昆虫食に興味を持ちはじめた貴方へ:『昆虫食スタディーズ』(水野壮 著)
地域医療ジャーナル 2022年5月号 vol.8(5)
記者:shinnoyuki
管理栄養士 / 修士(人間生活科学)
今回から「食」に関する「本」を紹介する連載を始めたいと思います。書評やブックリポート,読書感想文に該当するでしょうか。今回がその初回に該当します。最初ですので,連載の基本方針を下記に示したいと思います。
広義の「食」を含む本を紹介する:広い意味での「食」を含む本を紹介します。漫画や小説も紹介できればと思います。ただし,「栄養学」に直接関連する本は紹介しません(理由は後述)。
ネガティブな内容は書かない:本格的な?「書評」では時に否定的な内容になることがあります。それを必要以上に否定的に受け止める人がいます。その書籍の筆者だけでなく,読者や関係者も含まれます。無益な争いを生むことは私の望むところではないので,(私が思う)ネガティブな内容は書かないこととします。私は管理栄養士の資格をもっていますが,一般に販売されている栄養学について書かれた本を読むと,多くの場合は批判したくなります。それゆえ,栄養学に関する本は紹介しないという方針とします。
容易に入手できる書籍を選ぶ:記事を読まれたら,紹介した書籍を手に取ってもらいので,絶版本は紹介しません。手に入る場合は古い本も紹介しますが,なるべく新しい本にできればと思います。
さて,では以下から本編のスタートです!
昆虫食が注目されています。世界的な食糧不足が叫ばれている中,従来の家畜よりも環境負荷が小さいたんぱく質源として,昆虫食がクローズアップされています。無印良品が「コオロギせんべい」を発売したことはニュースになりました。昆虫食のスタートアップ企業も目立ちます。
とはいえ,昆虫食が身近という方は,それほど多くないと思います。日本で昔から食べられている昆虫としてはイナゴや蜂の子が有名ですが,それらを日常的に食べている方は少数でしょうし,牛肉や豚肉にかわるたんぱく質源として摂取しているという方はほとんどいないことでしょう。
その一方で,最近の昆虫食ブームの中で,なんとなく昆虫食に興味があるという方は一定数いらっしゃるのではないかと思います。自分が食べる・食べないにかかわらず,トピックスの一つとして,基本的な事項は抑えておきたい。特に,食と健康に関心がある方には,このように考える方が多いのではと思います。
そのような方には,『昆虫食スタディーズ』(水野壮,化学同人)をオススメします。本書は「NPO法人食用昆虫科学研究会」水野壮さんによって書かれた,昆虫食についての解説書です。全7章の中で,昆虫食が注目される理由や安全性,はたまた昆虫の福祉といったテーマまで幅広く網羅されています。一般読者を想定している書かれているためか,難解な専門用語も使われていません。基本的な知識を抑えておきたい方にはピッタリだと思います。その一方で,「いますぐ昆虫を食べたい!!」といった方には,やや不向きかもしれません。
以下では,本書の内容を章ごとに概観・要約していきます。これを読んだ読者が,上記書籍を実際に手にする動機になれば幸いです。
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