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情報の見え方を考えて自分で作る!インフォグラフィックのコツ【第6回】

地域医療ジャーナル 2020年12月号 vol.6(12)
記者:noriyoshi_kawana
デザインディレクター/情報設計・編集者


こんにちは。デザイナーの川名です。医療分野を専門に扱っていて医薬品、医学書、医療施設、官公庁や教育機関などの仕事をしています。医療に関わる情報が的確・正確に伝わることに、グラフィックやウェブのデザインを通して携わっています。

手続きは誰のためのものか

最近、事務所を引っ越し作業をしておりまして、書類上の手続きに忙殺されています。デジタルの力が解決してくれる問題も少しありましたが、依然として事務的な手続きは旧態依然としていて煩雑なものですね。いったい何度、署名して住所書いてハンコ押せばいいのか。ループ物の映画じゃないんですから。

早く全てデジタル化してしまえばいいと思うのですが、「オンラインからも可能」とされるいくつかの手続きが、結局アナログな手続きをそのままデジタルに落とし込んだような使い勝手の悪さだったりするから、質が悪いです。

 結局、事業者の手間を省くために作られていて、ユーザーの利便性は置き去りです。発想がユーザー主体ではなくなってしまっているように感じました。

サービスはアナログでもデジタルでも、ユーザーのことを考えて精密にデザインされているかどうかが肝心、ということだと思います。

「こんなに煩雑だったら、窓口に行って人に聞いたほうが早い」ということを妻に言ったら、「それはおじいちゃんの発想」と言われ、なるほど!と思いましたね。

えぇ、思いましたとも。

駅のホームはどこにある?

さて、新しい事務所に行くときに普段使わない地下鉄を使ったのですが、ここで事件は起きました。まずはこちらの写真をご覧ください。

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場所は地下駅の改札口をくぐったところです。問題はこの「中目黒ゆき」の看板です。

電車に乗るホームへの行き方を表示しているのですが、みなさんはどこに向かえばホームがあると思いましたか?目の前にはエスカレーターがあり、少し見えづらいですが、裏側にも通路があります。

私は咄嗟に、エスカレーターの裏側にある通路が「駅に向かう階段」だと思ってしまい、エスカレーターを降りずに奥にある通路を進んでしまいました。先にあったのはエレベーターでした。

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まあエレベーターも同じホームに着くので、あながち間違いではなかったのですが、余計に歩いてしまったわけです。 

よく見ると、この看板、一番左に「エレベーター」のアイコンがあります。つまり、この看板は「中目黒ゆきのエレベータに乗りたい方は、通路の20m先にあります」という意味だったんですね。

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このサインの問題点は、「中目黒ゆき」「1」のテキストが一番最初に目に入ってきてしまい、もっとも肝心な情報である「エレベーター」のピクトグラムが情報として埋もれてしまうことです。複雑な形は、シンプルな形や見慣れた形に比べて、認識が遅れます。 

いつも通う人は、間違えないかもしれませんが、初めての人はどうでしょう。これを「よくみればわかる」と考えるか「サインがわかりづらい」と考えるのか。ユーザーの目線に立っているのはどちらなのか、日常にわかりやすいデザインを考えるヒントが転がっています。 

駅のサイン計画は、この駅のこの場所でだけ機能するのではなく、全ての地下鉄で同じ法則にのっとって作成されるわけですから、わかりやすさと汎用性を兼ね備えたサイン計画が求められる非常に難しいデザインですね。

私が間違えたから、逆恨みして晒しているわけではございませんよ。けっして。



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