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修習予定者・修習生(特に弁護士志望)にオススメする書籍

はじめに

76期のえるえぬです。

修習予定者・修習生(特に弁護士志望)にオススメの書籍を、読むとよい時期別・オススメ度順に紹介します。
読むとよい時期は「修習開始前」と「修習中」の2つに分けています。もっとも、修習開始前に読むとよい本として挙げたものは、修習中にも適宜立ち返ることとなると思います。
こちらのエントリで紹介する書籍は、修習を充実させるためにどのくらいオススメできるかという基準で選んでいます。そのため、必ずしも二回試験に直結するわけではないものも挙げています(二回試験との関係で必読である白表紙については、その旨付記しています)。

〈オススメ度★★★〉は、必ず読むべきくらいに考えている本です。
〈オススメ度★★〉は、とりあえず持っておくとよい(持っていればいつか読む機会が来るはず)くらいに考えている本です。
〈オススメ度★〉は、気になったら読むとよいくらいに考えている本です。
なお、無数の〈オススメ度★未満〉の本もあるので、オススメ度★も十二分にオススメです。

それぞれの項の中での紹介順は、大分類として、〈白表紙〉→〈市販本〉の順番になっています。
小分類として、テーマごとに〈「修習」や「法曹」といった広いテーマ〉→〈民事系〉→〈刑事系〉の順番になっています。

なお、重要な点ですが、二回試験との関係では、あらゆる市販本・先輩のお言葉よりも、白表紙を優先すべきです。さらに、白表紙よりも、集合修習中の教官による講義の理解と復習を最優先すべきです。

書籍以外で、修習中に役に立ったアイテムについてはこちらのエントリで紹介しております。

修習開始前に読むとよい本

オススメ度★★★

・白表紙『司法修習ハンドブック』
欠席関係の記述及び司法修習生指導要綱は必読です。
修習における事務的なことについて分からないことがあれば、ハンドブックを読めば大抵のことは解決します。


・白表紙『新問題要件事実』〈二回試験との関係で必読(民裁・民弁)〉
二回試験との関係では、要件事実は新問研レベルで足りると考えています。
修習中の起案では、大島本でも対応できないレベルの要件事実が出題されることもあるため、基本を徹底的におさえていることが何よりも重要になります。


・白表紙『事例で考える民事事実認定』〈二回試験との関係で必読(民裁)〉
民事事実認定の4類型は、覚えておかないと書けません。
ジレカンを読んでまとめノートを作っておくと、二回試験前に見直しやすくなって便利なのでオススメです。


・白表紙『刑事事実認定ガイド』〈二回試験との関係で必読(刑裁)〉
個人的にはあまり好きではない白表紙ですが、事実認定については作法を知らないと書けないので、読んでおく必要があります。


・白表紙『検察終局処分起案の考え方』〈二回試験との関係で必読(検察)〉
76期では検察教官から「令和元年版(当時の最新版)の『終局処分起案の考え方』の記述は古い」などと言われ、修習生を混乱に陥れた教材です。
しかし、作法を知らないと起案が書けないため、読んでおく必要はあります。


・木山泰嗣『新・センスのよい法律文章の書き方』(中央経済社)

あらゆる書面に共通する、文章の書き方そのものを学ぶことができます。
法律文書作成の総論が分かる書籍です。


・田中豊『法律文書作成の基本』(日本評論社)

訴状・答弁書・判決書等の分類ごとに、書面・文書の作成方法について徹底的に学ぶことができます。
法律文書作成の各論(各論中の総則)が分かる書籍です。


オススメ度★★

・伊藤健ほか『司法試験に受かったら』(現代人文社)

1年間の修習の流れがストーリー仕立てで紹介されています。この本を読めば、修習で何をやるかがざっくり分かります。
なお、この本で紹介されている”二回試験対策”は内容がかなり古く、読むとかえって有害となり得る記述もあるので、その点については注意が必要です。
繰り返しになりますが、最大の二回試験対策は、集合修習における講義の理解と復習です。


