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豆腐にたすけられる

週に1回の割でたのまれる実家の母の買いものでは、基本的なアイテムはほぼきまっている。卵、牛乳2本、豆腐、バナナ、キウイあたりがかならずはいる。もずく、納豆、竹輪、蒲鉾も、レギュラーだ。薄揚げ、肉、魚は、必要におうじてリクエストされる。乾物や調味料も、ときにはリストにかいてある。馬鈴薯や薩摩芋、人参、玉葱などの重量野菜も、たりなくなれば買いたす。米、クラッカー、チョコレートなどの常備品も同様だ。野菜が比較的すくないのは家庭菜園があるからだ。牛乳やフルーツがおおいのは、毎日ヨーグルトを自作しているからだ。
こうやってならべてみると、大豆原料の加工品がけっこうあることがわかる。豆腐、油揚げ、納豆だ。もちろん、調味料には味噌、醤油もある。ときには乾燥大豆を買って五目豆をたいたり、黒豆をあまくたいたりもする。大豆は日本人の食卓で重要な役割をはたす。そのなかでもとくにユーティリティ・プレーヤーとして活躍するのが豆腐だ。
これは江戸時代からそういうことであったようだ。料理本の元祖であり古典的なベストセラーである「豆腐百珍」をよめば、主役から脇役まで、豆腐はさまざまな場面でもちいられることがわかる。もちろん、薄揚げや厚揚げのようなそれだけで料理といっていいかどうか疑問なものもあるし、百にこだわってむりやりふやしたようなところもある。それにしても、豆腐料理は多様だ。江戸時代以来のものだけでなく、近年になってできたレシピも数おおい。たとえば私は、煎り豆腐をチーズでしあげたりするし、白和えはつくらなくても豆腐サラダはつくる。洋風にしてもそれなりなのが豆腐だ。

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母も、「豆腐と卵があればなんとかなるから」と、買い物がおもいつかないときにはとりあえずこの2品はリストにあげる。くわしくはしらないが、栄養学的にもそれでいいのだろう。

ひとり暮らしだと、豆腐1丁はおおい。半分にきって冷奴でたべたら、のこりの半分は水をはった容器にいれて冷蔵庫にしまうか、味噌漬けにする。あるいは冷凍庫にいれる。冷蔵庫の豆腐ははやめにつかってしまいたいが、味噌漬けはけっこうながくもつし、冷凍庫のほうはつかいたいときまでおいておけばいい。冷凍した豆腐は、解凍してしぼってつかう。凍み豆腐というやつで、高野豆腐まではいかないが煮物にするとよく味がしみこむ。

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たしかに豆腐にはたすけられる。こまったときには豆腐がないか、冷蔵庫をさがしてしまう。あれば、どうにかかたちがつけられるのだ。

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