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マルチ勧誘回想録3: ”師匠”に紹介される

前回の「回想録2」では、キャッシュフローゲーム会や書籍によって「不労所得」への期待感が膨れ、勧誘者Mに”師匠”とのアポイントを取り付けられた所まで書きました。今回は師匠とのミーティングや、新規向けの説明会での体験について触れます。

師匠Aを紹介される

キャッシュフローゲーム会の数日後、勧誘者Mがビジネスの師匠と呼ぶ人物に紹介されました。仮に「師匠A」とします。
喫茶店で待ち合わせて、互いの自己紹介の後、軽い雑談をしました。頭が良さそうで、好印象な人物でした。そのうちに、推薦図書とされていた『金持ち父さん 貧乏父さん』の感想や、将来の夢について聞かれました。

師匠Aは、仕事を辞めて完全にこのビジネスだけで収入を得ているとのことでした。
ここで彼の口から初めて、"ビジネス"が某会社の製品販売の仕組みを利用した「ネットワークビジネス」だと聞きました。この某会社を仮に「会社X」とします。師匠Aからは、この”仕組み”を利用すれば『金持ち父さん 貧乏父さん』にも書いてある「ビジネスオーナー(※)」になれると教えられました。

※直接的な労働をしなくてもビジネスが回り、不労所得を得られる立場。

以下は、師匠Aとの会話の中にあった注意点です。

🚩やはり「マルチ商法」というワードは登場しない
(ネットワークビジネスと呼ぶ)
🚩自分達は会社Xの従業員ではなく「ビジネスオーナー」だという
🚩ネットにあるマルチ商法への批判は、成功できない人達の”落書き”なので、成功したければ勧誘者や師匠たちを信頼するように言われる
🚩一人暮らしかどうかを聞かれる

4つ目はビジネスと何の関係があるのか不思議でしたが、詳しくは後述します。

「成功したいならネットで調べるな」?

…という勧誘者たちの"アドバイス"を守ってしまったのは本当に致命的だったと思います。

義務教育で「マルチ商法=ヤバい」という認識はありました。しかし恥ずかしながら、同義語が存在することは知らず、「マルチ商法=ネットワークビジネス」という認識が欠けていました。

冷静になれば、ビジネスの仕組みから逆算して、これが「マルチ商法」だとわかるはずなんですが。
これはビジネス一般について言えることですが、リスクやデメリットについてもっとよく調べるべきだったと思います。

「実家暮らしじゃない方がいい」?

師匠Aが「自分よりももっとすごい人がいる」と「師匠B」について言及しました。その場で紹介される流れになったのか、次のセッションになったのかは思い出せませんが、師匠Bが高級外車に乗り、高級マンションに住んでいること、そのグループではトップの存在だと知りました。

この時に、師匠Bの持ち物件にサークルメンバーが住み、共同生活を送っているようなことも聞きました。その時は「金持ちで面倒見が良いんだなぁ」ぐらいにしか思ってませんでしたが、会員を実家から出るよう勧めることも、相手を囲い込む手段の1つだと後で知りました。

🚩実家暮らしの人は、一人暮らしまたは会員との共同生活を勧められる

これはターゲットを家族や友人から引き離して、孤立させるマインドコントロール手法の一つだそうです。これについては「同居人が”ビジネスオーナーのマインド”を持っていない場合、反対するかもしれないから」「会社Xの製品が毎月送られてきて場所をとるから」などと説明してましたが…。

将来の夢について聞かれる

不労所得に目がくらむ前の私は、スキルを活かしたフリーランスの仕事で生計を立てることを考えていました。自営業をやりたいと伝えたところ、「それだと働かなくてはいけなくて、やっぱり大変でしょう。夢はもっと大きく持っていいんだよ」と、何となく”ビジネスオーナー”になるよう誘導された感じはありました。将来の夢を利用した勧誘については「マルチ勧誘考察: 収益化される人間関係」でも触れました。

ニックネームを授かる

マルチサークルのメンバーは全員、ニックネームで呼び合っていました。本名にちなんだものだったり、第一印象だったり、人によって様々です。
自分にもつけられました。思い返せば、新しいニックネームを貰ったことで新しい自分?になった気でいたように思います。この後に参加するイベントなどで、このニックネームで呼ばれると、マルチサークルへの帰属感が増すような感覚がありました。

🚩サークル独自のニックネームをつけられたり、呼ばれることでマルチサークルへの所属意識・帰属感が沸く

セミナーへの参加

師匠A・Bとの顔合わせをした後日、ビジネスの説明会に参加するよう勧められました。広めの会議室を貸し切って、師匠たちや小グループのリーダーがネットワークビジネスの仕組みを説明したり、成功の秘訣を発表する場でした。参加者は新規・既存問わず全員参加のようでした。
「服装はビジネスカジュアルで」というドレスコードがありましたが、これには本格的にビジネスをしているような気分を演出する意図があったのではないかと思います。
他にも、気になることがいくつかありました。

🚩参加者のリアクションがやたら大きい
🚩合法性・正当性を強調
🚩製品の紹介などは少なめ
🚩一応クーリングオフ制度について説明

「ねずみ講」と違ってネットワークビジネスは違法ではないことを、かなり念入りに説明していたのが印象に残ります(例えば通常の金融商品ならば、合法性や正当性をわざわざ強調しません)。
特に登壇した”師匠”が、ねずみ講が間違っていることを説明したうえで、「年金制度はねずみ講だ(※)」と図解し、要約すると「政府や世の中や教育が間違っている→よってネットワークビジネスは正しい」という理論を展開した点は違和感を覚えました。

※国民年金制度に問題・課題があることを認識したうえで、これからは個人でも十分に備えていく必要があることは理解しています…が、マルチ商法を将来に備える手段として選ぶ場合は、それが持続可能なシステムかどうか、経済的リスクの他にも、人間関係への影響といったモラルの要素も十分に検討するべきだと考えます。

セミナーの後に開催される交流パーティやフットサル大会などのイベントに気を取られているうちに、セミナーで感じた違和感も忘れてしまうんですが。

次回は入会手続きや製品の感想を書こうかと思います。
クーリングオフ制度には救われました…。

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