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【クリティカル・シンキング/議論】⑤ 『イシューからはじめよ』『ストーリーとしての競争戦略』を読み解く!

こんにちは、白山鳩です! クルッポゥ!

マガジン『能ある鳩はMBA②  ビジネススキルで豆鉄砲』での、

ビジネススキルにまつわる情報の紹介です。

前回の記事はこちらです。↓↓↓


今回の記事では、これまでの記事で紹介してきた思考法と、

ビジネス本の名著である

『イシューからはじめよ』

『ストーリーとしての競争戦略』

との関連しているポイントを見ていきます。


1つの記事あたり、だいたい5分で読めますので、お気軽にスクロールしてみてください!

なお、全て無料で読めますが、

「良い記事だったなあ」

と思っていただけるようでしたら、記事代をいただけると励みになります!


『イシューからはじめよ』

さて、1冊目は安宅和人さんの『イシューからはじめよ』です。


問題解決をするときには、

悩んだり、とりあえずごちゃごちゃと施策を打ったりするのではなく

「イシュー」=「何に答えを出すべきなのか」

を発見するところから始める人こそ、「圧倒的に生産性が高い

という解説をしているのがこの本です。


『イシューからはじめよ』で説明されている問題解決の流れは、

次のような図で紹介されています。

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安宅和人(2010)『イシューからはじめよ』(英治出版)より


鳩が簡単にまとめると、

①「イシュー」=「問題」を発見し、
②「イシュー」がどんな「ストーリー」≒「構造」なのかの仮説を立て、
③その「ストーリー」≒「構造」の仮説を絵コンテに落とし込み、
④ストーリーを踏まえて全体を検証し、
⑤内容をまとめる

という流れになっています。


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各章に触れていくと、とても5分で読める記事には収まらないので、

ここでは概略に留めておきましょう。


「深い仮説」を導く「新しい構造」

さて、『イシューからはじめよ』では、

問題解決につながる、本質的な「よいイシュー」の条件がいくつか挙げられています。


表面的な浅いイシューに目標を定めてしまうと、

「その局面で答えを出す必要のないもの/答えを出すべきではないもの」

に注力してしまい、

「後にして考えれば、無理して解決する必要が無かった」

と後悔するような手戻りが発生する、というわけですね。


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抑えきれない悔しさを抱えるくらいなら、

「よいイシュー」に集中したいものです。


さて、『イシューからはじめよ』では、

「よいイシュー」の条件の1つを「深い仮説がある」こととしています。


そして、「深い仮説」を導くための方法の1つに、

新しい構造」で説明するという手法を紹介しています。


○「新しい構造」の4つのパターン

①共通性の発見
②関係性の発見
③グルーピングの発見
④ルールの発見

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安宅和人(2010)『イシューからはじめよ』(英治出版)より


この4つのパターンで「新しい構造」を発見すれば、

「深い仮説」を導くことができ、

「よいイシュー」へつなげられる、

というわけですね。


「新しい構造」と「非演繹的推論」「水平法」

さて、この「新しい構造」の4つのパターンは、

「科学的思考法」における「非演繹的推論」と通ずるところがあります。


「非演繹的推論」とは、「帰納法」などの、

「演繹法」と異なる科学的思考法のことでした。


この「非演繹的推論」のうち「帰納法」は、

『イシューからはじめよ』でいうところの、

ルールの発見」(=2つ以上の事象から普遍的な仕組みを発見する)

に近そうです。


また、「非演繹的推論」のうち「類似(アナロジー)」とは、

ある共通点を持つ2つは、別の共通点も持っているのでは

という考え方です。

これは、「関係性の発見」に近い考え方でしょう。


また、「失敗学」の中で紹介されている、

水平法」という発想にも似ています。

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畑村洋太郎(2020)『図解 使える失敗学大全』(KADOKAWA)より