・村田渉、山野目章夫編著『要件事実論30講』(弘文堂)

第1部〈要件事実論の基礎〉で要件事実の総論を学ぶことができます。
要件事実総論を理解しておくと、細かい暗記作業も捗ります。
純粋に、読みものとしても面白い本です。


・土屋文昭、林道晴編著『ステップアップ民事事実認定』(有斐閣)

第2部〈演習問題編〉で民事事実認定のパターンを掴むことができます。
第2部で紹介されている類型を理解しておくと、修習中の民事系の事実認定がグンと書きやすくなります。


オススメ度★

・中村直人、山田和彦『弁護士になった「その先」のこと。』(商事法務)

弁護修習で何を見て、何を学ぶべきかが分かります。
弁護士志望であれば、遅くとも弁護修習前には読んでおくべきです。


・松尾剛行『キャリアデザインのための企業法務入門』(有斐閣)

修習前の時間に余裕がある時期に、自身のキャリアについて考えておくのは有益です。
漠然と企業法務就活をした人、又はする予定の人は、修習前に「企業法務とは何か」について今一度考えておくのがよいと思います。


修習中に読むとよい本

オススメ度★★★

・白表紙『事実摘示記載例集』〈二回試験との関係で必読(民裁)〉
民裁起案の主張整理は、要件事実の記載方法を覚えておかないと書けません。
二回試験を受けるにあたって、この本の記述は暗記している必要があります。


・白表紙『民事弁護の手引き』
原点にして頂点の白表紙です。
民事弁護について分からないことがあったら、まずはこの手引きを読みましょう。


・白表紙『民事弁護における立証活動』
原点にして頂点の白表紙(その2)です。
弁護修習・民裁修習で証拠まわりについて分からないことがあったら、この手引きを読みましょう。


・白表紙『プロシーディングス刑事裁判』
刑事裁判の手続きが分かります。
なお、プラクティス刑事裁判にしか書かれていない事項もあるため注意が必要です。


・白表紙『刑事弁護の手引き』〈二回試験との関係で必読(刑弁)〉
刑事弁護起案の書き方が分かります。
76期では刑事弁護の事前課題として起案をする必要がなかったため、修習が始まってから読めば大丈夫でした。


・白表紙『取調べ対応・弁護実践マニュアル』
表紙が白くない白表紙シリーズです。
刑事弁護の実践について、捜査段階から公判段階まで幅広く・丁寧に書かれています。


・白表紙『接見交通権マニュアル』
表紙が白くない白表紙シリーズです。
接見においてどうすればよいか悩ましい点について、Q&A形式で詳しく説明されています。


・白表紙『ハンドブック 身体拘束からの解放』
表紙が白くない白表紙シリーズです。
検察庁や裁判所に提出するための書式がたくさん載っていて便利です。


・圓道至剛『企業法務のための民事訴訟の実務解説』(第一法規)

民事訴訟の手続きについてのバイブルです。
手続き関係で分からないことがあれば、まずはこの本を読みましょう。

志望に関わらず、修習生は全員必携です。


・京野哲也『クロスレファレンス民事実務講義』(ぎょうせい)

弁護修習中に座右に置いておくべき本です。
民事弁護実務について非常に丁寧に書かれています。

弁護士志望の修習生は必携です。


・東京弁護士会法友全期会刑事弁護研究会編『新・刑事弁護マニュアル』(ぎょうせい)

弁護修習中に座右に置いておくべき本です。
刑事弁護実務について網羅的かつ丁寧に書かれています。
刑事弁護について分からないことがあったときにはこの本を読めば何らかのヒントが得られると思います。

弁護士志望の修習生は必携です。


『刑事弁護ビギナーズ』季刊刑事弁護増刊(現代人文社)

