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No.7 私がNYアポロシアターで歌った時!

いまから約12年前、当時 歌手歴40年目の私がアポロシアターで歌い
62歳の誕生日を祝いました。
しかしどうすればこの歴史ある 偉大な劇場で歌うことが出来るか?
 方法はただひとつ
「アマチュアナイト」に出演すること。
しかし!
このアポロシアター・アマチュアナイトは直訳したからって「素人演芸会」ではありません。あのマイケルやエラを始め後々、名歌手になった黒人歌手の歌の登竜門です。
 かなり 高度なレベルのShowコンテストです。
 
ニューヨーク市ハーレム125丁目にある
ソウルの殿堂「アポロシアター・アマチュアナイト」に出場する!
 一年がかりで念願は叶いました!
 
そのためにはクリアしなければならない問題がいくつかありました。
レギュラーのライブや音楽活動をキャンセル。
家族に理解してもらう。
 死活問題でもありましたがもうあとにはひけません。
そして家族環境などを考えても 今しかない!
 よく考えてみると
親の介護も仕事もしながらの40代~50代に介護していた夫の親も含め
両方の親を看とり4人の孫にも恵まれ あとは何を優先するというのでしょう!
 夫が現役時代、代わりに家業も一人で長年やってきました。
つまり歌手活動もやりながら家業も同時進行していました。
そんな私に夫は了解をせざるを得ません。
劇団四季などミュージカルでの活動もその時点では「過去」。
私はいまこそ!と渡米しました。
 
きっかけは
四季時代の後輩のNさんの言葉「Apolloで歌うべきです」でした。
 毎週水曜日に開催され 毎月の入賞者は
「マンスリートップドッグ」→3ヵ月ごとの「3マンストップドッグ」
→年間の「トップドッグ of the イヤー」に出場し優勝を目指して闘います。
 
歌あり演奏ありコメディアン、ダンスありでなんでもいいわけです。
しかし歌は「R&B」などソウル系でないとダメです。
 またアポロシアターは日本語での歌は問題外!
 セックスに関係する用語もパフォーマンスもNG!
 
日本の有名芸人でそれでひんしゅくを買い降板の対象になった人(KTさん)もいます。
アポロシアターは青少年を犯罪から守る団体を応援しているからです。
 
オーディション
 このアマチュアナイトにはオーディションがあります。
オーディションについてはここでは省略します。
私の場合 米国在住でないため、レッスンを目的の短期滞在でした
縁あって日本人のオフィススタッフと会うことができました。
その人にレッスンの先生を手配してもらいました。
曲目は2009年のうちに「ワンナイトオンリー」と決まりましたが
日本での仕事も気になり、やむなくいったん帰国しました。
最終的に本番の日程もいろいろ変動。
直前になんと6月9日に決定!帰国予定の前日でした。
 
翌年2010年にはハーレムに再度赴きすぐテンポの変更をさせられ 
あわや曲目も変更させられるかも知れないところでした。
その後 得意の英語の発音や歌い方までもチェックが入り、気が狂いそうになりました。
 
もっとも抵抗を感じたのはR&Bは「普通の洋楽ポップの歌いかた
は絶対に使うな!」ということを オフイススタッフや先生にキツく言われました。

 
それを直すのはとても苦労しました。
また、歌唱に関しては関係者で全く素人のスタッフにまで「こうしたほうがいい」と言われ
内容はすべてこの時の私の歌にはそぐわないことだらけでした。
 
歌というのは条件を把握し 体によく溶け込ませ アクシデントも予測して計算しつくして歌ってはじめて「ステージ」なのです。
かつて私のステージはそうやって仕上げていました。
しかしこのオフィスの人に道理を話して争っている時間はありません。
自分の個々の中で処理しました。
実際  我慢の限界まで修正を強いられ 私の神経は爆発寸前でした!
アレンジャーと師匠たちとオフィスとの間に挟まれ
あるときは「私は誰の言うことを聞けばいいのか」悩み疲れました。
しかしそれぞれの立場から私を最高のステージにしてやろうという 思いがあることだけは理解できました。
 
直前3日前、私の腹は決まりました! 目標は9日!そこにフォーカスを合わせることにしました。
関係者スタッフに別の先生を紹介されました。
トドメのレッスンはこのひとで!というわけです。
特別ボイストレーナーのR先生はアリーシャキースやアッシャーを世に送り出した人ですが
彼のレッスンは費用も高く声が潰れるので(3回のレッスンを受けるよう言われたのですが)一回だけにとどめました。
しかし このかたのレッスンを受けられただけでもすごいことなんです。
 
喉を大事にしたい!体を疲れさせたくない。
年齢は関係ないとはいっても出来るだけ、最小限度の動きと心を穏やかにしていたい・・・
言われたことは
反芻(はんすう)し、最終的は自分がよりよい判断をするのだ!腹を決めました。
ステージに 上がれば私のもの 
でも出たとこ勝負では歌は歌えないんです。
ただ悪い状況になったときに「負けない自分」でいよう!
 
元劇団四季の共演者 岩本あゆみさんと とエンパイヤステートビルに出かけたのはちょうどそんな時でした。
これで幾分 楽になった気がします。
 
いよいよ当日を迎えました。
バンドは超一流!
グラミー賞でビヨンセのバックを演奏した人たち!

