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マッチングアプリで出会い別れた元カレの思い出のはなし。

記事を書こう書こうと思っていたらいつの間にか1年半経っていた。



先ほどTwitterを見ていたところ、アプリでの出会い別れを描いた読み切り漫画が流れてきたので唐突に昔の思い出を思い出し、書いてみようと思う。



マッチングアプリがここまで爆発的にはやり始める数年前、私は若者に大人気だったあるアプリをやっていた。
当時私は20代前半、社会人1.2目くらいだと思ってほしい。

仕事にも慣れはじめたころだが、何かを始めたい気持ちでいっぱいだった。
若かった。
あと、「今なら何か停滞させても大丈夫」という謎の自身があった。
後々それはやはり間違いだったと今ならわかる。

 彼は同年代で、アプリにはビールジョッキ片手に白い歯を見せて笑う写真をトップに挙げていた。写真は日焼けしているものが多く、アクティブで男らしい人であることが分かった。

当時は自己紹介を長々書くような文化ではなくて、身長と体重のみ記載されていたのを覚えている。

正直まったくタイプではなかったが、身長が183cmと高いことと年が近いということだけでいいねを押した。

いくつかメッセージを交わして会うことになった。
待ち合わせは確か下北だったと思うが、人がかなり多くなかなか見つけられなかった。
駅から出てくる彼はジム帰りのような装いで、より体格の良さが分かった。

粗雑な感じはあったが顔も悪くなくてしっかり髪も整えていたし、香水の香りもあって印象は悪くなかった。

それから彼とは仕事帰り等、時間を合わせて会うようになった。
仕事の付き合いだという謎の展覧会に一緒に行ったり、インスタで話題のお店に行ったり。
年が近いのに毎回ごちそうしてくれ、私を楽しませようといろいろしてくれていたことを思い出す。

そして彼からの好意は、かなり分かりやすかった。
だけど家やホテルに呼ぶことは絶対にせず、とても大事にしてくれていた。
私もすぐに彼に惹かれ、気持ちがお互いに向かっていることがはっきりわかり始めたこの時が、一番楽しかったかもしれない。

それから夏が来て、夏季休暇に絶叫マシンが有名な遊園地へ出かけた。
誘ったのは私からで、最初は日帰りで行こうという話だった。
しかし彼が一泊で行こうと言い出し、ちゃんとしたホテルを予約してくれて一泊旅行をすることになった。

この時まだ付き合っていなかったが、隕石でも降らない限り付き合うだろうと思っていた。
朝早くから出かけて、たくさん食べて、体力が続く限り遊んだ。
この日の思い出は、別れたあと暫く引きずるくらいは輝いているものだった。
今はもう、断片的にしか思い出せない。

閉園時間ギリギリまで楽しんで、ホテルについたときはへとへとだった。
確か山の上にあるホテルだったのだが、途中コンビニへ行こうとなり
田舎のものすごく暗い山道を二人で下った。
正直めちゃくちゃ怖かった記憶があるのだが、彼は全然余裕な感じで
体格いい男性はこういう時頼りになるなと思った。

ホテルでは借りてきたDVDを見てそれぞれ温泉に入って夜を過ごした。
驚くことに彼はここでも手を出してこなかった。
もしかして私の勘違いでただの友達としてきたのかも、と急に不安になった。
映画が終わるタイミングで彼にもたれかかり、「疲れた」とかなんとか言った気がする。

とにかく、その日は私から誘った。
彼は迷いと驚きとうれしさが入り混じったような感じで応えてくれた。
「好きだから付き合いたい」とはっきり言葉にしてくれた。

彼は避妊具を持ってきていなくて、その日はセックスまではしなかった。
誠意なのか何なのか、「大事にしたい」という気持ちが強かったらしく
まだ恋人ではなかった私に関係を迫ることは絶対にしたくなかったのだという。

2日目、旅行先で有名な小さな博物館などをめぐり、ご当地グルメを食べて
帰路についた。帰りのバスの中ではずっと手を握ってくれていた。

その日初めて彼の家に行って、セックスをした。
「横顔が好き」とか、「肌が綺麗」とか、今まで言えずにいたということをたくさん言ってきた。

それからは普通の恋人同士となった。
お互いの誕生日を過ごし、クリスマスを過ごし、週末はビールフェスに行ったり、思い立って箱根に日帰りで行った。

3か月を過ぎた頃にはほぼ彼の部屋に入り浸るようになり、狭い6畳もないワンルームで一緒に過ごした。

彼は片付けが苦手なタイプで、狭い部屋で謎の筋トレマシンなんかを置くからほぼベッドの上で過ごしていた。

なので部屋にいる時間の半分くらいセックスをしていた。
彼や私が不機嫌になったり、けんかをして空気が悪くなってもセックスしてなんとなくうやむやにしてしまうことも多かった。

そうして2年間ほどを過ごした。
しかし、その年の夏をともに迎えることはなかった。
その年、コロナが来た。

私は実家に帰り、今となっては懐かしい言葉だが緊急事態宣言が明けるまで、彼と会うことはなかった。
これはほかのカップルも同じで、「会いたい」という彼女にぶち切れていた彼氏もいたという。

