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コミュニケーション能力とは?

 時折、イラストレーターになるにはどうすればいいんですか?と聞かれることがあります。就職を考える際に、ダイレクトに「イラストレーター」を募集している企業はほとんど無いからだと思います。

 美術系の大学や専門学校から就職する場合、平面の場合は広告やパッケージなどのグラフィックデザインを扱う会社、立体の場合は製造業の造形デザインやインテリア、建築関係の会社が多いようです。そうした企業が募集しているのは、制作や編集、販促営業の部署(なぜかカタカナの舌を噛みそうな名前の部署が多いです)の社員であり、イラストレーターを必要としているわけではありません。

 就職情報誌やキャリアサイトには、(イラストレーターになるには)絵を描くことが好きとか、画力・デッサン力があるといいと書いてあります。確かにある程度の絵心があれば良いのかもしれませんが、実際は「仕事」をするためのコミュニケーション能力の方が重要だと思います。

 対価を頂くわけですから、お客様(もしくは雇用主)が満足する品質の絵を、納期までに仕上げる必要があります。自分で納得できるかどうかではなく、お客様が求める表現は何か、納期を鑑みた進行管理をどうするのか。場合によっては協力者が必要であったり、相手との交渉も必要です。そんな時に、同じ部署にいる同僚や関係者の仕事ぶりを見て、対応を学ぶことができるのは、企業就職ならではのメリットだと思います。また、バックオフィスの仕組みを知ることは、フリーランスになった後に非常に役に立ちました。

 イラストレーターを名乗るようになって35年を超えました。この間ずっと絵を描き続けていたかというとそうではありません。修行時代には、言われた作業をこなすために黙々と描いていましたが、今は打合せの日程調整とか、内容の問い合せとか、事務作業とか、仕事が増えるにしたがってコミュニケーションにかかる時間が増えています。
 なかなか上手くいかない場合もありますが、できるだけ早い段階でお客様のイメージを掴み、お客様が求めていることを提案できれば、その後はスケジュールどおりに、じっくり(ささっと)制作に取り組むことができると感じます。

 仕事上でコミュニケーション能力を高めるということは、どなたとも上手く付き合うということではなく、最低限かつ必要十分な情報交換を行い、正しいアウトプットに繋げることだと思います。

 正直なところ、こうすれば必ずイラストレーターになれる、という道はないと感じます。イラストの仕事をしている複数の知人も、てんでバラバラ全く違うキャリアを歩んできて、たまたま、縁があってイラストレーターをしている方ばかりです。
 どんな業種であっても、協働するにはコミュニケーション能力が必要ですので、企業へ就職出来る機会があるなら、それは大きなチャンスだと思います。業種が違っていても学ぶことが多々あるので、就職できる年代のうちに、一度は会社員を経験されることをお勧めします。
イラストレーターを志す方に幸あることを願っています。

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