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「成瀬は天下を取りにいく」感想

本屋大賞を受賞したことと、次作「成瀬は信じた道をいく」をこれから読むので復習の意味も含めて「成瀬は天下を取りにいく」を読んだのでその感想を。

成瀬は本当に気持ちいいように自分の好きなことをやっていく。他人にどう見られようが、そんなのお構いなし。本当に羨ましいくらいに自分のやりたいことをどんどんやっていく。
西武デパートが閉編する時にローカルテレビの中継に映るために毎日通ったり、M-1に出たり、自分の髪の毛を使って実験をしたり、その実行力たるやもうこれでもかというくらい見せつけられてしまいました。
飄々とそれらのことをやっていく姿が成瀬の周りにいる人物の目から語られているのを読み進めていくと本当に孤高の存在なのかとも思わされてしまいました。成瀬は完全無欠なヒロインなのかと思いきや、最後の成瀬の視点から描かれた章になるとそうではなかったということが描かれます。他人のことを考えないように見えていたその姿は、他人のことを考えてはいるけれど、相手とうまくコミュニケーションが出来ない故にコミュニケーションを取らずに自分だけで答えを出しているからそう見えるということだったということが分かります。そして、ずっと変わらなくそばにいると思っていた島崎(ほとんどの章に出てくる成瀬の幼馴染)が地元滋賀から大学進学を機に東京に引っ越してしまうということで成瀬の世界はゆっくりと不安定なものになっていくと感じる成瀬。完璧ではなかった成瀬、それでも最後はハッピーな形(?)で物語が終わっていくのですが、本当に成瀬にはこのまま信じた道を生きていって欲しい、そして幸せになって欲しいと感じました。
話の中にちょくちょく出てくる、本当に荒唐無稽なことではあるけれど、200歳まで生きるとか、西武大津店の跡地に自分がデパートを建てると成瀬が言えば、できてしまうのではと思わせるくらいのパワーを成瀬から感じてしまうから不思議。
最終的には完璧ではないことは分かったけど成瀬ならなんでも出来てしまうのではないか、タイトルではないけど本当に天下取れちゃうのではないかという、何かわからないパワーを成瀬から感じ、読んでいくうちにそのパワーを成瀬からもらっているように感じてしまえる物語でした。
別に元気がないから読みましょうとかそういうわけではないですが、本当に不思議なパワーを読んでいるともらえます。

そんな成瀬の次回作「成瀬は信じた道をいく」では成瀬がどうなっているのか、成瀬が何をするのかただただ楽しみでしょうがないです。


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