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「車椅子ごとマスク」という発想の転換 ~「パンデミックだから仕方がない」の先へ~

地域医療ジャーナル 2021年5月号 vol.7(5)
記者:spitzibara
医療にウルサイ「重い障害のある子どもを持つ母親」

 病院や施設などにおける「面会禁止」について、2月号からシリーズで4本の記事を書いてきました。今回は、この問題を身近な人たちと話し合う中でspitzibaraの頭に浮かんできたアイデアについて書いてみました。いわば4回シリーズから飛びだした、スピンオフのような記事になります。

 きっかけは、第3波が落ち着いてきた頃、娘が暮らしている療育園のある職員との、廊下での立ち話でした。

 療育園は、多様な医療と福祉の機能を併せもつ県立障害者リハビリテーションセンターの中の施設です。先月号に書いたように、新型コロナウイルス感染の第1波が落ち着いた後、外来系の部門は感染対策のための制限つきで、ほぼ平常の状態に戻ったのですが、入院部門と入所施設だけは部外者の立ち入り禁止が続いていました。その後、第3波が収まるにつれ、入院部門では家族に限って1日15分の対面面会が認められました。ただし、娘のいる療育園では、変わらず週に1度アクリル板越し15分のままです。その理由は「療育園の入所者はマスクをできないから」。

 それを受けて、現場のスタッフは、身体的にも知的にも重い障害がある入所者たちに、なんとかマスクをつけさせられないものか、いろんな試行錯誤をしていました。でも、そんなうっとうしいものは嫌がって、みんなすぐにとってしまいます。手や腕が不自由な人たちだって、イヤなものはそれぞれの工夫と独自のワザを繰り出して、みごとに外してしまいます。本人たちにマスクをつけさせようとの試行錯誤は、うまくいっていないようでした。



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