えた立場じゃないが、うまく言おうとして滑っている感がすごい。
 加えて「今のそのギャグ意図なくない?」みたいな、何が面白いのかよくわからないギャグが差し込まれて視聴者としては白ける。面白いギャグならいいけど、とにかくつまらん。
 正しい例えかはわからないけど、自分以外同じ部活のメンツたちと飲んでいてその部活のやばいOBの話で盛り上がられているような、よくわからない居心地の悪さがある。あんたは面白いかもだけどこっちは全然面白くないけど? みたいな。下ネタも、うまく言ってやったぜ感がところどころに透けて見えるのがつまらない。唯一くらい面白い下ネタの比喩はあったけど、それはみなさんの目で確かめてほしい。
 キャストたちの演技はうまかったし、物語の大枠は十分面白いと言えないでもない。じゃあ何が悪いかと言えば、センスのなさだろう。
 一応好意的な解釈をすれば「シリアス続きで読者も気づかれしそうだから下ネタやギャグを織り交ぜて一回ガス抜きをさせてあげよう」とも考えられなくはないが、それが悉く裏目に出たような流れである。
 あと別に特撮ガチっているわけではない僕でもオチが中盤でわかるくらいに、最後が安直すぎたところだろうか。確かに特撮ガチっている人からしたら全力でぶん殴りたくなろうなとは、ぼんやりと察した。特撮にあまり興味のない人間からすると、ふざけんなハゲってくらい怒っていいと思う。思うだけだけど。
 いろんな特撮のオマージュやリスペクト(と言っていいのだろうか)は、随所に見られた。かの名作シンゴジラへのアンチテーゼ的な展開や作戦提案といい、相当に意識しているんだろうなというのは一般オタクでも汲み取れた。しかしこっちが欲しがっていた展開や流れになることなく、おふざけや下ネタでお茶を濁してしまったのがダメだと思う。とは言えちゃんとした行政の話や組織間の軋轢や政治戦なら別に監督庵野でよくない? となるあたり、言っちゃ悪いけど最初から負けの決まっていた戦いだったのかもしれない。
 強すぎた。庵野のシンゴジラがアホほど強すぎた。
 あとオチは特撮知っている人も知らない人も納得できないから、それはやめとけよって思ったよ。

見えてきたもの

 大怪獣に関する僕の感想は、大きく分けてこんな感じだ。もちろんこれは、僕が抱いた僕の勝手な感想。クラスタとかオタク全体のお気持ちではない。

・TLの悪評ほど悪くはなかった
・デビルマンにはなれない
・ラストの理不尽さはまあそうだよね
・バリキャリな土屋太鳳を奥さんにできるならそのくらいの苦行受けるわ
・ギャグがひたすら寒い
・下ネタが滑り倒している
・そのキスシーンなんだ??????????
・引き合いに出しているオタクはちゃんとデビルマンと向き合え

 ここにきて、大きい主語は避けたいけど一部の良くないオタクたち(あくまで一部のよくないオタクたちである。オタク全体の話ではない)の悪い部分が出たなーって思うようになった。正確には、再認識した。
 一部の誰かがその作品をボッコボコにした様を見て、便乗している有様だ。
 もちろんそれが各々の感想なら、僕は何も言わない。感想にケチをつけないのは、人生のスローガンだからだ。感想を改めろとか取り下げろなんて、ミリも思わない。
 ただそれは、本当にあなたの感想ですか? 自分のお金と時間を使って観に行きましたか? フォロワー数の多い映画クラスタの○○さんが言っていたから。とかではないですか? みんながボコボコにしているから自分もやっていいとか、思っていませんか?
 僕からしたらいじめっ子のそれである。普段「刑事で問えるぞ」と息巻いているいじめ行為のトレースを、「みんながやっているから」という理由であなたもやっていませんか?
 物語やエンタメの感想くらい、自分の心と言葉を使ってみませんか? 借り物の言葉ではなく、自分の唇から。
 なんとなく、そう思った。

余談

 物語本編ではなく、僕はスタッフロールが終わった後のいわゆる「最後に残った美味しいところ」に対して激怒した。
 もちろん詳細は省くけども、自分のやったことに対して自分で茶化してなかったことにしているような、曲がりなりともモノを作っている人間にとっては絶対に許したくないことを披露された。自分で出しておきながら「駄作です^^;」みたいな、それに近いノリである。
 自分が信じて作ったなら、最後の最後まで信じてやれよ。世界中がダメだと言っても、親のあんただけは信じてやれよ。ぶっちゃけ微妙な映画だけど、「自分はこれがやりたかった」って胸張れよ。ふざけんなよマジで。
 こんなくらいには、憤っていた。
 まあ実際どんなものかは、借り物の言葉ではなくみなさんが劇場で確かめてほしい。
 そしてあわよくば、僕と感想戦をしよう。対戦待ってます。

では。

サポートしてくださったあかつきには、僕のご飯が少しグレードアップします。あと画材や絵の本に使いたいです