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ポンコツ秘書、大物政治家に空の蕎麦ザルを出す ~第一印象の重要性~

派閥の闇、大流出中の本年。

その存在意義と功罪については
一旦横に置いといて。

私が秘書になった頃は、
竹下登先生(DAIGOさんのおじいちゃま)率いる経世会全盛期。
当時の最大派閥だけに
竹下派七奉行と言われた先生方をはじめ、
オーラある政治家がたくさん所属していらした。

私のボスも経世会所属議員。
月に一回、派閥事務所で開かれる昼食会には
当番制で各事務所からお手伝いとして女性秘書が派遣される。
主なお仕事は、先生方への昼食配膳とお茶だしである。
(昭和っぽい…)

「政治家イコール贅沢三昧」というイメージとは違い、
一部を除き、ほとんどの政治家は意外に質素である。
私のボスなんて、昼食は私のつくる懐かしきカップうどん「ごんぶと」・愛妻弁当・議員会館売店のパン・喫茶のサンドイッチのローテーション。
鉛筆は短くなっても二本を接着剤とセロハンテープでつなぎあわせて使っていた(それはそれでどうかと思う…)。

当時の経世会の派閥昼食会で出ていた先生方のお食事も、デリバリー弁当
(昔よく一般家庭のポストにもチラシが投函されていたごく普通の)、
もしくはざる蕎麦の二択構成だった 。

お弁当は予めテーブルに配膳(置くだけ)し、
健康上の都合でお蕎麦を所望される先生は
テーブルになにも置いてない席にご自分で着席。
私たち秘書が頃合い見計らってお蕎麦をお持ちする。

ある日のこと。
いちばんに蕎麦席に着席されたのは、
当時は次期総理の呼び声も高かった大物・O先生。
私はすかさず、お蕎麦を手に静々と先生のテーブルへ。

「失礼いたします。」
テーブルに、丁寧にお蕎麦とつゆの入った蕎麦猪口を置く。
完璧。
軽く一礼をして下がろうとした、そのとき。

「あっ、君 ちょっと…!」
O先生に呼びとめられる。
振り向いた私に
「これ、なに…???」と
O先生が指差す先にあったのは
空の蕎麦ざる…

(※補足:当時の私にはプライベートでお蕎麦の出前をとった経験がなく、
 大量に積み重ねてあったお蕎麦の、
 いちばん上に乾燥防止用に載せてあった空の蕎麦ざるごと
 重鎮O先生にお出ししていた模様。
 ポンコツの本領発揮!)

ほんの一瞬 考えた私は、
小首を傾げ、にっこり笑ってこう答えた。

「蓋ですぅーー」

・・・。

O先生は、ひとこと
「そう。ありがとう」、とおっしゃった。

さすが、大物。
器が違う。
ポンコツ秘書にも寛大だ。

党本部の会議の受付で
「どんなにベテランの先生でも必ず名刺を預かる」という
決まり通りに「お名刺をお預かりしてもよろしいでしょうか」と言って
ある新人議員(当時)の先生に
「俺の名前も知らないなんて、お前どこの秘書だ!」と
物凄い剣幕で怒鳴られたことだってあるのに。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」
このことばをリアルに感じた出来事である。

(ちなみに、私はまだ大物ではないので頭は垂れない。)

そして
世間の評価がどうであろうと
政治的な考え方には共感できなくても
私のなかでは、O先生はずっと「いい人」だ。
おそらく未来永劫。

一度インプットされた強烈なイメージは
そうそう変わらない。

「1つのネガティブなイメージを挽回するためには、
 5つのポジティブな情報が必要。」
というデータもある。
逆を言えば、
心に残るほどの好印象はその後のイメージ低下も強力に防ぐということ。
ビジネスや接客においても同様に
第一印象のよい人は、ミスをしてもクレームになりにくい。

最初にお客様の心をグッと掴めれば、
ぜったいにあとがラク。

第一印象、ほんとうに大事!






#永田町 #秘書 #第一印象 #接客接遇  






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