ある学問で確立している方法と似たような手法を紹介しているビジネス書を見ると、

この本は信頼できるなあ」と鳩は感じます。


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『ストーリーとしての競争戦略』

続いて紹介するのは、楠木建さんの『ストーリーとしての競争戦略』です。


「イケてる」=優れた戦略には「ストーリー」がある

という売れっ子漫画家のような理論が本書の主張です。


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『ストーリーとしての競争戦略』では、

企業が競争優位性を獲得するまでに、次のような階層を要素として持っている、と指摘しています。

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楠木建(2010)『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)より


下からの階層から鳩なりに簡単に説明すると、こんな感じです。

「レベル0:外部環境の追い風」
「レベル1:業界の競争構造」
⇒環境分析
「レベル2:組織能力・ポジショニング」
戦略の決定
「レベル3:戦略ストーリー」
⇒戦略のもと、企業内の個別の要素を、1つのストーリーにつなげる
「レベル4:クリティカル・コア」
ストーリー全体に一貫性を与える要素。ストーリーの起承転結の「転」。
部分的には非合理だが、全体で見ると合理的な「賢者の盲点」をつく要素。


戦略ストーリーの具体例とクリティカル・コア

では、企業はどのような戦略ストーリーを描いているのか。

『ストーリーとしての競争戦略』ではさまざまな企業の事例が紹介されています。

ここではその中の1つ、スターバックスの戦略ストーリを見てみましょう。


スターバックスは、

「自宅」「会社」に続く「第3の場所」を顧客に提供する

というコンセプトを大切にしていることで有名です。


この「第3の場所」というコンセプトが差別化要因となり、

競争優位性へとつながって、スターバックスに長期的な利益をもたらしています。


では、この「第3の場所」というコンセプトはどのようにして実現されているのでしょうか。

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楠木建(2010)『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)より


「店舗の雰囲気」「出典と立地」「オペレーション形態」「スタッフ」「メニュー」などは、このままだとバラバラの構成要素です。

これらを1つに束ねて「第3の場所」というコンセプトへと結実させているのが、

「直営方式」という手法です。


フランチャイズ方式で費用を低減させるのが基本の喫茶店業界において、

直営方式は一見、費用が高くつく行為なので、周りはまねをしない選択肢です。


しかし、「店舗の雰囲気」「出典と立地」「オペレーション形態」「スタッフ」「メニュー」という構成要素をいずれも可能にするには、

直営方式」が必要であり、

これが「第3の場所」というコンセプトを可能にしているわけです。


このように、

それだけを見ると一見して非合理なのだけれども、
ストーリー全体の文脈では強力な合理性を持つ

という要素のことを、

『ストーリーとしての競争戦略』では、

「クリティカル・コア」と呼んでいます。


戦略ストーリーを「論証基本フォーム」で読み解く

さて、ここで思い出したいのが、

「根拠」→だから「結論」→なぜなら「論拠」

という「科学的思考法」における「論証基本フォーム」です。


「根拠」と「結論(=主張)」をつなぎつつ、

その関係性を補強するために、「論拠(=隠れた前提)」を並べるのが、

「論証基本フォーム」でした。


では、再度スターバックスの戦略ストーリーを見てみましょう。

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ここで、

各種「構成要素(目の前に見えている事象)」=「根拠」
「コンセプト」=「主張(結論)」

と考えてみましょう。

「店舗の雰囲気」「出典と立地」「スタッフ」「メニュー」といった「構成要素」=「根拠」が、

「第3の場所」という「コンセプト」=「主張(結論)」を可能にしている、

という構造になっていることがわかります。


しかし、このままでは、なぜこれが成立するのがよくわかりません。


そこには「直営方式」という「クリティカル・コア」、

すなわち「隠れた前提」が潜んでいる、と言えるのではないでしょうか?


