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I’ve Got A Feeling

Got Backツアー初日、ポールはスクリーンのジョンとのデュエットという感動的なステージをみせた。

ルーフトップ以来、実に54年ぶりの公の場での二人のデュエット。ステージにジョンの映像とボーカルが映し出されると、会場は大きな歓声にどよめいた。
かつて顔をつけ合わせていた頃のようにジョンに正面から向き合って呼吸を測り、いまの最大限のシャウトでジョンのボーカルに応え、あの寒空の日のままに掛け合い、誰もが期待すらしなくなっていた夢を実現したポールは、スクリーンのジョンに拳を掲げた。

29才のジョンと79才のポール、スクリーンの中のジョンとステージの上のポール、「共演」というには寂しすぎるけど、それが今できるすべてだ。
ポールは「ピータージャクソンが『ジョンの声だけ抜き出して、君とライブで共演できるよ』ってテキスト送ってきたからさ」と簡単に添えた。


I’ve Got A Feelingはポールにとってどんな意味をもつ曲だろう?
映画Get Backをみて思うのは、この曲こそがジョンとポールがあのセッションで体現したかったことじゃないかということだ。

I’ve Got A Feelingは1968年12月に、ジョンがポール宅に持ち込んで完成させたとされている。1969年1月2日に開始されたトゥイッケナムセッションでもメンバーが揃うなり取り上げられている曲だが、ジョージとリンゴが初見の様子なのに対し、ジョンとポールは曲の構成、コーラス箇所も共有しており、事前に二人で練り込んだ曲であることがわかる。

ジョンパートとポールパートが別々に作られ組み合わせられた「ショットガンウェディング 」のような構成は、A Day In The LifeやBaby You Are A Rich Manでも経験しているものの、二人のメロディが絡み合さって進行するアレンジは初めてだ。

かつて「デートを重ねていた頃」ような共作で、オーバーダブのないアレンジで、純粋なロックンロールという、当時ジョンとポールがやりたかったことがそのまま反映されており、その思想がそのままゲットバックセッションに持ち込まれている。言い換えれば、セッション前にI’ve Got A Feelingを共作できたからこそ、セッションのビジョンが(ジョンとポールの間では)明確になったのかもしれない。

残念ながら、ジョンの作曲力、ジョージの脱退、ポールの焦りなど様々な理由でゲットバックセッションは二人の思惑のようには進まなかった。

けれど、The LyricsのI’ve Got A Feelingの段で、ポールはジョンとの共作について滔々と語り、お気に入りの二人が作曲している写真を掲載している。ポールにとってI’ve Got A Feelingは二人の最後の共作として思い入れのある一曲なのかも、ね。


「ジョンとの共作がどんな感じかって聞かれたら、今よりずっと楽だったって答えるよ。二つの頭脳が揃ってたから。僕の方向性と彼の方向性、それらが相互交錯する場所は奇跡的だった。だから今でも僕らの曲はみんなに聴いてもらえるんだと思う。僕らはお互いが成長し、新しいことを試し、学べる環境で作曲をしてたんだ。」

Paul McCartney The Lyrics


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