mime LONDONで考える、フィジカルシアターのドラマトゥルギー

mime LONDONでいっぱいフィジカルシアターがみれて最高に幸せ!


コロナが無ければ、これだけたくさんの海外作品をオンライン経由でシェアできることなんてなかっただろうと思うと、逆にこれはチャンスかもと思う。

ので。

そこで見た作品たちをきっかけにして、フィジカルシアターのドラマトゥルギーって、どんなんがあるかなーというのを考えてみました。

わかりやすくいうと、
「どうやって作ってんのかなー」
「なんで面白いのかなー」
という僕の空想です。はい。

まず、大元として、あるルールをつかって遊ぶこと、が構造として共通点にあるものとして考えてます。ドラマ=戯曲というテキストの代わりに、「遊びのルール」がそこにあるものと考えてます。これは僕の独断です。

そのうえで3タイプに分けて考えてみました。

①「アフォーダンスが遊び道具」タイプ
ex)フィリップ・ジャンティ、ディミトリス・パパイオアヌーetc...
mime LONDONでは
COMPAGNIE PHILIPPE GENTY 3 Knocks on the Door をみてね!

②「人間関係が遊び道具」タイプ
ex)ピナ・バウシュ、ピーピング・トムetc...
mime LONDONでは
GANDINI JUGGLING Smashed: Special Edition  をみてね!


③「装置が遊び道具」タイプ
ex)ヨアン・ブルジョア、オーレリアン・ボウリーetc...
mime LONDONでは
COMPAGNIE 111 / AURÉLIEN BORY Sans Objet をみてね!


まず、それぞれ見る側の視点で何が起こるかというと…

①「アフォーダンスが遊び道具」タイプ
そのモノ(人体も含む)が現実と異なる機能や力を持って現れてくるため、論理とか意味が脱臼する。

②「人間関係が遊び道具」タイプ
現実が前提としている人間関係の常識・規範・期待がもて遊ばれることで、ユーモアによる距離ができる。

③「装置が遊び道具」タイプ
人間が装置に「巻き込まれる」ことで、人間中心主義的な世界観が転倒する。

どういうやり方で観客の「世界の見方を変える」か、ということが異なります。


では、つくる側の視点でどこからスタートしているか、どういう遊びからシーンを作りはじめているか(注:僕の妄想です)というと…

①「アフォーダンスが遊び道具」タイプ
そのモノ(人体も含む)が持つアフォーダンスをずらす、という遊び。
そもそも無茶なことをするので、「言い張る」あるいは「タネを仕掛ける」というやり口で遊ぶ事になる。そのため、人形劇/オブジェクトシアターであったり、マジックなどが手段として活きてくる。

②「人間関係が遊び道具」タイプ
衣裳や舞台装置によって、あるシチュエーションやキャラクターが暗示される。
それは物語の説明としてではなく、そこにある常識や前提や期待=社会的に暗黙の内に成立しているゲームのルールを示している。
そのルールにそってステータスを遂行する、あるいはそれを茶化す、反抗する、強調する、といった遊び方。

ステータスを遂行する手段はピナ・バウシュやピーピング・トムではダンス的なものだけど、Gandini Jugglingではジャグリングでそれをやって見せた。
ちなみにアヴィニョン演劇祭でみたCirkVOSTのhurt me tenderでは、空中ブランコでそれがやってのけられていた。

③「装置が遊び道具」タイプ
まず人間の身体が弄ばれるような遊具を用意する。それで遊ぶ。以上。
その人間と装置が、ある関係を持って見えるよう、ある風景に見えるよう仕立てる工夫はする。


③が、現代サーカスによって初めて可能になったスタイルのフィジカルシアターだと僕は考えてます。

最終的にあるイメージに仕立てていくので①にも近いのですが、大きな違いは、相対的な人間の小ささです。
①の場合は、ある種のマジックによって人間が翻弄されているように見えるのですが、③においては、滑り台に落としたビー玉がそのまま転がり落ちていくしかないように、ある種の物理法則に支配されるひとつオブジェクトとして人間が存在します。

②との違いもあります。

②においては、人間関係としての規範がルールの根っこにあります。
ただ、③においては人間からもう少し離れた目線に立って、ただの生物として、あるいはただの物体としてそこに存在する、というやり方です。③の場合、そもそも、能動的に何かをトライできる、という人間観には立っていないような気もします。

①「アフォーダンスが遊び道具」タイプ
 小さいモノを操る(操れない)ヒト
      ↓
②「人間関係が遊び道具」タイプ
 同じヒトを操る(操れない)ヒト
      ↓
③「装置が遊び道具」タイプ
大きいモノに操られる(操られない)ヒト

というスケールの変化もあるかもしれません。

さて、ちょっと机上の空論になってきた気がするので、そろそろこのへんでやめときます。自分にとっての整理ができたのでよしとする。

なんだかんだここであげたやつ、全部好きなんです。
london international mime festival、マジで面白いからみんな見てね!
ぶっちゃけ、自分がピンとくるやつ以外は無視したっていいんです。
僕も、最初の2分で興味をそそられないやつはすぐ止めてます。

こんなチャンスなかなか無いよ!
一緒にフィジカルシアター沼にハマろう!

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