見出し画像

00年代のトムヤムクン

実家からもちかえったふるい食材、おそらくこれがきわめつけというのが、2006年1月に賞味期限がきれたトムヤムクンだ。さすがにこれはくえるのか? かなりのチャレンジだった。過去形でかいているということは、たべたのだけれど、はたしてそれがどの程度、劣化していたのかはわからない。というのも、私はトムヤムクンをたべたことがないからだ。
まあ、長く生きてるから、皆無ということはないのかもしれない。ひょっとしたらどこか、友だちの家とかでたべさせてもらったこともあるかもしれない。ただ、意識して「これがトムヤムクンだ」とおもったことはあんまりないし、すくなくとも記憶にはほぼない。自分からどこかで注文したこともないはずだ。
友人には、タイにいりびたっていたひとなんかも、ひとりならずいる。なんならウチの息子だって、中学生のときにタイの農村にホームステイしてる。だから、有名なトムヤムクンぐらいしらないわけはないおもうのだけれど、やっぱりそれがどんな料理だかおもいだせない。スープっぽいやつだということはわかる。母親とスーパーに買いものにいくと、スープのコーナーにそれらしきものがある。その程度の知識でしかない。
いままでかんがえたこともなかったけれど、そういえば、ウチの母親、和洋中とあちこちの料理に手を出してきた割には、エスニック系の料理はほぼやらない。やはり子どものころにたべなかったものは、おとなになってからでもあえて手をだそうとはおもわないのだろう。私もエスニック系のレパートリーはない。たぶん、そういうこともあって、この「トムヤムクン」、ながく母のパントリーでねむっていたのだろう。当人がかったとはあまりおもえないので、だれか親戚の女性がてみやげにもってきたんじゃなかろうか。そのわりに、阪急百貨店のシールがはってあるけれど。

ともかくも、これをすてるか、たべるか、すこしなやんで、へんな味がしたらすてようと、とりあえず調理にかかった。ただ、すてるかもしれないものに、あたらしくエビをかってくる気にはなれなかった。冷凍庫に半端な豚肉があったので、エビのかわりになってもらうことにする。しめじはちょうどあったから、犠牲になってもらおう。

袋をあけると、さっそく不穏なことがわかる。ナンプラーの小袋がすでに崩壊していたらしく、スパイスをいれるために添付されているふくろがガチガチにかたまってしまっている。しかたないので、これはすてて、茶こし用のふくろをつかう。ちいさいので2個にわける。さっそくのトラブルだ。さらにトムヤムペーストが完全に固形化していて、とけない。もともとそういうものかどうかさえわからないのだけれど、ちいさなつぶがうかんだ不穏なスープになる。ナンプラーの小袋は2つあって1つは破損していなかったのだけれど、こちらのほうも内部で固形化がはじまっている。どうにもあやしいので規定以上に加熱時間をとるが、においをかいでも、ちょっとなめてもとくにわるくなっているようすはない。もっとも、オリジナルをしらないのだから、ほんとうはよくわからない。それでもたべられそうだときめて、豚肉としめじをほうりこむ。

しかし、想像以上におおい。ふくろにも2〜3人前とかいてあるのだから当然なのだけれど、たっぷりある。しっかりいただいたが、その後、5時間たってもまだ腹痛その他の症状は出ていないから、まずはだいじょうぶだったのだろう。

ただ、スパイスはおもいのほかにきいていた。ふだんあまりスパイス系のものをたべないせいか、口がおちつかない。そこで、プーアル茶をいれることにした。このプーアル茶も、母のパントリーから回収してきたもので、10年越しの賞味期限切れだ。そこそこおいしかったけど、これで飲みきりになる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?