見出し画像

取材力の無い日本メディアが追いやった周庭(アグネス・チョウ)の逮捕

いつもは客観的に、事実ベースで、法律や学説に依拠しながら書くことを心がけている。

でも今日は、少し思っていることをそのまま書きたいと思う。

日本のメディアにはいろいろ言いたいことがあって。

正直北京にいて中国政府からのメディアリリースの翻訳を日本の本社に送ってるだけの自称新聞記者とか、上海にいて中国メディアの報道を見てコピペ記事書いてる自称ジャーナリストとか。

外国のメディアが前線で体張りながら本当にジャーナリズムのために取材してるのに、日本のメディアはいつになっても現場で全然見ないとか。

結果トンチンカンな報道が横行しています。

実際に取材してないから地理関係も時間関係もぐちゃぐちゃ。

法制度も社会制度も理解してないから内容理解もぐちゃぐちゃ。

それでも日本で全然報道されないよりは100倍マシなので、少しでも香港を知ってくれる人がいたら良いかと思ってプラスに考えるようにしてました。

日本の新聞記者やテレビ記者はジャーナリストではなくサラリーマンなので、戦後のアメリカが作った記者クラブという制度の中で、ジョブローテーションで異動があって、先任の書いた記事を見て同じような記事になるように前例重視で日々記事を量産しています。

そんな日本メディアが、それでも香港取材してるっぽい雰囲気を出したいがために犠牲になったのが周庭だと思う。

日本メディアが、香港のことをきちんと知ろうとしなくても、取材しなくても、読者や視聴者を納得させられるように利用されたのが周庭だと思う。

※香港では「さん」等の敬称は付けずにフルネームで呼ぶのが一般的なので周庭とする

そして本人もそれを使命として引き受けていた。

少なくとも周庭は民主派のリーダーでは無い。

また、8月10日に香港国家安全維持法違反で周庭が逮捕された際に、日本のニュースのヘッドラインには「民主の女神」の文字が並んだが、

周庭は「学民の女神」だ。

これは黄之鋒(ジョシュア・ウォン)が創設し、2011-12年に反愛国教育運動を展開、2014年の雨傘運動の際にはその端緒の一端を担った学民思潮(スコラリズム)という団体のスポークスパーソンを周庭が担っていたからだ。

それがいつの間にか日本のメディアに「香港民主化運動の女神」のように祭り上げられてしまった。

テレビ東京の未来世紀ジパングでは「中国と戦う”民主の女神”~香港オタク少女の青春日記~」として密着特番を度々放送。

なんと馬鹿にしたタイトルだろうと泣きたくなるけれど、見てみると周庭を中心に民主化運動が展開されているように編集されている。

彼女はスポークスパーソンとして表舞台に立つ一人ではあったが、リーダーではないし、学民思潮が雨傘運動の全権を握っていたとか、周庭も参加していた香港衆志(デモシスト)が雨傘運動以降の政治活動の中心だったとか、周庭が2019年の反逃亡犯条例改正デモの中心だったかという理解は全く正しくない。

むしろ、周庭は時々わざと一歩身を引いている時も多い。

それは本人や本人に近しい人が不審な人物につけられるとか脅しを受けるとかそういうことももちろんあるし、

2019年についてはそもそも雨傘運動世代と反逃亡犯条例改正デモの世代が異なっていることも関係している。

もっとも、雨傘運動の時も運動全体は学民思潮より少しだけ世代が上の大学生たち(学連)が指導的立場に落ち着いていたのであって、運動の現場で周庭等がマイクを持つことは度々あるものの、学民思潮が率いていたわけでもない。

いずれにせよ、あえて一歩身を引いたところに周庭がいるとしても、日本のメディアは容赦なく当事者・主導者として周庭にマイクを向ける。

そうすればメディアは新しい取材先を見つけなくても済むし、周庭を出せば視聴率も取れるし、今日の仕事が終わるから楽なのだ。

周庭は自分の役目や日本での知名度を理解しているので、香港を代表してメディア応対を精一杯頑張ってくれる。

メディアが欲しそうにしている言葉を日本語で選んで、良かれと思って香港人の気持ちを代弁してくれる。

そんな関係が数年間続いた結果、周庭は日本に対し中国の国家安全を乱すように教唆する容疑者となってしまった。

日本以外にこんなに周庭ばかりが報道される国は無いので、周庭が結託している外国勢力は日本だ。

もちろん、日本国内で香港の話をするときに周庭の名前を出せば通じやすいので、そんな便利さを享受してきた自分も同罪だと知りながら、もし日本メディアがもうちょっとまともに取材をして報道をしていたら、今頃周庭が逮捕なんてされていなかった可能性もあるのかと、嘆いても遅い嘆きの中にいる。


今日も香港の状況は刻一刻と変わっています。そんな状況の深層を理解できるような基礎知識を得られる記事を目指しています。皆様からのサポートは執筆の励みになります。どうもありがとうございました