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【感想】『具体⇄抽象トレーニング』を『トリーズの9画面法』で実践しよう!

こんにちは、白山鳩です! クルッポゥ!

マガジン『本を読んだら鳩も立つ』での本のご紹介です。


前回の記事はこちらです。↓↓↓


今回は、細谷功さんの『具体⇄抽象トレーニング』から、

「具体⇄抽象で捉える身の回りの問題点のメカニズム」

を見ていくとともに、

「具体⇄抽象」を実践するのにうってつけな「トリーズの9画面法」について見ていきます


1つの記事あたり、だいたい5分で読めますので、お気軽にスクロールしてみてください!


抽象化と具体化が発想を豊かにしギャップを解消する

さて、普段私たちはよく、

「もっと具体的に!」

「話が抽象的でわからないなあ……」

と、「具体は善」「抽象は悪」として語りがちです。


そんな私たちに「具体と抽象を行き来することの大切さ」を教えてくれるのが、この『具体⇄抽象トレーニング』です。

本書は、具体と抽象を往復すること
つまり抽象化と具体化によって発想を豊かにするとともに、
日ごろ私たちの身の回りで起こっているコミュニケーションギャップを解消することを目的としています。


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同書では、問題解決には3つのパターンがあるとし、次のような解説をしています。

①表面的な問題解決
人からの指示を聞いて、そのまま対応してしまうパターン
(例)顧客から「価格が高い」と言われたので、そのまま値下げする
②机上の問題解決
空虚な一般論のみで終わってしまうパターン
(例)「顧客ニーズの把握ができていないので適宜迅速に対応していく」といった精神論
③根本的問題解決
現実の事象を具体的に観察し、
一度抽象化して根本的課題を追求したのち、
解決策を実践に導くために再度具体化する

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この「具体⇒抽象⇒具体」という3番目の解決策が最も優れているからこれを目指そう、というのが同書の趣旨です。


そして、「具体⇄抽象」の思考の癖がつくと、身の回りのさまざまなできごとに潜む問題点が見えてきます。

ここでは、同書に挙げられている事例を見ていきましょう。


事例①「総論賛成各論反対」のメカニズム

世の中の企業では、一見賛成していたように見えた人たちが、いざ施策の実践の場面となると文句を言うという「総論賛成各論反対」の現象がしばしば見られます。

この現象が起きるのはなぜか。

総論=抽象的なビジョンを、各自の都合よく勝手に解釈していきます

なので、いざ各論=具体的な打ち手となると、浮かび上がった施策がバラバラで人によってイメージが異なってしまう、というわけですね。

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例えば、「世界平和の実現」という総論で賛成している人同士が、「ぜひ世界平和を達成しよう!」と意気投合していても、

実際の打ち手の場面では、
「紛争地域に武力介入して争いを解決する」なのか、
「世界から兵器を無くすよう活動する」なのかでは、
最後のゴールが一緒でも行動が180度変わってしまいます。


他人とコミュニケーションをするとき、ある単語の抽象度が高すぎると、同じ話題について話しているつもりが全く別のことを話していた、ということが起きる、というわけですね


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事例②「現場の意見を聞く」の難しさ

「リーダーたるもの現場の意見へ常に耳を傾けなければならない」

とはよく言ったものですが、本当の意味で現場の意見を聞くのはとても難しいと、同書では説かれています。


「現場」と一言で表現したときは抽象的ですが、

実際には個々の「現場」が存在しており、それぞれで意見が異なるはずだからです。

また、ある1つの現場でも、「現場代表」の1人の声が現場全体の総意とは限りません


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「あいつはバカだ」が馬脚を現している理由

「あいつはバカだ」と言うときは、たいていの場合、

「私にとってこれは常識だ」
「そんな当たり前のことを、こいつは理解していない」

ということを意味していると同書は説きます。


つまり、ここでのポイントは、

「自分で勝手に限定した特定の領域」で、自分より著しく劣っている人間を貶めている、ということです。

自分で勝手に限定した領域なわけですから、自分は決して「バカ」のカテゴリーに入ることはありません。


そして、それはつまり、「あいつはバカだ」を連呼する人間は、

「私は視野狭窄を起こしていることに気づいていない人間です」

と宣言しているに等しいと同書は指摘しています。


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昔、小学生の間で「バカって言ってるやつがバカなんだ」という言葉がありました(「おまえばバカだ」と言った相手に言い返す常套句としてです)。
実は大変「本質を突いた」含蓄のある言葉で、ぜひ大人のことわざにも採用したいところです

