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伝来の韮
いまそだてている野菜のなかでもっとも古くからつないでいるのは、韮だろう。この韮は、もともと結婚前に田舎の家にすんだとき、庭のかたすみに雑草のようにはえていたのがスタートだったとおもう。ただ、自生していた韮はやたらとかたかったので、たねをかってきてまきなおしたような記憶もある。そのあたりはけっこうぼんやりしている。結婚して古民家から地方都市のアパートにひっこしたあと、韮はアパートのちかくの河川敷の畑に移植した。そのアパートからいまの家にいたるまでに途中、いったん畑がとぎれている。だからそのあいだ、韮がどうなっていたのかよくわからない。たねがとれる野菜だから、たねでつないだのかもしれない。なんにしても、家をたててすぐに庭のかたすみを菜園にした最初から、韮はあった。
なにもそこまで韮にこだわりがあったわけではない。畑のふちはどうせ雑草がはえるから、それならたべられる雑草として韮をはやしておこうとおもった。目論見はあたって、以後、コンクリートの擁壁のはしにそって、韮が根づいている。
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そういう事情の韮だから、はえていてもそんなにしょっちゅうたべない。もともと好物というわけでもない。ほかにたべるものがみつからないときに、「そういえば韮があったな」とつんでくる。そろそろアスパラガスも時期がおわりそうだし、夏野菜はまだ出ない。今日はそういう日だった。
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冷蔵庫をみると豚肉があったから、ちょうど韮との炒めものにいい。あんまりつくらないレシピだから味つけをどうしようかとしらべたら、醤油や酒で味つけするようだ。それならばとおもいついたのは、母のパントリーから回収してきた「まぐろ丼のたれ」という製品だ。
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例によって賞味期限は切れている。その原材料を見てみると、基本は醤油や酒だから、これでいいんだろう。どっちみち、加熱せずにたべられるともおもわない。というか、加熱すればまあだいじょうぶだろう。ということで、即席に豚肉の韮炒めができた。ちょっと味つけが濃すぎた気がするが、まあおいしかった。
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