収穫と実りの秋
いも くり かぼちゃ くるみ
旬の果実はほろほろして
ほくほくで
口いっぱいにほっこりとした甘さを広げる
収穫の季節
お店のドアがカラカラと鳴ると
珈琲をひいた香りに息をついて
女の人の
大きすぎず高すぎない
耳に聞き取りやすい落ち着いた声がわたしを出迎えている
案内された窓際奥の席に腰掛け、
他愛もない雑談とティーカップと陶器がぶつかる音を聴きながら、1人ポケットから取り出した手のひらサイズのスマホを開く。
流行りのスマホよりひと回り小さく、
持っていても重量を感じさせず、上まで親指が届くモノ。
手帳型でもなく、後ろのリングもなく、ただただ100均で買った透明のカバーのついたスマホの画面のなかで、わたしのお気に入りのメモアプリを開いた。
装飾もなく、わたしの手の中いっぱいに収まる白の空白が、
わたしだけの自由な世界のように開かれていて、カーソルがちかちかと次の言葉を待っている。
『収穫と実りの秋』
カーソルにつられて親指が打ち込んだその言葉に、珈琲を一口啜って、次に続く言葉を探して空想にふける。
寒い冬を乗り越え、ゆるやかな春を過ぎ、熱く燃える夏を駆け抜けた先に見える休憩ポイント のような
今までの歩みを熟成させてゆっくりと味わい、再度咀嚼して、わたしの血肉として取り込んでいくような
ほろほろとほくほくと口いっぱいにほっこりと
苦み、渋み、甘みを味わっていく季節
「自分」の人間味の熟成を感じながら
また次の寒く長い始まりの季節と
短距離走のように汗だくで駆け抜ける季節に向けて
ひとまずの休憩ポイント
今のわたしに「おつかれさま」
と打った.
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胡桃堂喫茶店に行きました。文化的で素敵なカフェだったので、せっかくなのでなにか書こう!となって打った文章です🐟 実りと収穫、味わう、という言葉が好きだなぁ
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