そして宣言が明けて、2か月振りくらいに彼と会った。
まえと変わらない狭くて乱雑にちらかったワンルーム。彼があれから一人で変わらず過ごしていることに少し安心した。

持ってきた手料理を一緒に食べ、コロナをきっかけに引っ越すことにしたという話をされた。
当時の部屋からさほど遠くない駅だったが、この離れていた期間に彼なりに何かを変えようとしていたこと、またそれを話してくれなかったことに少しさびしくなったのを覚えている。

その日のセックスはうまくいかなかった。
私たちはどんなにきまずくなっても会う日は必ずセックスをしていた。
もう一生分、セックスをしたのではないかと思うくらいにだ。

しかしその日は何度試してもだめだった。
彼の怖い表情や、雑な態度は暫くトラウマになりそうだった。
私は彼の気持ちがすでに離れてることが分かった。
廊下から聞こえるシャワーの音が、やけに大きく響いた。

帰るときはいつも駅まで送ってくれたが、それもなかった。
何かまだ挽回ができるはず、とすがりたい気持ちでいっぱいだったが、
それから別れまでは早かった。

次に彼の部屋へ行ったときは、もう引っ越しを済ませた後だった。
事前に電話で、「この部屋に決めた」ということは聞いていた。
まだやさしさが残る口調だったが、彼自身が自分が変わってしまったことに気づいていないようだった。

何もなくなったワンルームは思ったより広かったのだと、よく言われることを感じた。
部屋に置いていた、私の私物はほとんど処分されていた。
私は、楽しかった彼との思い出を終わらせる準備をしなければいけない、と覚悟をした。


その日が最後のセックスだった。
カーペットも何もない硬い床から冷たさと痛みを感じながら、
二人で過ごした日々を思い出した。
部屋はカーテンも取りはずされていて、街頭の光が中を照らした。
空になった部屋でセックスをしながら、いくつもの亡霊を見た。
今までの私たちだった。
この部屋と一緒に私も捨てられるのだと考えた。

私たちは最初の数回以外避妊をしなかった。
理由は私がピルを飲んでいたからだけど、その日も彼は最後私の中で果てた。 

それから、私たちは別れた。
別れ話は彼の新居の部屋だった。
別れの発端は彼の友人のSNSに、別の女性と親しげに映る彼を載せていたことから、まあ早い話が浮気が分かった。

彼の話によると、それは誤解だということだったが、私への気持ちが冷めてしまっていることは事実だということだった。
私はめそめそと泣いてしまってはいたが、彼の気持ちを尊重し、
あっさり引いた。彼も泣いていた。大人の男の涙を始めてみた。

最後のキスはタバコのFlavorがした。
私の影響で吸い始めてしまった彼。


最後に近くの定食屋で夕飯を食べ、これが最後の食事なのかと思うとまた泣きそうになった。

これが最後だとは思えないくらい、いつも通りの会話をした。
職場のダメな奴の話、以前住んでいた部屋の迷惑な住人。
だけど、間違いなくそれが最後だった。

彼の最寄駅で別れのあいさつをした。
また泣きそうになった私を彼はちょっとめんどくさそうに送り出した。

帰りの電車では周りに引かれるほど泣いていた。
彼との別れを、受け入れるのにどれだけの時間がかかるのかわからなかった。

それから、いくつかラインのラリーをして、返し忘れたものを返す旨の連絡が来た。
しかしもう二度と会うことはなかった。

その年、私は忘れるように仕事に邁進するようになり、何度も表彰されるほどの成績をたたき出した。
結局彼にはやはり相手がいたようで、偶然それを知ることになった。

あれから時を経て、時間が流れる速さに焦りを覚えながらも穏やかに過ごせることを幸せに感じている。

今思うと、彼にはモラハラ気味なところもあったり、私も世間知らずだったりとお互い足りないところはいっぱいあったと思う。
それをなんとなく性欲で補ってしまっていたところが若かったなと感じる。今私に特定の相手はいないが、恋愛には前向きでいる。

今やマッチングアプリは魑魅魍魎有象無象地帯と化しているので、なかなか普通の恋愛にたどりつけないこともあるのかなと考える。
アラサーになってしまっては、純粋に楽しむだけでは難しいだろう。

あと、アプリは互いの恋愛経験値などがバラバラでわかりづらいので、
相性の良し悪しを見極めにくいと感じている。


最後に、彼が今何をしているか、私に知るすべはない。
もう結婚しているのかな?と思う。

彼はたぶんそれなりに恋愛をしてきていると思うので、私は元カノの一人でしかなくわざわざ思い出すこともないだろうと思う。
それに私だって、こうしてひとつの記事にまとめられるくらいの思い出になったということだ。


今思うのは、彼は私に青春をくれた。
もう関係なくなった彼の幸せを心から願うし、彼なら人生を謳歌できると思う。

私もこれからアラサーのオンナとして、強くたくましく生きていかなければと改めて強く思う。


夏が来るたび少し切なくなっていたが、完全に思い出として消化されたので備忘録として。












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