アウトレンジ戦術各種

さる事情で東京駅から九段下駅に歩いている最中に降ってきた文章。正確にはずっと脳内で転がしていた思考に形が得られたものを携帯メモに必死こいて打ち込んだものです。

いわゆる「アウトレンジ戦術」的なものには段階がある。その段階を一歩一歩深めていくと「防御力よりも射程、射程より隠密性」「人付き合いで注意すべき事」など様々な領域に踏み込むことになるといういつもの転用戯言をば。(たとえには将棋とかシノビガミとか「少女漫画の意地悪キャラの行動(!)」とか「肝臓ガン」が出てきますw)


その1 「イージスの盾」
あるところでは有名な「イージス理論」は単純明快な解り易さゆえ、実はアウトレンジ戦術の考えでは一番最初に来る。「堅牢な防御で敵の攻撃を寄せ付けなければ負けはない」という発想。たとえば我が父の堅牢な受けがこれに相当する。現実には相手の攻撃を受け続ければ防御は削られる事が多い。なので、より現実的に考えるなら長兄のように「自分の走行が削り切られる一瞬前、一手だけ早くに相手にとどめを刺せばよい」という「刹那の見切り」「安全な一手差の勝利」に通じる部分もある。

類似したところではシャア様の「当たらなければどうという事はない」というのもあるが、100%の回避を未来永劫保ち続けられるかどうか。削られる危険性と同程度に考える必要がある。段階としては同じところである。

その2大艦巨砲主義

大艦巨砲主義とは旧日本帝国海軍が提唱していた戦術理論である。

相手よりも大型の艦船に相手よりも大口径=超射程の大砲を装備し、相手の射程外から一方的に攻撃するという理論である。おそらくもっともなじみ深いアウトレンジ戦術は今回の記事だろう。分かりやすい例でいえば片方だけが弓矢などの遠距離攻撃の手段を持ち、もう一方が持っていない状態である。遠距離の優位を持っている側は防御にほとんど気を使うことなく、一方的に攻撃できる。

シノビガミと言うゲームの例でいえば「影分身」と「集団戦」を所持すれば理論の7割は達成できる。プロット1を軸に6に影分身でいけるよう設定し、相手の射程外を選び一方的に攻撃する。
相手が4から6を選べば射程4の集団戦で攻撃する(プロット6にはそのままでは届かないが工夫すれば2種類の方法で攻撃できる)
相手が1から3を選んだ場合はプロット6に移動して、やはり射程4の集団戦で攻撃する(プロット1にはやはり届かないが、工夫すれば2種類の攻撃が可能になる)
相手が射程2以下の攻撃手段しかない場合はほぼ完封できる。
1巻ルールの場合、相手の対策は
①プロット1や3にはってこちらの分身ミスを待って攻撃
②鞍馬の影法師で追尾して火力勝負を挑んでくる
③そもそも射程3以上の攻撃手段を取得する
あたりが考えられるが、それぞれ考えれば対策を立てることは可能である。
理論で言うと残りの3割の部分だが、全部答えを出して他人の考える楽しみを奪うのは良くないのでこれくらいにしておく。(実際に1巻ルールでこのキャラを用いたことは3回あるが、タイマンの通常攻撃においては相手が攻撃可能な状況を作らせること自体がほとんどなかった。ゆいいつダメージを受けたのは乱戦において奥義の「範囲攻撃」を一度受けたのみであった)
皆が攻撃力や回避数値の特化に走る中、「そもそも攻撃を受けない」という毛色違いで思考するのは楽しい。理論は完成し、数度の実行で証明されたのでとりあえず私の中では過去に完結した理論となる。何よりも2巻ルールが入るとコイツでは対応できなくなるしw。

なおスト2のダルシム(手足の伸びるキャラ)や将棋における飛車角の攻撃はこの類型だが、やや異なる。なぜなら、伸ばした手足や突っ込んだ飛車角に対して相手が反撃できるからである。射程によるアウトレンジ戦術はあくまでも相手に反撃すら許さないモノをさす。なお、私の愛するバイソンというボクサーキャラにいたっては伸ばしたグローブに攻撃判定はないのに、反撃は受けるという「逆アウトレンジ戦術」のキャラ設定になっていて泣ける(笑)。

その3は「相手に見えない攻撃」である。
攻撃手段を悟らせないということだ。推理物でいえば凶器が不明だということ。相手はHOW(どうやって?)という状態に陥る。「射程外だから安全」というよりは「相手の認識外の攻撃だから必ず決まる」という意味でのアウトレンジである。

マンガなどで強敵が出現した時に良く取られる手法なのは「未知の攻撃」「理解の外からの攻撃」が如何に恐怖や強大さを覚えさせるかという証明であろう。

なお「速過ぎて見えない攻撃」はこの類型だが、一歩劣る。理由は「攻撃が見えないのは攻撃速度が速いから」という理由を悟られているからである。理由が分かっていれば確信を持って対策を立てる余地があるからだ。目前の相手が直線的な高速の攻撃を仕掛けていると分かった時点で正否はともかくACFでいえばCのカウンターを狙うのが道理というものである(鋼の錬金術師のスロウスあたりがこれでやられている)。