「あいつはバカだ」と言った瞬間、「自分は視野の狭いバカである」という馬脚を現すというわけですね。


抽象化とは、物事や人の性質の本質を都合よく取り上げる、主観的な行為とも言えます

抽象化の使い方を誤ると、このような「あいつはバカだ」という視野狭窄の決めつけに陥ってしまうので注意が必要です。


トリーズの9画面法

さて、ここまで、

「具体と抽象を行き来する意義」

「具体と抽象にまつわる事例」

を見てきました。


ここからは、「具体と抽象を行き来する」ために便利なツールをご紹介しましょう。

それは「トリーズの9画面法」と呼ばれるもので、解説本も出ています。

「旧ソ連の技術力を支えた最強のフレームワーク」とかいう宇宙にまで行けそうな売り文句ですが、内容はシンプルです。


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この9つのブロックに要素を当てはめていくことで、発想が手助けされる、というツールです。

この9つのブロックは同時に使用してもいいですし、

まずは「縦軸」「横軸」の各3ブロックのみで要素を考えても便利です。


ではここからは、「縦軸」「横軸」について具体的に見ていきましょう。


縦軸「上位システム⇄システム⇄下位システム」

縦軸の「上位システム⇄システム⇄下位システム」が抽象的といいますか、ちょっと意識高い感じがしてわかりにくいかもしれませんね。


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具体例を挙げると、

中段の「システム」が「車」、

上位システムが信号や道路などの「交通システム」、

下位システムは、「車のエンジン」などの「車を構成するシステム」

などが考えられます。


中段の「システム」が対象物、

上段の「上位システム」が対象物を取り巻くシステム、

下段の「下位システム」が対象物を構成するシステムや要素、

というわけですね。


この「上位システム⇄システム⇄下位システム」は、ほかの要素に置き換えてもオーケイです。

たとえば、対象物に「ヤモリ」として、

「壁にはりついて歩く⇄ヤモリ⇄足先の器官」と考えれば、

縦軸は「対象物の機能⇄対象物⇄機能を動かすシステム・要素」です。


このように、様々な縦軸の関係性を見ることができます。

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横軸「過去⇄現在⇄未来」と「観察⇄抽象⇄具体化」

一方、横軸の「過去⇄現在⇄未来」という軸はわかりやすいですね。

ここでも、縦軸と同様、さまざまな関係性を当てはめることができます。

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さて、ここで「事実の観察⇄抽象化⇄具体化」という関係性が出てきました。

そう、このトリーズの9画面法の箱を用意しておけば、ぱっと、

「事実の観察⇄抽象化⇄具体化」について考える癖付けができます。


例えば、同書では、次のような事例が紹介されていました。

①「板チョコ」「カレールウ」といった事実を観察し、

②そこから「適度な力で割れる商品は儲かる」という本質を抽象化し、

③この理論を、カッターの替え刃というアイデアへ具体化するという過程です。

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この横軸の3画面だけでも十分便利ですが、

ここへ先ほどの「上位システム⇄システム⇄下位システム」の縦軸を掛け合わせると、情報の「整理」→「発想」→「伝達」が一気通貫でできると、同書でも強調されています。


「具体⇄抽象トレーニング」の実践にぜひご活用ください。



さて、次回は『わかったつもり~読解力がつかない本当の原因~』から、

「わからない」→「わかった!」

と思っていたら、

「実は、わかったつもりだった……」

というのがなぜ起きるのかを見ていきます。

お楽しみに。

to be continued...


参考記事

同じく『具体⇄抽象トレーニング』を引用しながら、

「具体的な内容から論点を抽象化する力」の重要性について書いた記事です。

⇓ ⇓ ⇓


参考資料

・高木芳徳(2021)『トリーズの9画面法 問題解決・アイデア発想&伝達のための[科学的]思考支援ツール』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)


・細谷功(2020)『「具体⇔抽象」トレーニング 思考力が飛躍的にアップする29問』 (PHPビジネス新書)



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