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【センスメイキング/要約/事例】アルプスに入山したハンガリー軍はなぜ戻れたのか?【「腹落ち」の理論】

こんにちは、白山鳩です! クルッポゥ!

マガジン『能ある鳩はMBA②  ビジネススキルで豆鉄砲』での、

ビジネススキルにまつわる情報の紹介です。


前回の記事はこちらです。↓↓↓


今回の記事では、

「ある出来事や経験に対する理解」に関する概念である、

「センスメイキング」

をご紹介します。


1つの記事あたり、だいたい5分で読めますので、お気軽にスクロールしてみてください!


なお、全て無料で読めますが、

「良い記事だったなあ」

と思っていただけるようでしたら、記事代をいただけると励みになります!


センスメイキングとカール・ワイク

「センスメイキング」は、アメリカの組織心理学者であるカール・ワイクによって紹介された概念です。

カール・ワイクは、以前、鳩のnoteでも取り上げた「高信頼性組織」についてもたびたび言及しています。


なお、「センスメイキング」について解説しているネットの記事だと、ときどき、

もともとは組織心理学者のカール・ワイクが生み出したもので~

と、あたかもカール・ワイクの発明品かのように解説している文章が見受けられますが、

カール・ワイクはあくまでも既存の概念としての「センスメイキング」に着目し、これを発展させてきたのであり、生みの親ではありません


08_01_驚き


カール・ワイクの著書『センスメーキング・イン・オーガニゼーションズ』を読めば、

「センスメーキングの研究者は、○○という定義を用いている」

といった描写が繰り返されており、

「カール・ワイクはあくまで、既存の概念を著書で紹介したのだ」

ということは、すぐにわかります。



もともとは組織心理学者のカール・ワイクが生み出したもので~

という紹介をしている記事は、

ワイクの著書に当たっていない可能性が高いと言えるでしょう。

(まあ、かく言う鳩も、翻訳本を読んでいるだけで、

原著を読んだわけではないので、あまり偉そうなことは言えませんが……


センスメイキングとは

さて、肝心の「センスメイキングとは何か」について見ていきましょう。


ワイクの著書『センスメーキング・イン・オーガニゼーションズ』では、

先行研究に照らしながら、「センスメイキング」とは何かを、

次のように説明しています。


何ものかをフレームワークの中に置くこと
驚きの物語化
共通理解のために相互作用すること


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……さて、このままでは、ちょっと何言ってんのかわからないので、別の本を参照してみましょう。


早稲田大学ビジネススクールの教授である入山章栄さんは、

著書『世界標準の経営理論』において、次のように紹介しています。


センスメイキングはいまだ発展中で、その定義自体も多様だ。

しかし筆者の理解では、その本質をよくとらえた日本語がある。

それは「納得」であり、
さらに平たく表現すれば「腹落ち」である。

センスメイキング理論は、「腹落ち」の理論なのだ。
より厳密には、

組織のメンバーや周囲のステークホルダーが、
事象の意味について納得(腹落ち)し、
それを集約させるプロセスをとらえる理論


と考えていただきたい。



特に

センスメイキング理論は、「腹落ち」の理論なのだ。

という紹介は、シンプルでわかりやすいのではないかと思います。


ハンガリー偵察部隊のアルプスでの演習

ここで、

その話がセンスメーキングの真理を実にうまく捉えている

として、カール・ワイクが好んで言及する、とある事例について見ていきます。

以下、『センスメーキング・イン・オーガニゼーションズ』での紹介事例を要約します。


ハンガリー軍の偵察隊がアルプス山脈の荒野へ向かいました。

しかし、その直後、降雪が始まってしまいます。

偵察隊は遭難したものかと思われたのですが、なんと3日後、彼らは無事に戻ってきます。

「どうやって戻ってきたのか」と尋ねられたところ……。

われわれは迷ったとわかって、もうこれで終わりかと思いました。
そのとき隊員の一人がポケットに地図を見つけました。
おかげで冷静になれました。
われわれは野営し、吹雪をやり過ごしました。
それからその地図で帰り道を見つけ出しました。
それでここに着いたわけです。


九死に一生!

なんという幸運だったことでしょう。

というわけで、その地図を改めて見てみたところ……。

なんと、その地図はアルプスの地図ではなく、ピレネーの地図だったことが判明するのです!


