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ドラフトのポイントについて

「あの〇〇より上位でドラフト指名されたのに、全く期待外れだった。うちのGMは本当に見る目がない」みたいになることがたまにありますが、なんでそんなことになるのだろうと疑問に思うことがあります。
2巡目以下の成長期待枠ならまだしも、即戦力を期待されて入ってくるトップ10ぐらいの選手で、NBAでは全然だめだったというのは、にわかに信じられないけど、時々起こります。極端な例では、ダーコ・ミリチッチ(2003年2位)、クワミ・ブラウン(2001年1位)、アンソニー・ベネット(2013年1位)など・・・。

彼らは、NBAに入ってからパワーダウンをしてしまうのか。それとも、元々の実力が周囲の認識よりも備わっていなかったのか。もし後者であれば、カレッジでのプレー動画をよく見れば地雷を見抜けるかもしれない。また、もし前者であるならば、同じくカレッジでのプレー動画を見ることで、どういった要因が彼らをパワーダウンさせてしまうのか、もしくはどういったタイプの選手がパワーダウンに陥りやすいのかを知ることができるかもしれない。ということで、NBAでやや苦戦気味の(もしくは苦戦した)ジェイレン・スミス、アイザイア・ジャクソン、オシェイ・ブリセット、クリス・ドゥアルテ、ゴガ・ビターゼ、タイラー・ハンズブローのカレッジビデオをチェックしてみました。

ジェイレン・スミス

スミスは、現在よりもカレッジ時代の方が躍動していました。インサイドオフェンスの支配力、トランジション時のスピードとポジショニング、思い切りの良いカッティング、アリウープ、リムプロテクト、リバウンド、ハッスルプレー。チームで中心的な役割を与えられていたことや、NBAと比較しての相手ディフェンスの緩さも当然あるとは思いますが、とにかく勢いや爆発力がありました。こういうプレーができるなら、今年のドラフト7位でテイラー・ヘンドリックスを指名する必要は皆無だと思います。
現在のペイサーズでのスミスは、出来るはずであることをしていない状態に見えます。少し自信を失っているように見えます。一時的な不調からPFからCに定位置が移動してしまったことや、スリーポイントのシュートスランプから中々抜け出せていないことが影響しているのかもしれません。しかし、後述するゴガ・ビターゼやタイラー・ハンズブローとは違い、NBAでは相対的に劣りやすいサイズやパワーに依存したプレースタイルではないため、越えられない壁にぶち当たっているという感じはしません。スミスの場合、期待していたよりも活躍はできていないものの、まだポテンシャルがある(パワーダウンしたと評価するには時期尚早)と言えると思います。
個人的には、チームが彼に中心的な2-wayプレーヤーとしての役割を意識的に与え、本来持っている力を開花させられるかどうか試してほしいと思っています。

アイザイア・ジャクソン

ジャクソンは、いまのジャクソンと同じ動きでした。独特なリズムでオフェンス、ディフェンス両方に絡むけど、圧倒的とまではいかない。ペイサーズはジャクソンを22位で指名しているので、まあそれなりという感じで、期待した通りの活躍を今しているタイプだと思います。センターとしては若干アンダーサイズの割に横の動きが少しモッサリしていることや、パワーフォワードとしてはショットのセンスをそれほど感じないことは、カレッジ時代から変わっていないようでした。

オシェイ・ブリセット

ブリセットも、いまペイサーズで見ているブリセットと同じでした。サイズがありそれなりにオールラウンドにこなすけど、NBAのフォワードとしては平均以下の実力であることは否めない感じ。現在と同じような動きとスキルをカレッジ時代でも見せていたので、彼の場合も期待した通りの活躍をしているといえます。ブリセットはドラフト外での入団ではありますが。