「アポロシアターアマチュアナイト」
夜7時からDJ→司会者が入り舞台中央で観客席のムードづくりをします。
 そして7時半ごろから観客の入場 
いろいろ前イベントが催され・・・・
私たち出場者は楽屋にて待機です。

本番が始まる前に支配人のM氏と審査員長が 私たちに向かって話をしました。
その中で もっとも大切なことは「Video撮影は絶対にダメ!」と「Booing」についてです。
<Booingは週によってちがうみたいです。>
 「観客席からのブーイングは自分の応援する出場者の対抗馬を減らすためだからね。 
気にせずしっかり歌ってね!」ということでした。
 観客席ではデジカメであろうと携帯であろうと静止画・動画の撮影行為を見つけるとセキュリティスタッフが飛んできます!
そしてすごい大声で怒鳴ります。
 「だめ~撮っちゃ!」スタッフはカメラを取り上げます。
♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬♬
ところでYoutubeでこの手の動画を見ることがたまにありますが、
それはアポロシアターの制作映像でなく(あくまで出場ではなく)
日本の制作事務所がコーディネイトした出演者を事務所自身が撮影したものらしいです。
日本人で有名無名に関わらずタレントや歌手は劇場を借り切ってコンサートをしたり最初からレコード会社や所属事務所とコーディネーター会社と仕事としての契約でいかにもアマチュアナイトで歌ったのでほぼ演出された映像もかなり出回っているようです。そこにはブーイングではなく拍手が浮き彫りにされています。

審査委員長はあと2人の審査員とともに「ノイズメーター」を手に 観客の拍手を計測します。
 こうして順番に一人ひとり終わり・・・歌いきった人は安心して戻ってきます。
誰かが強制退場を余儀なくされたみたいです・・・
 モニターテレビが壊れていたのか 音声だけだったのです。
 あ、戻ってきた・・・あら あの元気のいいコじゃないの・・
 つきっきりの友達が彼女をなぐさめています。
 本人は泣きながら控室に入ってきて・・
ほかの出場者たちの何人かはハグしていました。
 
15分のブレイクのあと・・・私の番となりました!
 
下手舞台袖にてスタンバイしているとき 何度も歌詞を復唱しました。
もうドキドキはしませんでした。
司会者が大声で呼びました!
「マスミ フロム ジャパン!」
 
舞台袖から登場するとライトが私を浮かび上がらせます。
 
出場者は必ず「希望の木カブ」をさっと撫でなくてはなりません。
さらにその場所では「観客に向かってニッコリ笑うな」
という指示も受けていたので(笑)無表情で木かぶを撫でてセンターにすすみ
マイクをとると イントロが・・・!
さあ!やるで!
 
そのとき
私の目線に入ったものは観客席中ほどで目立つオレンジ色をきた 大男の大きな
手旗信号のようなブーイングでした。
「ステージを去れ!」とう合図のように見えました。
 
一瞬ドキッとしまった!その瞬間 1小節 出遅れた 間違った!
でも同じコードなので大丈夫!
平気で歌い続けました。
 
この日のためにがんばってきたんやで
サイレンが鳴ってたまるか!
強制退場なんかするもんか!
 
私には声援とブーが同じだけ聞こえてしまっています。
 
あああ・・・・2分半!終わった!
 
「サンキュー アポーロ!」これも言わなくてはなりません。
そして無我夢中で舞台袖に引っ込みました(笑)
 
なんて余裕がないんだろワタシ!
 
そして
壁に顔をつけて泣きました!
「最後まで歌わせてもらった!ありがとう!アポロ!」
 
これで歌のタイトル通り「ワンナイトオンリー」かもしれないけど
いいのさあ!
61歳の日本のプロ歌手がガンガン アップテンポで歌ったのは きっと前代未聞でしょう!
それだけでも自分は自慢していいよ!と言い聞かせました。
 
あのエクスキューショナーも「good job !」と言ってくれました。
 
そして最後の男性シンガーが終わると全員が舞台に整列して 審査を受けます。
一人ずつ名前を呼ばれ1歩前に進みます。 観客は拍手をします。
私の前にすでに3人が大拍手! 拍手はそれぞれの一族郎党の人たちです。
 
あ、もうこれでベスト3には入れない・・
私の時の拍手は それでも20名の日本人の人たちだけではありませんでした。
 
この日のために来てくれたあゆみさんの拍手が2階からも聞こえました(笑)
 
いやいや ホントに拍手は結構聞こえたんです。
でもあの3人の方たちはその10倍は大きかったですね。
地元だもの・・
 
でもみんな上手かった。
 
こんな中で歌わせてもらってほんとに満足でした。
 

 アポロは誰でも出場できます。
しかし道は遠いですよ。
その意味は「出場者」にしかわかりません。
 
私が証明したように年齢は関係ありません。
実力とキャリアとエネルギーがあれば!!
歌のジャンルは「ひとつ」です。
誰にでも出来ることだけど ほんとのアマチュアでは書類にひっかかりもしません。
アメリカはボーカルの水準ははるかに高いです。
だから 日本の若いシンガー未満のコたちはニューヨークに滞在し
英語学校に通学しつつ 歌のレッスンにがんばっています!
 
     ★★★★★  
たくさんの芸能人たちがアポロで歌ったようですが 所属事務所から依頼されてのコーディネイトです。
あのひとも このひとも・・
 でも私は今もその時も丸抱えしてもらえるような費用なんてありません! 
ただ私を支えてくれる「ヒト」に恵まれました。
 
ボイストレーナーの先生、 
オフィスのスタッフ
アレンジャー
 
応援に駆けつけてくれた日本人ツアーのひとたち!
ハーレムで知り合ったひとたち!
みんなありがとう!
ありがとう!
 
ありがとう!!!!!!
 


アポロシアター観客席上階を最前列から撮影

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