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さて、先ほど、

センスメイキング理論は、「腹落ち」の理論なのだ。

というのを見てきました。


ワイクは著書において、

「正確性」よりも「もっともらしさ」がセンスメイキングにおいては重要である、と説いています。


地図が正確であるかどうかは、この際、重要ではない。

その、「もっともらしさ」に腹落ちできたことこそが、

ハンガリー軍を次の行動に導いてくれた、と言えるでしょう。


地図という「計画書」/実行の重要性

アルプスでの降雪という絶望的な状況で座して死を待つのではなく、

「地図を見つけた」ということをきっかけに、

偵察隊の管理者(リーダー)が行動を起こしたことの重要性を、

ワイクは説いています。


管理者としての成功を説明するものは、
何を計画したかではなく、何を実行したかであることを、
管理者は忘れている。

管理者は、御門違いなものーーすなわち計画書ーーをいまだに信じており、
この過ちを犯しているために、
管理者は計画づくりにより多くの時間を割き、
実行にあまり時間を割かない。

そんな管理者に限って、
計画づくりに多くの時間を費やしても何も改善されないと驚くのだ。
部下たちはよく道を見失うものだし、
リーダーですらどこへ行くべきか確と知っているわけではない

リーダーが知っていることといえば、
困難に直面したとき
手に持っている計画とか地図では脱出するのに十分ではないということである。

このような状況に直面したとき、リーダーのなすべきことは、
部下に自信を植えつけ、
何らかのおおまかな方向感覚で部下を動かし、
彼らが自分たちのいた場所を推定し、
いまどこにいるのか、
またどこへ行きたいのかがもっとよくわかるように、
行為によって生み出された手掛りに部下たちが注意深く目を向けるようにすることである。

カール・ワイク、遠田雄志ら訳(2001)『センスメーキング・イン・オーガニゼーションズ』(文眞堂)より


さて、マネジメント手法の1つとして、

「PDCAサイクル」(Plan-Do-Check-Act)という管理方法は、多くの企業で採用されているかと思います。


ここでワイクは、

「PDCAの”P”=計画づくりにより多くの時間を割き、
”D”=実行にあまり時間を割かない。」

マネジャーの問題点を指摘しているようにも見えます。


「PDCAサイクル」が回っているのならば良いのですが、

計画を立てるのに時間をかけすぎ(プラン、プラン……)、

これを実行しないうちに、

上司や情勢が変わって方針が修正され(アクト……)、

全く別の計画を立てる(またプラン……)、

という「PPAPサイクル」に、はまっては、いませんか?


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みなさんがお勤めの会社、

そしてみなさんご自身は、果たしていかがでしょうか?

雪山から戻ってこられるような「センスメイキング」ができていますか?


鳩の会社は伝統的インフラ会社なので、

もちろん、「PPAPサイクル」にドはまりしています!

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このような記事などを通して、

「とにかく行動すること」の意義を、

少しでも社内、そして世間に広めたいなあと思う鳩でした。


まとめ

さて、ここまでの内容を振り返りましょう。

【センスメイキングとカール・ワイク】

・「センスメイキング」は、カール・ワイクによって紹介された概念
※カール・ワイクはセンスメイキングの発展に大きな寄与を果たしたが、
この概念の生みの親ではない
【センスメイキングとは】

・センスメイキング理論は、「腹落ち」の理論
・「組織のメンバーや周囲のステークホルダーが、
事象の意味について納得(腹落ち)し、
それを集約させるプロセスをとらえる理論」
【ハンガリー偵察部隊のアルプスでの演習】

・センスメイキングの真理を捉えた事例
・アルプスで遭難しかけた偵察隊が何とか戻ってきたが、参照していたのは、なんとピレネーの地図だった
【地図という「計画書」/実行の重要性】

・計画づくりにより多くの時間を割き、実行にあまり時間を割かない管理者に限って、計画づくりに多くの時間を費やしても何も改善されないと驚く
・「
PDCAサイクル」ならぬ「PPAPサイクル」に気をつけろ!


以上、センスメイキングの概論について触れました。

次回の記事では、センスメイキングのプロセスと、7つの要素について見ていきます。


お楽しみに。


to be continued...


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