限りなく近く果てしなく遠い世界 「血か絆か?」 我不迷

「人生の中で起こりうる困難な課題にぶち当たったら私ならどう考えてどうするか?」が中心で、ネタバレ中心ではありませんが、福山雅治主演、是枝監督作品、2月7日に放映された「そして父になる」のネタバレ込ですのでご注意ください。

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中々ほほえましくも悩ましい作品だった。

私が感じ取ったメインテーマは

「6年間我が子だと思って育てった子は病院で取り違えられてた『よその子』でした。」
「さて、今後はどうしますか? ①今まで育て他t子を育てる ②本来の子を取り戻して育てる」

というもの。

ハナー哲学(?)のいくつかに思いっきり抵触し、あちら立てればこちら立たずな問題であり、見ている2時間の間「自分ならどうするか?」と思考をめぐらせる羽目に陥った。

「全体利益の最大化(というか全体損失の最小化、損切りの問題)」
「基本原則はオープンバカ」
「不可知論(未出題の謎は解かれない 復活してない魔王は倒せない)」

あたり。


大宇宙や深海など人類に未知未到の領域はまだたくさんあるが、最も身近で最も謎が多い、「限りなく近く、果てしなく遠い」領域として「自分の内面世界」を忘れてはならない。自分の内面世界に潜るのは実に楽しい。私自身は自分を比較的よく知っているほうだと思うが(なにせ自分自身も「モルモット扱い」な時があるので)それでも今回のような「悩ませる質問」が尽きることはない。

完全に自分自身を知り尽くしている=大悟というかブッダにでもなれば、もはや「迷いすら生じないはず」だ。だが実際はときたまこういう命題に突き当たる。一部の超天才でもない限り、自分自身すら知りつくすことはできない。ゆえに死ぬまで退屈することはない。


一緒に見てたツレは「これは結論出せない。実際になってみないと分からない」と早々にさじを投げていたが、その気持ちもわからないではない。

で、私は「私の正解」に達した。あくまでも私にとっての結論であり、他人様にとって絶対のものではない。特にこういう「何をどうやっても誰かが損する損切の問題」は「正解」が割れやすいものだ。

「6年間育ててきた今の子をそのまま我が子として育てる。自分の血を継いだ子は相手先の環境がよほど劣悪でない限り相手に委ねる」と言う結論である。

考えた順序としては以下の通り。

こういった何らかの命題にぶち当たったらまずは「最終目的」を確認する。今回は「全体損失の最小化」が目的である。

一方で手段を当てはめて考える。「オープンバカ」を当てはめると「チェンジ」することになるわけだが。大人も子供も皆が悩むことになる。(実際映画中でもそうだった)。大人は6年間、育ってきた環境が異なる子供と向き合わなければならない。子供はより大変で見知らぬオジサンおばさんをお父さん、お母さんと呼ばなければならない。

私にとってのオープンバカは原則や手段であって目的ではない。目的である全体損失の最小化に抵触する時点で手段はより適切なものに変更されるのが当然のことだ。オープンバカな方が問題が隠匿されず、当事者にとって公平になることが多いのでよく道居る手段だが、今回は例外だ。むろん、私利私欲によってオープンバカをやめるのは許されない。今回は「自分も今さっき知らされて悩むような難題を子供に背負わせるのは酷だ」と判断したわけだ。

オープンバカで上手に行くには情報を知らされたすべての人間がその問題の大きさに対して割り切れるだけの経験や能力があることが前提だ。6歳児にとってはまりにも大きすぎる問題なわけだ。ゆえに『秘匿』もやむなしと判断した。

「未出題の謎は解かれることがない」は読み替えるなら「未出題の謎に悩まされることはない」のだ。この場合「復活してない魔王は倒せない=魔王に悩まされることはない」の方が適切か?

私にとってはいわゆる「墓場まで持っていく秘密」になるのだろう。


【ツレのツッコミ】

割り切った様子の私を見てツレは様々なツッコミを見せた。

ツレ「育つにつれて子供は全然自分と似ずにかけ離れていく現実はどう考えるの?」
私「世の中にはまったく似てない親子もいる。たいした問題じゃない」
ツレ「映画本編のようにありえない血液型とかでばれたら?」
私「子ではなく、親の血液型を矛盾がないようにウソついておけばいい。」
ツレ「それでもばれたら?」
私「確証に近いところまでいかれたら秘密にした理由とセットで真実を公開するだろう。その場合は我が子が真実と向き合えるように全力でバックアップするしかないかな。でもね、内部監査の経験則から言うと詐欺師のウソや不正のウソに比べるとこの手のウソはちゃんと対策しておけばバレる確率はとてつもなく低いんだよ。」
ツレ「なぜ?」
私「ウソをつく積極的な動機に欠けるからね。私利私欲のウソに比べるとそもそも疑われないんだ。監査する時にもっともアンテナを張るのは『そいつがうそをつくことで得るメリットとか避けられるデメリットでつぶすのが99%だからね」
ツレ「自分の血を分けた子がよそでどうなるのかは気にならないの?」
私「気にはなる。だが気にしても仕方がないからあまり考えない。一定の生活環境に居たらシャットアウトしたほうがいいかな。向こうの親が虐待してるとか死んでしまったとかなら引き取って育ててもいいけど、ジョナサンとディオみたいな関係にならなければいいんだがね。相手の家族も親友になれるくらい相性がいいなら家族ぐるみで付き合う手もあるけど、これはよほど条件がそろわないと難しいだろうね」
ツレ「自分の手元に居る子がたとえば出来が悪いとか、障碍があるとかでも?」
私「わが子として6年育てた実績が何よりも強いと思う。不出来だろうが障害があろうが、もはやその子は『我が子』なんだよ。血のつながりとは優先順位がくらべもににならん。たとえば育成期感が1年未満で物心がつく前ならばチェンジしたいと思うけどね。私自身は問題を受け止めきれる自信がある。だけど子供には背負わせたくない。子供を混乱させたくないんだ。こういう「やさしいウソ」ならアリなんじゃないかと思う」

自分で考慮して「正解を決めた」。そうすればもはや迷わない。全部背負って突き進むのみだ。

CIA(内部監査人)や行政書士資格から「ルールについて」、将棋の趣味から「格上との戦い方」に特化して思考を掘り下げている人間です。