「少女レイ / みきとP 」を解釈する

はじめに

夏の高揚感を思い起こさせる音楽。歪んだ感情が見える歌詞。
これらに惹かれました。背景のイラストが百合っぽいのでそこも好き。

大変お気に入りな曲になったので自分なりに解釈してみようと思います。

みきとP さんのTwitterより、元になったドラマがあるようですがそれは考えないことにします。この曲だけで完結させたい。


歌詞から考える(1番)

まずは歌詞から何が起きたのか考えます。前提として主要登場人物はイラストに描かれている二人とします。

本能が狂い始める 追い詰められたハツカネズミ
今、絶望の淵に立って 踏切へと飛び出した

そう 君は友達 僕の手を掴めよ
そう 君は独りさ 居場所なんて無いだろ

二人きりこの儘 愛し合えるさ―。

繰り返す
フラッシュバック・蝉の声・二度とは帰らぬ君
永遠に千切れてく お揃いのキーホルダー
夏が消し去った 白い肌の少女に
哀しい程 とり憑かれて仕舞いたい

初めに分かるのは、誰かが絶望の末に投身自殺をした or しようとしたということ。「二度とは帰らぬ君」から、片方の子が自殺してしまったことが窺えます。
それをもう片方の子は止めようとしたのでしょうか。「僕の手を掴めよ」「二人きりこの儘 愛し合えるさ―。」とはつまり、「絶望から逃げる先は死ではなく自分ではダメなのか」ということでしょうか。
あるいは、身を投げようとした子がもう一方の子と共に死にたいと思っていたのかもしれません。何にも邪魔されない場所で二人愛し合いたいということでしょうか。
フラッシュバックは言い換えればトラウマです。誰のどんなトラウマかは明らかですね。親しい人の自殺を見た子の、そのとき光景を指しているのでしょう。同時に蝉の声が挙げられていることから、自殺は蝉の鳴くような夏の日に起きたと考えられます。

歌詞から考える(2番)

本性が暴れ始める 九月のスタート 告げるチャイム
次の標的に置かれた花瓶 仕掛けたのは僕だった

そう 君が悪いんだよ 僕だけを見ててよ
そう 君の苦しみ 助けが欲しいだろ

溺れてく其の手に そっと口吻をした―。

薄笑いの獣たち その心晴れるまで
爪を突き立てる 不揃いのスカート
夏の静寂を切り裂くような悲鳴が
谺(こだま)する教室の窓には青空

ここから九月、自殺が起きた後の話のようです。(自殺が起こる前の九月とも考えられますが、それを明示する要素が見当たらないので一番近い自殺直後の九月を考えます。)
「花瓶を置かれる」「標的」という表現から連想されるのはいじめです。登場人物は二人以外示されていないので、恐らく残された子がいじめられ始めたのでしょう。しかしそれを「仕掛けたのは僕だった」というのです。「僕」とは誰を指すのでしょうか。
当然考えられるのは二人だけです。自殺してない方の子だった場合は、自らいじめが起こるように仕向けたということになります。自殺した方の子だった場合は、身を投げる前にいじめが起きるよう準備したということになります。
前者はよくわかりません。自分がいじめられるよう仕向けることのメリットは何かあるでしょうか。
一方で後者は「一緒にこちら側へ来て欲しい」という想いがあったと仮定すれば説明がつきます。自分と一緒に踏切へ身を投げてくれなかったので、いじめによってもう片方の子に自殺させようとした意図があったということです。
ここで1番Bメロの歌詞を振り返ります。

そう 君は友達 僕の手を掴めよ
そう 君は独りさ 居場所なんて無いだろ

二人きりこの儘 愛し合えるさ―。

1番の歌詞で考えたように、これが自殺した子の「一緒に死にたい」という想いを指していたとすれば先ほどの仮定と繋がります。
これだけでなく、2番Bメロの「そう 君が悪いんだよ 僕だけを見ててよ」以降についても自殺した子が道連れにしたいと思っているのだと考えられます。
「薄笑いの獣たち」はいじめている者共のことでしょう。「爪を突き立てる」「夏の静寂を切り裂くような悲鳴」はいじめられている子のものでしょう。そして「教室の窓には青空」は自殺した子の心象表現かもしれません。つまり、計画通りということでしょうか。

歌詞から考える(3番)

