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【MDスペシャルレポート】新市場を創るマツモトキヨシのPB戦略

ブランディングが真の差別化戦略である。昔のPBのようにメーカーのパッケージに似て値段は半値という「価格価値だけのPB」ではなく、マツキヨココカラでは「企業ブランドの価値」を大きく高めるPB開発を行っている。同社のPB戦略を紹介する。(文責・編集部 日野 克哉)

企業ブランドを育成するPB、オリジナル商品

▲[図表1]「Best Japan Brands 2023」でブランド価値上位の小売業

世界最大のブランディング専門会社「インターブランド社」が発表した「日本発のブランド価値の評価ランキング(Best Japan Brands 2023)」で「Matsumotokiyoshi(マツモトキヨシ)」がランクインした(図表1)。日本のドラッグストア(DgS)ではトップとなる。

同社では「PB」と「オリジナル商品」の両輪を回し、差別化戦略で重要となる商品開発を通じて「企業ブランド」の価値を飛躍的に高めている。

▲[図表2]マツキヨココカラ&カンパニーのプライベートブランド(PB)戦略

同社のPBは「matsukiyo」「matsukiyoLAB」「独立型ブランド」の3ブランド(図表2赤線左部分)。標準的なPBがmatsukiyo、専門性特化のPBがmatsukiyoLAB、牽引が新市場を創造するPBが独立型ブランドである。

一方、PBではないがメーカーとの限定開発商品を「オリジナル商品」と位置付けている(図表2赤線右部分)。ナショナルブランド(NB)を小売業のブランド名で販売するダブルチョップのいわゆる「専売品」である。

オリジナル商品のメリットはNBメーカーとの取り組みと差別化が両立できることだ。NBのパッケージの裏面にメーカー名を製造者として記載し、パッケージ表面にマツキヨとココカラファインのCI(コーポレートアイデンティティ)を掛け合わせた「マジココ(MAJI DE COCO DAKE)」のロゴを表記している(図表2右下の企業ロゴ参照)。

メーカーと協働して通常のNBとは商品内容を変えている。容量・パッケージデザイン・味などをオリジナル商品独自の設計にしている。味の素「アミノバイタル」、マンダム「ギャッツビー」などの有名NBに「マツキヨココカラ&カンパニーでしか買えない」という価値を付加し、他社との差別化を行っている。

PBとオリジナル商品の構成比は12.8%(2023年第3四半期)、2026年第3四半期までに15%を計画している。海外のPB構成比は日本よりも高い。

独立型ブランドでカテゴリーの需要創造

図表3は、マツキヨココカラ&カンパニーが考えるPBの役割をまとめたものである。(1)~(4)が差別化の領域にあたり、(5)~(7)がブランディングの領域である。小売業が同質化競争から真に脱却するには差別化とブランディングが重要である。

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