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意外と分かるパラドックス#09【ラプラスの悪魔のパラドックス】

 皆さんは昨日の晩御飯は何を食べましたか?
もし、昨日の15:00まで時間も記憶も巻き戻ったとしたら、あなたの晩御飯のメニューは何になるでしょう?
 記憶も巻き戻っているので、全く同じ考え方をして、また同じメニューになるのでしょうか?
もしくは、気まぐれで違うメニューになってしまうのでしょうか?
 
という事で、今回のテーマは

です。
 
 皆さんは、「これから先の未来に何が起きるのか、それらが宇宙の誕生とともに決まっている」と言われたらどう思いますか?
 誰と出会うか、何をするのか、それらがあなたの意思とは関係なく全て決まっていたとしたらどう思いますか?まぁ、大体の人は有り得ないと思うはずです。
 
 ここで、冒頭の晩御飯の話に戻るのですが、あなたがそのメニューにした理由は何でしょう?
麵類が良かったから?ガッツリ肉が食べたかったから?作るのが簡単だったから?安かったから?
 恐らく、記憶も考えも同じ状態で昨日に戻るので、同じメニューになると考えられます。
これはあなたの過去が関係しているはずです。「最近野菜食べてないな」「今日は作るの面倒だな」といったような、何かしらの理由があるはずなのです。
 そして、その過去も「最近は野菜が高いな」「最近仕事が忙しいな」と言ったような更に過去に理由が存在しているはずです。ちなみに「なんとなく」や「気まぐれ」もその人の小さな経験の積み重ねによって発生した立派な理由の一つと成り得るのです。
 このことをずっとずっと過去まで辿っていくと、「宇宙が誕生したから」という一つの理由に集約されます。つまり、宇宙の誕生と同時にそれらは全て決まっていたのではないでしょうか?
 この理論を決定論と言います。
加えて、決定論に従えば原理的に未来予知ができることになります。
 例えば、物理学などで、銃弾の落ちる位置の計算や、惑星の動き方などを予測することができる
ように、簡単な未来予測なら、必要な情報と自然法則さえ知っていれば可能であるのです。この理論なら、ゆくゆくは宇宙全ての動きや変化を計算できる=必然の現象である。と結論付けられます。
 
 そこで考えられたのが、「ラプラスの悪魔」です。この悪魔の性質は以下の通りで、
・宇宙の全ての原子、分子といった粒子の正確な位置と動きを理解している
・全ての物理法則を理解している
という特徴をもった悪魔が存在していれば、原理的には未来の全てが予測可能になるわけです。
 ここでは仮に、その悪魔の正体が以上の2つのデータとその計算能力をもった全知のスーパーコンピュータとしましょう。
 そんなものが存在していたら、50%-50%の確率としてよく例に挙げられるコイントスなんかは、コインをはじいた時の指の力や速度、高度などを使って計算すれば、50%-50%ではなく、表か裏かが100%確定してしまうことになります。
 人間の考え方であっても、人の脳を物理的に見れば、膨大な数の神経などによって構成されているものに過ぎないので、このコンピュータにかかれば、個人の脳を再現し、そこからどんな行動をするのか=未来の動きを予知することが可能なのです。
 
 しかし、ここからがパラドックスなんです。
 仮に、このスーパーコンピュータに「自分が存在している未来を予測したら壊れる」という機能を付けてみましょう。もちろん、未来に自分が存在していないと予測したなら壊れません。加えて、
もう二度とこんな最高傑作なスーパーコンピュータは作れないとしましょう。
 すると、このコンピュータは未来とは逆の結果になってしまうことになります。
こうなると、どんな予測をしても成り立たなくなってしまいます。
「未来を知る」ということは「未来を変えられる」という事となり、決定論は崩壊してしまいます。
 
 このパラドックスの解決法としては、前提条件が間違っていると考えることでしょう。
つまり、未来を正確には知ることができない=ラプラスの悪魔は存在できない。となれば、
パラドックスは起きません。
 未来を正確に知ることができない理由として、「バタフライエフェクト」というものがあります。
バタフライエフェクトは、アメリカの気象学者が見つけました。
 この気象学者が、天気予報のプログラムを使っていて「0.506127」と数値を入れるべきところ、
四捨五入して、「0.506」としてプログラムに計算させると、0.506127と0.506の場合では、予想
される結果が全然違うことになった。
 0.000127という小さな原因でも、全然違う結果が得られることから、「アフリカでチョウチョが羽ばたいたことが原因で、数か月後にはアメリカで台風が起こるかもしれない」と講演しました。
 天気予報で、遠い先の予報ほど変わりやすく外れやすいのは、この効果だったりします。 
 
 更に加えて、そもそもラプラスのコンピュータ自体が存在できないとも言われているのです。
というのも、コンピュータというからにはメモリに全ての情報が入っていますが、そのメモリも、
原子を特定の形に組み合わせてできたものなので、コンピュータ自身がそのメモリの事を知ろうとした場合、更なるメモリが必要となり、更に更にそのメモリを知るためのメモリが必要に...。
 つまり、宇宙の全てを知っているのに、宇宙内にある自身の情報を知ることが出来ないという矛盾に陥ります。
 これがどういうことかというと、コンピュータの予測した未来には「自分」がいない=正確な未来予想ではない。という事になるのです。
 
 
最後に、
宝くじの当たりの未来予測ができても、その結果を知っている自分が存在していると宝くじは当たらない可能性が出てきてしまいますよね!?
やっぱり、宝くじは夢を買うものなんだ。
以上です。