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コロナ禍における生活の変化と健康状態への影響

地域医療ジャーナル 2021年1月号 vol.7(1)
記者:syuichiao
薬剤師

 厚生労働省が公開しているインフルエンザの発生状況【1】を見ると、今シーズン11月末までの定点当たりのインフルエンザ報告数は激減していることが分かります【図1】。前年と比べるまでもなく、まるでインフルエンザ感染症が消滅してしまったかのようです。コロナ禍において、感染予防に対する国民の関心が高まり、インフルエンザの流行が抑えられているのかもしれません。

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【図1】インフルエンザ定点当たり報告数推移(参考文献【2】より作成)

 新型コロナウイルスは、ご高齢の方や持病を患っている方で重症化するリスクが高いと考えられています。喘息のような呼吸器の疾患を治療中の人では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、病状の悪化による入院や緊急受診が増加するのではないかという懸念もありました。しかしながら、国内で新型コロナウイルスの感染が報告され始めた2月から、緊急事態宣言が発出された4月以降にかけて、喘息による入院件数は減少していたことが報告されています【3】。

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 【図2】喘息による入院件数の推移(参考文献【3】より作成) 

 この報告は、日本の医療機関272施設の入院データを解析したもので、2019年12月30日~20年5月31日と、2017~19年の同時期における喘息の入院件数が比較されました。その結果、1週間当たりの喘息による平均入院件数は、2017~19年に比べて、2020年で55%、統計的にも有意に減少していることが示されたのです【図2】。また、年齢別に解析したところ、小児では63%、成人では44%、いずれにおいても減少していました。

 喘息による入院件数が減少した原因として、喘息の治療薬をきちんと服用するようになった、あるいは外出頻度が減ることで、喘息の発作リスクが低下したなどを挙げることができるでしょう。コロナ禍による人々の生活変容は健康状態にも小さくない影響を及ぼしていることが示唆されます。今回はコロナ過における生活の変化が健康状態や社会認識にどのような影響をもたらしうるのかについて、論文情報を紐解きながら考察したいと思います

【参考文献】
【1】インフルエンザに関する報道発表資料 2020/2021シーズン
【2】厚生労働省 インフルエンザの発生状況について
【3】J Allergy Clin Immunol Pract. 2020 Oct 14;S2213-2198(20)31110-7. PMID: 33065368


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