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ちりめん菜飯

実家の冷蔵庫を検分していたら、冷凍庫から半端につかったちりめんじゃこが出てきた。これにはおぼえがある。1年すこしまえ、私がかったものだからだ。
コロナの時期、母にはなるべくひとのおおい場所には出ないように気をつけてもらっていた。実家の近所にイオンがあるのだけれど、なるべくそこにもいかない。基本的にかいものは私がやっていた。スーパーのすいている時間をみはからって、必要なものをかけあしでかう。母にリストをつくってもらうこともおおかったがだいたいかうものはきまっていた。ちりめんじゃこは、そのなかでも定番アイテムだった。
なぜちりめんじゃこをさかんにたべていたのかといえば、それはその半年前に母が骨折していたからだ。老人によくあることで、ころんだ拍子に骨がくだける。骨粗鬆症というやつだ。くだけてからでは泥縄なのだけれど、「骨をじょうぶにしましょう」ということで、医師が骨粗鬆症対策をはじめていた。カルシウムの吸収を促進する薬が出ている。ただ、吸収を促進するといってもカルシウムをたべなければ吸収するものがない。なので、カルシウムがたっぷりふくまれるちりめんじゃこということになったわけだ。
私のすむ神戸は、瀬戸内の海産物がわりとよく出まわる。ときにちりめんじゃこがやすかったりもする。このときも、破格の安値だった。たぶん通常の三分の一以下。なので、たくさんたべてもらおうとかっていった。はっきりと記憶している。

だが、この骨粗鬆症治療が実は裏目に出ていた。それがわかったのはこのちりめんじゃこをかってから1か月ほど後のことだ。高カルシウム血症、つまり、血液中にカルシウムが異常に増加してしまっていた。なんのことはない、薬の作用によって吸収したカルシウムを骨につくるだけの代謝能力がなかったわけだ。結果として血液の異常だけを発生させることになった。投薬ミスといっていいだろう。
そういったドサクサに紛れて、このちりめんじゃこは冷凍庫にのこってしまっていたのだろう。いつまでもおいておくわけにはいかないということで、今日、もちかえった。なに、しっかり加熱すればくえるだろう。
たまたま、大根がやすかった。申しわけ程度にだけれど、葉っぱがついている。この葉っぱを菜飯に炊きこんで、そこにちりめんじゃこをいれればいいとおもいついた。おもいつきだけでつくったので、ずいぶんとうす味の菜飯になった。まあ、それはそれでかまわない。これでひとつ、また賞味期限切れの食品がかたづいたのだから。

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