クリス・ドゥアルテ

ドゥアルテも、いまと同じでした!カレッジ時代は無双していたという感じもなく、そこそこの身体能力とショットの精度で得点を重ねていました。現在の彼のプレーを示唆するかのように、少し当たりに弱いのではないか?と疑われるシーンや(カレッジではなんとかなってる)、ドライブで抜ききれずタフショットになるシーンがちらほらありました。たぶん、そういうタフショットをカレッジでは比較的高確率で決めることができていて、スタッツには表れないリスクのようなものなのだと思います。ドゥアルテの場合は、おおむね期待通りの活躍はしているものの、思ったよりNBAの壁を乗り越え切れていないという点で、ドラフト時(13位)のイメージとのギャップが若干発生したパターンではないかと思います。

ゴガ・ビターゼ

カレッジ時代のビターゼを見ていて思ったことは、こういう7フッター以上の長身系の選手は、相対評価が難しそうだということです。カレッジ時代のビターゼは、高い身長、長い手足を活かして得点やブロックを決めており、スピードや他の弱点など気にもならないくらいですが、これがNBAだったらどうなるのかということを冷静に考えなければいけなかったと思います。ビターゼの場合、サイズに依存したプレースタイル感は否めなかったので、これが潰されればそこまでとなります。実際、ビターゼがブレイクできなかったのは、彼の武器自体がNBAの中では凡庸であり、それ以外の引き出しがなかったからではないかと思います。
この年ペイサーズが長身センターがどうしても必要だったのかは忘れましたが、ビターゼ(18位指名)より下位の指名選手にはジョーダン・プールやマティス・サイブル、ダニエル・ギャフォードなどおそらくビターゼよりも戦力となっていたであろう選手が何人かいます。いま持っている実力がNBAの中でどれくらいのものか、今後伸ばせそうなスキルは他にあるのか、そこをよく見ておけば、指名を回避できた例だと思います。

タイラー・ハンズブロー

ノースカロライナ大で2008年にはカレッジ・プレイヤー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、2009年にはNCAAトーナメントを制し全米制覇、NCAAオール・アメリカン1stチームに3度選出された”Psyco-T”も、ドラフト13位でペイサーズに指名されて以降、最後までパッとせずキャリアを終えることになりました。
ハンズブローのプレースタイルはおおむねNBA時代と似ていましたが、カレッジ時代は無双できていたあらゆる要素が、NBAでは通用しなかったということのように思われます。
身長206cm、ウィングスパン213cmというサイズ感と、やや強引に攻めに行くプレースタイルのバランスが、絶妙に中途半端だった可能性があります。先述のビターゼと一緒で、冷静な相対評価が必要なタイプのプレーヤーであり、第2の武器や今後伸ばせる可能性のあるスキルの見極めが必要だったのではないかと思います。


今回調べてみてわかったのは、NBAで苦戦している(苦戦した)選手は、カレッジからNBAに舞台を移しても変わらずその選手らしいプレーをするが通用しないケースと、何らかの理由でその選手らしいプレーができずに苦戦するケースの2パターンがあるということです。
前者の、プレースタイルは変えないが通用しないパターンは、ある程度カレッジでのプレーを見て判断ができる場合もありますが、パワーやサイズに依存してスタッツを稼いでいるような選手は、NBAで自身を差別化できるセカンダリー・ウェポンをいくつ/どれくらいの深度で持っているかの冷静な見極めが必要だと思いました。
後者の、選手が本来のプレースタイルを維持できなくなるパターンは、カレッジ時代のビデオだけでは予測不可能ですが、その選手がどういう環境(チームメイト、チームで与えられている役割)で最高のパフォーマンスができるプレースタイルを維持しているのかの分析と、それが現在のチームで提供可能なものであるかを考えておく必要があると思います。
後者のパターンについては、とりあえずドラフトして入団してもらってからチームでアジャストしていくことも十分に可能だと思います。ただ、そのチーム課題を忘れて選手の好不調だけに流され評価してしまうような安直さではいけません。

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