オフシーズンの雑感

 Jリーグが終わったので、オフシーズンには海外のサッカーを観て見識を深めようとたくらむ。深めるためにはアウトプットだ。その一環で、ラ・リーガ・サンタンデール、第18節、FCバルセロナ対マジョルカの試合を観た。バルサだよ、久保建英選手だよ、カンプ・ノウでブーイングもらってるよ! 観ていて考えたのは、有効なサイド攻撃とはなんなのだろう? ということ。サイド攻撃って、よくわからない。

 ゴールは中央にあるのだから、守るとき人は中央へあつまる。なので、代わりにサイドの選手がすくなくなりやすい。人のおおい中央ではなく、人のすくないところを経由してゴールへ迫ろうというのが、サイド攻撃の目的であろう。ただ、サイドにはタッチラインがある。すぐそばにフィールドの限界がある。中央にはプレーエリアが360度あるけれど、サイドでは180度になってしまう。今季の愛媛FCでいえば、ウイングバックの下川陽太選手や長沼洋一選手が、サイドで相手の選手たちに前方への進路を断たれて窮してしまう場面がなんどもあった。愛媛にかぎらずとも、サイドで前進に行き詰まってしまうのは、試合中に繰り返しみられる場面であろう。
 おかしい。人がすくないサイドから攻めているのに、なぜか相手より優位にたちづらい。それでもなおサイドから攻撃する理由はなんだろう? 時折みられる効果的なサイド攻撃はどうして成功したのだろう? と浅慮した。

 バルセロナもマジョルカも、ボールをもたないときには[4-4-2]のブロックを形成する。ペナルティーエリアの幅にまとめているのでかなりコンパクトだった。つまり、サイドはかなり空いている。
 両チームとも、ボールをもっているときは、サイドハーフが内へ絞って、サイドバックが高い位置をとろうとしていた。なのでたがいに相手のサイドバックをフリーにしやすかった。
 高い位置をとる相手サイドバックのケアの仕方は、ディフェンスラインのスライドか、もしくはサイドハーフのがんばりによってなされることがおおい。どちらかといえば、サイドバックがでてくるよりも、サイドハーフにがんばって戻ってこられるほうが、攻める側としてはやっかいなのかもしれない。サイドバックがでてくれば、その背後が空くことになるからだ。攻める側としてつらいのは、サイドハーフに寄せられて手こずっているあいだに、サイドバックまででてこられて挟み撃ちにされてしまうこと。ボールを失うとカウンターを受けやすくもある。

ディフェンスラインのスライド

サイドハーフの頑張り対応

 マジョルカはあまりサイドから前進できていないようだった。バルセロナに上述の対応(ディフェンスラインのスライド対応とサイドハーフの頑張り対応)にあって、サイドで行き詰まってしまっていた。
 たいしてバルセロナはサイドからの前進が効果的だった。なぜか? どうやら、サイドバックへパスを入れる過程にあるようだった。
 バルセロナは中盤でボールをもつと、2ライン間にいる味方へ縦パスをとおそうと狙っていた。縦パスがとおると、受けた選手は短いタッチ数でサイドバックへパスをだしていた。この形になったとき、バルセロナはサイドバックがよゆうをもってボールを前進させることができ、おおくのチャンスをつくっていた。
 直接サイドバックへパスがでるより、中盤を経由したほうがサイド攻撃が有効になるのはなぜか? みていくと、2ライン間でパスを受ける選手に、マジョルカのサイドバックとサイドハーフが影響を受けている。たとえば、右サイドバック、右センターバック、右サイドハーフ、右セントラルハーフの4人で守るエリアに縦パスがはいったとする。するとパスを受けた選手をサイドバックかサイドハーフの選手がみることになる。4人で守るエリアの中央でパスを受けられたので、どうしても複数人が同時に「寄せなければ」という意識をもつことになる。
 その「寄せなければ」という意識と、実際に踏みだされる数歩が、攻める側としては重要になってくる。中央への意識がつよくなるため、すくないタッチ数でサイドへパスをだされてしまうと、パスのでた先への対応は、どうしてもその意識や歩数分だけ遅れてしまう。つまり、サイドバックの選手がその分よゆうを得られるらしい。

2ライン間への縦パスを経由したサイド攻撃

 こうしてサイドから崩されると、対応にでるのはサイドバックになる。すると、ディフェンスラインはスライドして対応することになるので、逆サイドの選手がより中央に近い位置でフリーになれる。攻める側からすれば、2ライン間にいた選手たちがゴール方向へ飛びこむ形になるし、先手をとってもいるので、相手の陣形を操りやすくもなる。フォワードの選手がニアゾーンへ飛びこんで相手センターバックをひとり釣るとか、中盤の選手が裏を狙って飛びだしていくとか、エトセトラ。

サイドバックが釣られたあと

 ということで、サイド攻撃が効果的なものになるかどうかは、中盤での縦パスがキーになるらしい。今度からは、サイドの選手にボールが渡るまでに、ボールがどこを経由してきたのかを意識して観るとおもしろいかもしれない。ひとつ勉強になった。
 サッカーとかよくわからないぜ、という人間が、試合を観ながら浅慮したことなので、おそらくサッカーを知っている方からすれば自明なことなのでしょう。そのときは高笑いしてください。サッカーの試合を観て考えることがあったら、また高笑いを誘いにきます。
 最後までお読みいただき誠にありがとうございました。