野犬に襲われる

大学生の頃、いかにも金は無いが時間と体力が有り余ってる人間がやる「自転車での本州縦断」をやりました。サイクリング車に最低限の野宿セットを積み、日の出ている間はひたすら走る。夜は都市部の場合と自然の場合の差異はあれど野宿する場所を求めて移動する。ユースホステルに泊まる金もケチって野宿できるのは男の特権。

大学1年生の夏、長野県の峠で野宿することがありました。例によって道に迷った結果、人家どころか明かりすら見当たらない山の中。空にだけは星が燦々と輝き幻想的ながら、現実に野宿するには厄介な状況でした。「自然の中で野宿するならどこでもいいじゃん!」とはなりません。体力を回復しようと思ったら、少しでもマシな条件で寝る必要があります。幸い、こ綺麗に掃除されたお地蔵さんを発見!大理石の土台があり寝るだけの広さがあります。マットを敷いて寝袋を出し、真夏の深夜、長野の山中で眠ります。真夏なのに寝袋に入るのは蚊にやられないため。顔だけなら虫除けでカバーできます。そして黎明の中、奇妙な気配で目覚めました。

まぶしくて目覚めるとか、うるさくて目覚めるはともかく、肌にピリピリくる感覚で目覚めた私の寝ぼけ眼に映ったのは野犬の群れ!6匹くらいでしょうか?私が持つ食料目当てか、あるいは私のからだ目当てか?(深読みするな^^)

とりあえず武器も何も無い私は大ピンチ!ヤクザ屋さんならまだ言論を弄することもできますが、ムツゴロウさんではない私にイヌ語は話せない。ご丁寧に寝袋の中なので手も足も出ません。文章だけならややもすればコミカルですがシャレにならない状況。

『そうだ、ケモノは火を恐れるはずだ!』動揺しつつも脇のリュックに体を半分転がして寝袋の中からチャッカマンをつかみます。化学繊維の寝袋に入ったままチャッカマンをカチカチする私、かなり愚かです。手を滑らせれば私の望む大きな火が発生しますが、その時は野犬にたかられるよりも大変なことになるでしょう。労せずして彼らは焼き肉を手に入れるわけです。

結局、火は決め手にならず、私がゴロゴロやってるうちに、まったく無関係に近づいてきた車のヘッドライトで逃げてくれました。

翌日、農家のおばちゃんに聞いたら、その場所はお供え物目当てで野犬がうろつくポイントになってるらしくて。いやあ、死ぬかと思った・・・。

CIA(内部監査人)や行政書士資格から「ルールについて」、将棋の趣味から「格上との戦い方」に特化して思考を掘り下げている人間です。