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2020年2月2日の第10号通知 家庭内感染を防ぐための武漢市の決断

 2021年8月19日のニュースで、新型コロナ自宅療養者が、首都圏1都3県で6万人近くにという記事が報道されました。正直、ビックリしています。なぜなら、感染コントロールを強く行っている中国の対策では、自宅療養は絶対にあり得ないからです。中国では、軽症はもちろんのこと、無症状でも必ず専用病院に隔離入院させなければいけないからです。すくなくとも、2020年2月2日以降は。

 この方針を真っ先に決めたのが実は当時感染者が爆発的に増加して大変だった湖北省武漢市です。2020年2月2日に出された《武漢市新型肺炎防控指揮部通告》(第10号)がそれにあたります。家庭内感染から発生するクラスターが収まらず、迅速に感染ルートを断ち切ることが求められました。そして隔離観察をさらに厳密にするためにこの通知が出されました。

《中華人民共和国伝染病防治法》・《突発公共衛生事件応急条例》・《武漢市新型冠状病毒感染的肺炎疫情防控暫行弁法》がその通告の根拠となります。

 では、その内容は見てみましょう。

 当時、武漢では「4類人員」の集中入院と隔離が重要であり、その目的は感染源をコントロールし、感染ルートを断ち切り、拡散を防ぐことにありました。

 つまり、①確定例を施設に集中収容、②疑似例の集中隔離、③発熱患者の集中観察、④濃厚接触者の集中観察、になります。確定例ですので、軽症〜危重まですべてを含みます。感染した患者はすべて収容させるという方針はまさにこの第10号通知からはじまったといえるでしょう。

 この通知を受けて、2020年2月2日12時までに、武漢市各区では上記「4類人員(確定例・疑似例・発熱者・濃厚接触者)」の施設へ集中収容と隔離がはじまりました。新規感染者もその日のうちに収容と隔離場所を決めなければいけません。また、交叉感染をさけるために、収容施設と隔離場所は離す必要があります。もちろん、集中収容施設や隔離場所に配置する医療関係者(医師や看護師)と後方スタッフの配置も行われました。

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(こうした展示会場も軽症者を収容する臨時病院として使われました。)

 では、当時の武漢市の指揮部の要求を見てみます。

 当時、この通知は多くの中国メディアでも紹介されましたが、日本のメディアでは殆ど紹介されていなかったと思います。ただ、この方針転換で、武漢市の感染コントロールが大きく前進したことには間違いありません。

(1)確定例は必ず集中的に施設収容に。ここでいう施設とは、いわゆる体育館などを活用した臨時病院のことです。重症例は必ず病院に入院し、軽症で入院治療が難しい場合は、その他の指定病院やホテルに臨時治療区として、集中的に収容する。

(2)疑似例に関しては、集中隔離にする。重症患者は必ず病院に入院し、軽症患者で入院隔離ができない場合は、ホテルを改造した臨時隔離区で集中隔離。家庭内クラスタを防ぐために、家庭内隔離は禁止にする。 PCR検査で陰性でかつ抗体陰性でも、臨床症状が新型コロナ感染の肺炎条件に当てはまるものは、疑似例として隔離管理する。

(3)発熱患者で新型コロナ患者と確定できない場合も、集中隔離観察とする。ただし、疑似例とわけて隔離し交叉感染を防ぐ。

(4)確定例の濃厚接触者は、必ず集中隔離観察とする。ウイルスのキャリアである場合、発病しなくても感染力があり、無症状常態であっても感染力があるので、確定例の濃厚接触者は、発熱患者と同様に集中隔離観察とする。(2020年2月頃当時は、まだ無症状感染者という概念が一般に浸透していませんでした。)

 この通知が発表された時から、これまですでに定点隔離されていた人、及び自宅隔離していた人たちや、武漢市内の発熱外来で肺炎と診断された発熱患者、さらに新型コロナ確定例患者との濃厚接触者は、各区が派遣する車両で、それぞれの区の集中隔離観察点に移動し、医学観察や治療や予防的な措置を受けることになりました。具体的な隔離観察期間は、検査後に決定するときめられ、まずは集中隔離優先です。もし協力しない市民は、公安機関によって法的に強制的に執行されるとも通知されました。もちろん、隔離期間中は、宿泊費や食費、医学監察及び治療は無料になります。

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 実際、私も武漢に行って武漢市民に話を聞きましたが、なかなか隔離環境での食事内容は充実していたようですよ。中国の人たちにとって、どういう食事がでるかというのは、自分たちがどういう扱いをされているかを如実に表すものでもあり、非常に重要な問題ですからね。

 最後に、こうした中国のやり方を日本がマネする必要は全く無いです。日本は日本のやり方で感染コントロールすれば良いのですから。どんな方法にせよ、最終的には感染者を少しでも少なく、重症者や死者を少しでも少なく、感染した人はしっかりと治療を受けられ、一般市民が安心して普通の日常生活をおくれること。これが何よりも重要なことなのですから。

以上です。

 

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