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ねこでも読める医学論文 第33話「慢性腰痛患者に対するオープンラベルプラセボの効果 Part2」

地域医療ジャーナル 2021年6月号 vol.7(6)
記者:ph_minimal
薬剤師

はじめに

 今回のテーマ論文は、地域医療ジャーナルの「深読み会」第2回(テーマ:ねこ読め「第31話」)で話題に挙がった論文なので、まず、第31話「慢性腰痛患者に対するオープンラベルプラセボの効果」(https://cmj.publishers.fm/article/23632/)と、これをテーマとした深読み会でいただいたコメントに対する返答(https://cmj.publishers.fm/article/24023/)をお読みください!

 

ねこでも読める医学論文 第33話「慢性腰痛患者に対するオープンラベルプラセボの効果 Part2」

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はかせ「オーナーからメモを受け取ったんだが…」

みに丸「へぇ~。どんな?」

はかせ「これだ」

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はかせ「オープンラベルプラセボの論文をきみと一緒に読んだのは覚えているけど、オーナーは同席していなかったような…」

みに丸「うん。いなかった。てか、オーナーと一緒に論文を読んだことないし」

はかせ「なんで、我々が読んだ論文のことを知っているんだろう。あいかわらず、得体のしれないオトコだよ」

みに丸「ほんとほんと。まあ、それはさておき、その論文の内容って、たしか有効成分が入ってないことを患者に知らせたにもかかわらず、プラセボってすげぇんだぜって説明したら腰痛が軽減したっていうやつですよね」

はかせ「そうそう。すごい発想の研究だと思ったけど、どうやら日本でも似たような研究が実施されたようだね。ご丁寧に論文のIDまで教えてくれたぞ[1]」

みに丸「へぇ~。じゃあ読んでみましょうか。読者からのコメントっていうのがいったいなんのことなのかサッパリわかりませんが」

はかせ「サッパリわからんね」

みに丸「まあ、日本でも同様の試験が実施されたのだとしたら、結果が気になりますね。さっそく読んでみましょうか」

 

※彼らは論文抄読会の内容が、地域医療ジャーナルに掲載されていることを知らないのである。

 

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[1]Open-label placebo vs double-blind placebo for irritable bowel syndrome: a randomized clinical trial. Pain. 2021 Feb 12.  PMID: 33605656.

 

対象論文はこちらからダウンロードできます。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7781721/pdf/PRM2020-6636979.pdf

ぜひとも論文と照らし合わせながら、ねこ薬剤師たちの論文抄読会にご参加ください。

 

~研究の背景~

はかせ「1ページ下部の『1.Introduction』に研究の背景がある。『慢性腰痛は3か月以上続く、または繰り返す痛みであり、痛みを完全にゼロにすることは達成できないかもしれないことを認識した上で最適な痛みのコントロールを目指すもののとされている』」

みに丸「しれっとすごいこと言いますね。痛みゼロは無理かもと…」

はかせ「そう書いてある。腰痛って大変だね。で、ここからプラセボの話だ。『プラセボは,一般的に新薬の臨床試験で使用されているが、実際に患者にプラセボということを知らせずに治療薬としてつかうことは倫理的に問題がある』」

みに丸「むずかしい問題ですよね。プラセボが活躍するような症例もありそうですけど」

はかせ「倫理的にどうかって話になると難しいよね。『ところが最近、プラセボだということを知らせた上でプラセボを使った場合でも治療効果を示すことが報告されている』。これが、いわゆるオープンラベルプラセボのことで、以前、我々が読んだ論文のことだろう」

みに丸「ですね」

はかせ「『これまでの報告では、対照群の標準治療の定義が研究によって一貫性がないので厳密に決めるべきである。また、プラセボ効果には医師のスキルや医師―患者間の関係性などの文脈に依存する部分があるため、介入群と対照群は同じ医師が行うべきである。そして、もっと長期的な試験が必要である』とのことだ。これらを踏まえて、慢性腰痛患者にオープンラベルプラセボの効果が認められるかを日本で検証したってことだね」

みに丸「なるほど。たしかに、オープンラベルプラセボの試験って盲検化されないわけですから、通常治療の内容って介入群と対照群でまったく同じものなのかが重要ですよね。以前読んだ論文では、痛み止めの用量を変更しないようにとされていましたけど、痛み止めの用量以外の治療内容に関してはどうだったんでしょうね」

はかせ「そのあたりを踏まえて、本研究では厳密に標準治療の内容を同じにして、あの驚きの研究結果が日本でも再現できるか、追加検証を行ったってことだね。バイアスになりそうな点を改善して実施したようなので、同様の結果となればこのオープンラベルプラセボが効くという仮説がさらに後押しされることになるんだと思うよ」



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