したがって、こういった強大な演出直後に悪役が自分の素早い攻撃を油断と慢心から滔々と自慢するのは講釈をたれるのは相手によっては逆効果と言うことである。悪役は素早く心が折れるヘタレな相手を見極めて己の技のすごさを自慢するほうがよいだろう。そうでなければ対策を立てるヒントを与えることにしかなるまい。あるいは駆け引きとして講釈たれておきながら実は偽情報というのはありかもしれない。

第4段階は「靴に画鋲」である。

少女マンガの意地悪キャラがヒロインの靴に画鋲を仕込み「ガビョーン」と言わせるアレだ。

実は「靴に画鋲」は高度なアウトレンジ戦術なのである。少なくとも私の分類でいえば「速過ぎて見えないラスボスの攻撃」よりも高度なのだ。「靴に画鋲」がw。

誰が攻撃をしていることを悟られない。攻撃者を認識させない攻撃の類型である。推理物でいえば「容疑者が不明」ということ。相手はWHO(誰が?)の状態に陥る。

誰からのいつの攻撃か、出所がわからなければ対策は相当立てにくい。
伏兵や不意打ち同様に時差を用いたアウトレンジ攻撃だと言える。ここまでくると罠や策略に近いか。警戒や防ぐのもむろん大変だが、「防いだところで反撃する相手が目の前にいない(そう、まさにアウトレンジ戦術)」こともかなり辛い。

「当たらなければどうということはない」というセリフがあるが「知られなければどうということはない」の領域である。これって実は不正の心理にもつながる。内部監査にも関連してくるわけだ。「見てますよ」「知ってますよ」という様子自体が不正を働く人間に対する抑止力となる。

その5サイレントキラー「静かな悪意の噴火はこわい」(ファミリーテニスのパスワード風と言っても誰がどれだけ知っているか?W)

そもそも攻撃を受けた対象にダメージを受けていることを悟らせないというものだ。推理物でいえば動機が不明だということ。相手はWHY(なぜ?)という状態に陥る。

たとえば沈黙の臓器と言われる肝臓のガンがそれに近い。ダメージを受けている意識がないからこそ対策を立てず、気がついた時は手遅れになっているわけだ。

あるいは時代劇で凄腕の剣豪に斬られた被害者が、斬られたことに気づかず、家に帰り水を飲んだら水が体の切れ目から出てくるというアレも該当するだろう。

靴に画鋲はまだダメージを受けている自覚があるわけだが、このサイレントキラーにはそれすらない。不可知ゆえ対策を立てることすらしないのである。

神ですら欺ける可能性がある究極の攻撃の一種である。(まあ、神様が本当に「全知」全能なら無意味なことだが)人付合いに転用すると、だからこそおとなしい人や年下、後輩の不満こそ恐ろしいということになる。彼らは文句を言ってくれる可能性が低い。内心の不満がいつ爆発するかわからないのである。文句を言うウルサ型はその場で認識できるので対応可能だし、あまりにうっとうしいならいっそ距離を取ってしまえばいいだけだが、年下や後輩はそうはいかないのである。

その6究極形態=無敵=平和

防御だけに着眼して考えると究極のアウトレンジ戦術はそもそも敵を作らない事である。あなたの真意はともかく、あなたを敵と認識させないということだ。

全員を味方にすればそもそも警戒も防御も不要になる(と、思わせて…の可能性はないではないが)。だから孫子先生も「戦い過ぎるのはヨクナイ、いじめ、かっこわるい」と言っている(言ってません!)。

まあ、完全平和主義実現は理想であって現実には不可能に近いのは重々承知だが、目指す方向性としては間違いではない。もっとも、鳩山氏の言うような「友愛」はいきなり最終目標だけを提示しており、手前の現実にはまるで焦点があっておらず、噴飯ものなのだが。賢い方なので我々一般市民には見えない道筋が見えているのかもしれないが、それならそれで分かるように説明はしてほしいものである。友愛は相手と利害が一致して、友愛の情を示す時にこそ成り立つ。一見矛盾するようだが、周辺国と日本の利害は対立している。「日本と協調するよりも争うほうが得だ」と思われている時点で友愛は成り立たないのだ。たとえは難しいが、やっと捕まり立ちをはじめた幼児にいきなりトライアスロンをやらせるようなものに見える。鳩山氏が自分の莫大な私財を投げうって友愛に投入するならそれは彼の勝手だが、日本の財産を勝手に使うのはご免こうむりたいものだ。

尚、私が「全体利益最大化うんぬん」と叫ぶのもこれが根底にある。本当に戦うべき相手を見極めて確実に勝利したいなら、味方は多く敵は少ないにこしたことはない。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」はよろしくない。むしろ「坊主憎けりゃ袈裟は脱がせろ(いや、セクシャルな意味では無くて!!!)」なのである。

CIA(内部監査人)や行政書士資格から「ルールについて」、将棋の趣味から「格上との戦い方」に特化して思考を掘り下げている人間です。