見出し画像

[深読み] 返信: ねこでも読める医学論文 第31話「慢性腰痛患者に対するオープンラベルプラセボの効果」

地域医療ジャーナル 2021年5月号 vol.7(5)
記者:ph_minimal
薬剤師

 地域医療編集室では、地域医療ジャーナルの輪読会「深読み会」をはじめました。メンバーがトピック記事をセレクトして、意見交換と記者への質問を行っています。

 今回は2021年4月号の記事 ねこでも読める医学論文 第31話「慢性腰痛患者に対するオープンラベルプラセボの効果」 をセレクトいたしました。

 意見に対する返信を記者からいただきましたので、[深読み] 記事として公開したいと思います。

 感想にまでご丁寧に回答いただきまして、ありがとうございます。
(編集長)


質問・意見と回答
 

質問・意見
私も仕事上で、時々乳糖をプラセボとして使わざるを得ない症例(不眠、不安など)を経験します。不思議と著効することが多く、倫理的問題は目をつぶっている状況です。また、患者から減薬の同意を得られないポリファーマシーへの介入手段として、オープンラベルプラセボは次の一手として意味がありそうだなと感じています。
みに丸さんは、これまでプラセボ効果について何度か寄稿されていますが、実臨床でプラセボを治療として使用することをどのようにお考えでしょうか?また、正々堂々と(例えば保険適応で)プラセボを使用するには、どんな研究、制度設計が必要でしょうか?

回答

 実臨床でもプラセボ(オープンではないブラインドプラセボ)が著効することが多いんですね。情報ありがとうございます。院外の保険薬局ですと、プラセボ目的で乳糖を調剤したりすることもなく、プラセボを扱うことがないので、実際のところどうなのかなと思っておりました。

 プラセボ効果に関する論文を取り上げている理由は、プラセボの実用化を視野にいれて…というよりは、患者さんに期待を持たせることでどれくらいのプラセボ効果を上乗せできるのかが気になったという側面もあります。「この薬ってそんなに効かないだろうなぁ」という薬でも、とてもよく効くとおっしゃる患者さんもいて、「プラセボ効果がイイ感じに上乗せされているのかな…」と興味をもちました。

「自覚症状を軽減するような薬」に関しては、薬そのもののパワー以上の効果を患者さんに与えるため、期待を高めるような丁寧な説明が重要なのかなと思う一方で、過度に期待をもたせることでポリファーマシーにつながるのかな?というジレンマもあります…。例えば医師が漫然と長期投与されているビタミン剤の中止を患者さんに提案しても「この薬がないと調子が悪くなる!」と患者さんが継続を希望されたりすることがあります。こういった薬への過度な期待がポリファーマシーに繋がることもあるので、悩ましいと感じています。オープンラベルプラセボが減薬のための有用な一手となる可能性もありますが、ビタミン剤のように何らかの特定の成分が入っている薬を熱望する患者さんに、有効成分が入ってないオープンラベルプラセボを代替薬として提案しても受け入れられないんじゃないかという気もしました。悩ましいところです。

 すみません、ちょっと脱線しました。

 

ここから先は

5,778字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

いただいたサポートは記事充実のために活用させていただきます。