多くの修習生が参考にしている本です。
刑事弁護実務について丁寧に書かれています。


オススメ度★★

・白表紙『民事判決起案の手引き』
判決起案の書き方が説明されています。
もっとも、修習中に判決のフル起案をする人はあまりいないため、この白表紙は、判決書におけるそれぞれの項目の役割や意味を調べるために使うことになると思います。


・白表紙『紛争類型別の要件事実』
二回試験との関係ではオーバースペックくらいのレベルの本です。
しかし、研修所の講義では、類型別レベルもおさえている前提で話が進むため、読んでおいた方が安心できます。


・白表紙『対話で進める争点整理』
76期修習中に民事両教官室から爆誕した白表紙です。
ゆるキャラのセンスが良いので探してみてください。


・白表紙『民事弁護教材 民事保全』
民事保全についてよくまとまっている本です。
実務に出てからも使える良書です。


・白表紙『民事弁護教材 民事執行』
民事保全についてよくまとまっている本です。
実務に出てからも使える良書です。


・白表紙『プラクティス刑事裁判』
刑事裁判の手続き関係について書かれている本です。
プロシーディングスと分かれている理由はよくわかりません。
基本的にはプロシーディングスを読んでおけばよいですが、こちらにしか書かれていないこともあります。


・白表紙『検察講義案』
検察修習中と検察起案のときだけ読む本です。
検察修習中は常に持っておくと安心できます。
集合起案でこれを忘れると大変なので注意が必要です。


・中村真『若手法律家のための法律相談入門』(学陽書房)

法律相談について、総論的なことが書かれている本です。
弁護修習が始まる前に読んでおくと、法律相談に同席する際の心構えが分かります。


・狩倉博之『若手弁護士が法律相談で困ったら開く本』(学陽書房)

法律相談について、事案類型別に各論的なことが書かれている本です。
弁護修習中に、法律相談に同席する直前に読んでおくと、法律相談でどのようなことを聞くべきかが分かります。


・岡口基一『要件事実マニュアル(特に1・2)』(ぎょうせい)

要件事実の辞書です。
裁判官室や法律事務所にもほぼ必ず置いてありますが、共用のものは他の修習生と融通する必要が生じるので、自分用に1冊あるとなにかと便利です。


・裁判所職員総合研修監修『書記官事務を中心とした和解条項に関する実証的研究』(法曹会)
司法研修所の売店で買える本です。
和解条項の書き方が分かります。


・岡慎一、神山啓史『刑事弁護の基礎知識』(有斐閣)

捜査段階から公判段階までの弁護人による各活動について、詳細にまとめられている本です。
弁護士倫理との関係で悩ましい点についても解説されています。


オススメ度★

・白表紙『民事訴訟第一審手続の解説』
民事訴訟の手続きが分かります。
市販類書に良書がたくさんあるので、白表紙の中では優先度は低めです。


・白表紙『みんなでつくるケース・セオリー』
刑事弁護におけるケース・セオリーについて解説されています。
一度は目を通しておくとよいと思います。


・植村立郎編『刑事事実認定重要判決50選(上・下)』(立花書房)

刑事事実認定について、どのような点に着目すればよいか等が分かる本です。
刑事裁判修習中に、裁判官室に共用で置いてあるこの本をよく参照していました。


おわりに

修習は、事前に勉強をしておけばおくほど、修習の場で学べることが増え、充実したものになると思います。
修習が始まってからは、時間に余裕があるとはいえ、連日飲み会の予定が入ったりと思うとおりに勉強が進まなくなることも考えられます。できるだけ事前に勉強をしておけば、修習中に気兼ねなく飲みにも行けるようになります。

また、修習前・修習中の適宜のタイミングで、FP3級簿記3級ITパスポートといった、一般常識レベルの資格について勉強しておくこともオススメです。

なお、本エントリにて紹介した市販本について、それぞれ別エントリにて詳細な紹介を書いていく予定です(あくまで予定です)。

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