そう 君は友達 僕の手を掴めよ
そう 君が居なくちゃ 居場所なんて無いんだよ

透き通った世界で 愛し合えたら―。

繰り返す
フラッシュバック・蝉の声・二度とは帰らぬ君
永遠に千切れてく お揃いのキーホルダー
夏が消し去った 白い肌の少女に
哀しい程 とり憑かれて仕舞いたい

透明な君は 僕を指差してた―。

最後のサビ前、「透き通った世界で 愛し合えたら―。」までは自殺した子の想いでしょう。その後のサビは「二度とは帰らぬ君」から、もう一方の子の主観であることが窺えます。一番最後の「透明な君」とは、自殺した子の幻覚を見ていることを表しているのかもしれません。

解釈を補完していく

イラストを見てみます。

遮断器の閉じた踏切の中には二人の少女が立っています。そして、右側の子には影がありません。初めに片方の子だけが自殺してしまったということを示しているのでしょうか。
二人のすぐ横に飛んでいる2つのものはキーホルダーに見えます。

以下はハツカネズミについての引用です。

人家では家具の隙間などに巣を作る。河原や畑では、他の動物の掘った巣穴などを利用して生活する。

- Wikipedia より -
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%84%E3%82%AB%E3%83%8D%E3%82%BA%E3%83%9F#%E7%94%9F%E6%85%8B

ハツカネズミは自分で巣を作らないようです。これを人に例えるなら、自身の環境を自分で作っていけないという感じでしょうか。つまり、自殺した子は人間関係に悩んでいたということなのでしょうか。

「本性が暴れ始める」とは何を指しているのでしょうか。
私は「道連れにしたいという自殺した子の願望」かなと思っています。こんな自分勝手で率直な想いは理性の抜け落ちた「本性」とも言えるでしょう。

「置かれた花瓶」をいじめの暗喩としましたが、初めに自殺した少女が実際にどうやっていじめを仕向けたのかは分かりません。恐ろしいのは、この少女の何としても自分と一緒に死んでほしいという想いですね。自分が身を投げる時について来て欲しかったけれど、ついて来てくれなかったときの為に準備していたという執念が感じられます。

果たして残された少女は後追い自殺をしてしまったのでしょうか。
イラストではまるで先立った友人の霊を見ながら自殺を試みているように見えます。
私は後を追ってしまったと思っています。理由は曲の終わりのノイズが入った様に途切れる曲と電車のような音、少女の笑い声、歪んでいく警報音です。沈みゆく意識の中、愛する少女の笑い声と甲高く鳴る警報を聞いたと捉えられます。
一方で、「永遠に千切れてく お揃いのキーホルダー」という歌詞からは永遠の別れが連想されます。何をしようともう会うことは叶わないということですね。ですが、「千切れてく」という表現は「今にも千切れてしまいそう」、つまり「今自分も後を追わなかったら永遠の別れとなってしまうだろう」とも捉えられます。
霊が憑くのは生きているものだけですから、「とり憑かれてしまいたい」とはつまり、残された少女は生きたまま会いたかったということでしょうか。しかし踏切の中に「透明な君」を見てしまい、思わず中へ入ってしまったと考えられそうです。

解釈のまとめ

ある夏の日、深い絶望におそわれた一人の少女が踏切に身を投げ自殺した。彼女には親しい友人がおり、その子と共に死にたいと思っていたがその願いは叶わなかった。彼女の自殺する瞬間を見ていたその親友は、繰り返しその光景をフラッシュバックしてしまうようになる。
やがて彼女は学校でいじめられ始める。それを仕向けたのは自殺した少女であった。いじめによって親友に自殺してもらうことで、彼女は共に死にたいという願望を叶えようとしたのだった。
そして、残された少女は先立った少女の面影を見ながら、警報音の鳴る踏切の中に立つのだった。

おわりに

以下は上手くまとめきれなかったことです。

・2番と3番の間、踏切の警報音と電車の近づく音が突然消えた後に聞こえる「君は友達」というセリフの意味
→ 友達なんだからこちら側へ会いに来てくれるよね、ということ?

・「透明な君は 僕を指差してた―。」
→ 指差すとはどういうことか?連れていきたいと幽霊の少女が掴もうとした手を、自分を指差していると思ったということ?

正直これらは自分の中では良い感じに誤魔化せるので、今の解釈で満足しています。それと「少女レイ」ってどういう意味なんでしょうね。単純に「霊」ってことなんでしょうか。

僕は百合が好きですが、メリーバッドエンドも好きです。心中とか後追いとかしてしまう程お互いにのめり込んでしまうのを想像するとゾクゾクします。でもそういった重たい話は精神にダメージが入るので、自分から進んで見たりはしないんですけどね。
一方でそんな重苦しさを感じさせない少女レイは本当に好きな曲です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?