「構成要素(目の前に見えている事象)」=「根拠」と、
「コンセプト」=「主張(結論)」を、
「クリティカル・コア」がつないでいる

という、「戦略ストーリー」+「論証基本フォーム」の発想があれば、

企業の戦略がより読み解きやすくなるのでは、と思う鳩です。


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戦略ストーリーの「賢者の盲点」を「思考展開図」で読み解く

さて、「クリティカル・コア」は、

それだけを見ると一見して非合理なのだけれども、
ストーリー全体の文脈では強力な合理性を持つ

とあるように、

一見して非合理だ」という説明がされています。


この「部分で見ると非合理だが、全体のストーリーで見ると合理的だ

というクリティカル・コアの特徴は、

賢者の盲点」とも呼ばれています。


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楠木建(2010)『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)より


ストーリー全体を俯瞰して考えなければ、

このような「賢者の盲点」を発想することはなかなか難しいでしょう。


そこでご紹介したいのが、前回の記事で出てきた「思考展開図」です。

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畑村洋太郎(2020)『図解 使える失敗学大全』(KADOKAWA)より


その名の通り、思考の展開を、次の①⇒⑥の構造でつなげたものが「思考展開図」です。

①要求機能 ≒ 企画テーマ
②機能構成 ≒ 課題の概要
③機能要素 ≒ 課題の要素
④機構要素 ≒ 課題に対応する具体的な解決策
⑤構造要素 ≒ 解決策の具体案
⑥全体構造 ≒ 全体計画


こうして流れを辿っていけば、

「賢者の盲点」である「クリティカル・コア」へ辿り着くことも可能になるのでは、

と鳩は考えるわけです。


というわけで、『ストーリーとしての競争戦略』に紹介されている要素を、

「思考展開図」でつなげてみました。

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※『ストーリーとしての競争戦略』を参考に作成


いかがでしょうか。

このようにしてつなげてみると、

「一見して非合理」と思われた「直営方式」と、

「第3の場所」というコンセプトとの間に、

つながりが生まれたように見えないでしょうか?


戦略ストーリー全体をつなげる際に、この「思考展開図」を利用するのは、

1つの方法だなと感じている鳩でした。


まとめ

それでは、ここまでの内容を振り返りましょう。

【『イシューからはじめよ』】

問題解決をするときには、
悩んだり、とりあえずごちゃごちゃと施策を打ったりするのではなく
「イシュー」=「何に答えを出すべきなのか」
を発見するところから始める人こそ、「圧倒的に生産性が高い
【「深い仮説」を導く「新しい構造」】

・「よいイシュー」の条件の1つは「深い仮説がある」こと
・「深い仮説」を導くための方法の1つが、「新しい構造


○「新しい構造」の4つのパターン
①共通性の発見
②関係性の発見
③グルーピングの発見
④ルールの発見
【「新しい構造」と「非演繹的推論」「水平法」】

「非演繹的推論」の「類似(アナロジー)」や、
「失敗学」の「水平法」といった発想は、
「新しい構造」によく似通っている。
【『ストーリーとしての競争戦略』】

「イケてる」=優れた戦略には「ストーリー」がある
【戦略ストーリーの具体例とクリティカル・コア】

(例)スターバックス
・コンセプト:「第3の場所」
・構成要素:「店舗の雰囲気」「出典と立地」「オペレーション形態」「スタッフ」「メニュー」
・クリティカル・コア:「直営方式」
【戦略ストーリーを「論証基本フォーム」で読み解く】

「構成要素
(目の前に見えている事象)」=「根拠」と、
「コンセプト」=「主張(結論)」を、
「クリティカル・コア」がつないでいる
【戦略ストーリーの「賢者の盲点」を「思考展開図」で読み解く】

思考展開図は、
「賢者の盲点」である「クリティカル・コア」へ辿り着くための
ヒントになりうる


さて、当マガジンの次回の記事では、

「ある出来事や経験に対する理解」に関する概念である、

「センスメイキング」

についてご紹介します。

お楽しみに。

to be continued...


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